紙おむつの助成|自治体の支給、入院中のおむつ代、医療費控除
在宅で介護をしていると、紙おむつと尿とりパッドの代金は毎月かかり続けます。ところが、介護保険の給付では紙おむつは買えません。代わりに使えるのが、市区町村の支給・助成と、確定申告の医療費控除です。どちらも、自分から申請しないと受けられません。
介護保険では、紙おむつは買えない
介護保険で借りたり、1〜3割の負担で買えたりする福祉用具は、種目が決まっています。排泄に関係するものでは、自動排泄処理装置(貸与)や腰掛便座(購入)が入っていますが、紙おむつと尿とりパッドは種目にありません。日用品と同じ扱いで、全額が自己負担です。
この穴を埋めてきたのが、市区町村の「介護用品支給事業」「紙おむつ給付」などの名前の事業です。対象の条件も、受け取り方も、上限額も、自治体ごとに決めています。同じ要介護度でも、住む市によって受けられる額が違います。
自治体の支給・助成|4つの受け取り方
| 現物支給 | 市が契約した業者から、紙おむつが自宅に届く。品目と数量の上限がある。自己負担が少しかかる自治体もある(掲載65市のうち35市) |
|---|---|
| 給付券・利用券 | 券が郵送され、指定の店で紙おむつと引き換える。月額や年額の上限が券の額面で決まる(24市) |
| 購入費の払い戻し | 自分で買い、領収書を出すと上限まで払い戻される。店を選べる一方、領収書の保管と定期的な申請が要る(2市) |
| 振込 | 決まった額が口座に振り込まれる。年1〜2回のまとめ払いの自治体もある(1市) |
対象者の条件でよく見るのは、要介護度(要介護3以上、4以上など)、在宅で介護を受けていること、住民税非課税などの所得の条件の3つです。掲載65市のうち、所得の条件を書いているのは58市でした。月あたりの上限額が一つに決まる自治体では、中央値は6,000円です。
月6,000円分の支給を12か月受けると、6,000円×12=年7万2,000円。
月3,000円分なら、3,000円×12=年3万6,000円。
同じ在宅介護でも、自治体の上限の違いだけで年3万6,000円の差になります。支給のない月(入院した月など)があれば、そのぶん減ります。
2027年3月に国の経過措置が終わる
市区町村の介護用品の支給は、もともと介護保険の地域支援事業(任意事業)として国の交付金で行われてきました。国は2015年度から、この支給を原則として交付金の対象から外しています。それまで実施していた市町村に限って、激変緩和の経過措置で続けることが認められてきました。
いまの経過措置の期間は、2024年4月1日から2027年3月31日までです(厚生労働省の2023年12月22日の事務連絡)。対象になるのは、2014年度と2023年度に実施していて、廃止や縮小に計画的に取り組む市町村です。条件もついています。
| 本人が住民税課税の人 | 新規も既存も対象外(保険料の第6段階以上) |
|---|---|
| 本人非課税で世帯に課税者がいる人 | 年6万円が上限(第4〜5段階) |
| 新しく使い始める人 | 要介護認定の調査票で、排尿か排便が「介助」か「見守り等」にあたる人(要介護4以上は確認を省略できる) |
経過措置が終わった後の扱いは、各自治体の判断です。介護保険の保健福祉事業(第1号保険料が財源)や、条例で定める市町村特別給付に移す方法が示されていて、移す自治体もあれば、縮小や廃止を選ぶ自治体もあります。2027年4月の前後は、お住まいの自治体の公式ページや広報で、続くかどうか、条件が変わるかを確かめておきましょう。
入院中のおむつ代は、別の扱いになる
入院すると、在宅向けの支給は止まる自治体が多くあります。在宅で介護を受けていることが条件だからです。入院中に病院で使うおむつの代金は、健康保険の給付に含まれず、病院が実費で請求できるものとして国の通知で決まっています(「療養の給付と直接関係ないサービス等」の日常生活上のサービス)。請求には、院内の掲示と本人や家族の同意が必要です。おむつの処理費用は別に請求できません。
自治体によっては、入院中のおむつ代に別の助成を設けています。掲載65市のうち6市で、入院中の扱い(入院中の助成や、短い入院なら続けられる条件など)の記載がありました。入院が長引きそうなら、病院の請求書の内訳と、住んでいる自治体の制度の両方を確かめておくと安心です。
医療費控除|おむつ代を確定申告で取り戻す
紙おむつ代は、条件を満たせば医療費控除の対象になります。条件は、おおむね6か月以上寝たきりで、医師の治療を受けていることと、医師が発行した「おむつ使用証明書」があることです。
要介護認定を受けている人は、おむつ使用証明書の代わりに、市区町村が主治医意見書の内容を確認した書類か、主治医意見書の写しを使えます。主治医意見書に、寝たきり度がB1〜C2で、尿失禁の発生の可能性があると書かれていることが条件です。2024年分以後の申告では、認定の有効期間を合わせて6か月以上あれば、1年目からこの方法が使えます。どの方法でも、おむつ代の領収書が必要です。
1年の医療費(通院・薬)10万円+おむつ代15万円=25万円。
総所得金額が200万円以上なら、控除額は 25万円-10万円=15万円。
所得税の税率が10%の人なら所得税が1万5,000円、住民税(10%)が1万5,000円、合わせて約3万円軽くなります。
自治体から購入費の払い戻しを受けた分は、おむつ代から差し引いて計算します。
障害者向けの日常生活用具との違い
紙おむつを支給するもう一つの仕組みが、障害者総合支援法の日常生活用具給付(排泄管理支援用具)です。こちらは障害の状況が条件で、脳原性の運動機能障害で意思表示が難しい人や、高度の排尿・排便機能障害がある人などを対象にする市町村が多く見られます。厚生労働省の委託調査(2021年3月)では、紙おむつ等を給付の対象にしている市町村は96.5%でした。窓口は障害福祉の担当課で、高齢者向けの介護用品の窓口とは別です。両方に当てはまりそうなときは、どちらを使えるかを両方の窓口で聞いてみましょう。
申請の前に確かめること
- 要介護認定の結果(要介護度と有効期間)を確かめた
- 住んでいる市区町村に支給・助成があるか、対象の条件(要介護度・在宅・所得)を確かめた
- 受け取り方(現物・券・払い戻し・振込)と、月や年の上限額を確かめた
- 申請先の課(高齢者福祉・介護保険の担当が多い)と、必要な書類を確かめた
- 入院・施設入所・転居をしたときの届出の方法を確かめた
- 2027年4月以降も続くか、自治体の案内を確かめた
- 医療費控除のため、おむつ代の領収書を年ごとに保管している
- おむつ使用証明書を医師に頼むか、主治医意見書の確認書類を自治体に申請するかを決めた
誤解されやすいこと
「介護保険で、おむつも1割で買える」|買えません
介護保険の福祉用具の種目に紙おむつは入っていません。介護保険の負担割合とは関係なく、全額が自己負担です。負担を減らせるのは、市区町村の支給・助成と、医療費控除です。
「一度申請すれば、ずっと続く」|止まる場面がある
入院や施設への入所で在宅の条件から外れると、支給が止まる自治体があります。年度ごとに申請し直す自治体も少なくありません。2027年3月には国の経過措置も終わります。支給を受けている人ほど、年度の変わり目に案内を確かめておきましょう。
「医療費控除には、毎年医師の証明が要る」|代わりの書類がある
要介護認定を受けていれば、主治医意見書の内容を市区町村が確認した書類や、主治医意見書の写しで代えられます。2024年分以後は、1年目からこの方法が使えるようになったところです。医師に証明書を頼む手間と費用を省けることがあります。
よくある質問
- 紙おむつは介護保険で買えますか
- 買えません。介護保険で借りたり買ったりできる福祉用具の種目に、紙おむつと尿とりパッドは入っていません。市区町村の支給・助成と、医療費控除で負担を減らします。
- 自治体の紙おむつの支給は、誰が使えますか
- 条件は市区町村ごとに違います。要介護度(要介護3以上や4以上など)、在宅で介護を受けていること、住民税非課税などの所得の条件がよく見られます。このページの自治体別の一覧か、お住まいの自治体の公式ページで確かめてください。
- 入院中のおむつ代は助成されますか
- 入院中のおむつ代は健康保険の給付に含まれず、病院に実費で支払います。在宅向けの支給は入院中に止まる自治体が多い一方、入院中の人向けに別の助成を設けている自治体もあります。
- おむつ代は医療費控除の対象になりますか
- おおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けていて、医師のおむつ使用証明書があれば対象です。要介護認定を受けていれば、主治医意見書の内容を市区町村が確認した書類や、主治医意見書の写しで代えられます。領収書も必要です。
- 2027年4月以降も、自治体の支給は続きますか
- 国の経過措置は2027年3月31日で終わり、その後の扱いは各自治体が決めます。保健福祉事業などに移して続ける自治体もあれば、縮小や廃止を選ぶ自治体もあります。お住まいの自治体の案内を確かめてください。
自治体別の支給・助成(65市)
政令指定都市と中核市から順に、公式ページで内容を確かめられた市を載せています。上限額と受け取り方は要点で、条件の細部は各市のページと出典で確認できます。
| 市 | 上限(受け取り方) |
|---|---|
| 北海道 札幌市 | 月6,500円まで(現物) |
| 北海道 函館市 | 月5,000円まで(給付券・利用券) |
| 北海道 旭川市 | 月4,500円まで(給付券・利用券) |
| 青森県 青森市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 岩手県 盛岡市 | 月3,000円まで(給付券・利用券) |
| 宮城県 仙台市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 秋田県 秋田市 | 月6,250円まで(現物) |
| 山形県 山形市 | 月7,000円まで(現物) |
| 福島県 郡山市 | 要介護度などの条件で変わる(給付券・利用券) |
| 福島県 いわき市 | 要介護度などの条件で変わる(給付券・利用券) |
| 茨城県 水戸市 | 月6,000円まで(現物) |
| 栃木県 宇都宮市 | 要介護度などの条件で変わる(購入費の払い戻し) |
| 群馬県 前橋市 | 月3,000円まで(現物) |
| 群馬県 高崎市 | 月5,000円まで(現物) |
| 埼玉県 さいたま市 | 月6,000円まで(給付券・利用券) |
| 埼玉県 川越市 | 月5,000円まで(現物) |
| 埼玉県 川口市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 千葉県 千葉市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 千葉県 船橋市 | 月8,900円まで(現物) |
| 千葉県 柏市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 東京都 八王子市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 神奈川県 横浜市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 神奈川県 川崎市 | 月6,000円まで(現物) |
| 神奈川県 相模原市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 神奈川県 横須賀市 | 月3,000円まで(現物) |
| 新潟県 新潟市 | 要介護度などの条件で変わる(給付券・利用券) |
| 富山県 富山市 | 要介護度などの条件で変わる(給付券・利用券) |
| 石川県 金沢市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 福井県 福井市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 山梨県 甲府市 | 月6,550円まで(給付券・利用券) |
| 長野県 松本市 | 要介護度などの条件で変わる(その他) |
| 静岡県 静岡市 | 要介護度などの条件で変わる(給付券・利用券) |
| 静岡県 浜松市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 愛知県 豊橋市 | 月8,300円まで(給付券・利用券) |
| 愛知県 一宮市 | 年60,000円を限度(給付券・利用券) |
| 愛知県 豊田市 | 要介護度などの条件で変わる(給付券・利用券) |
| 滋賀県 大津市 | 月4,500円まで(給付券・利用券) |
| 京都府 京都市 | 要介護度などの条件で変わる(給付券・利用券) |
| 大阪府 大阪市 | 月6,500円まで(給付券・利用券) |
| 大阪府 堺市 | 月6,500円まで(給付券・利用券) |
| 大阪府 豊中市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 大阪府 吹田市 | 給付券(上限6,250円分)(給付券・利用券) |
| 大阪府 高槻市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 大阪府 枚方市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 大阪府 八尾市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 大阪府 寝屋川市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 大阪府 東大阪市 | 月4,000円まで(現物) |
| 兵庫県 神戸市 | 要介護度などの条件で変わる(給付券・利用券) |
| 兵庫県 西宮市 | 月6,500円まで(現物) |
| 奈良県 奈良市 | 月3,500円まで(現物) |
| 鳥取県 鳥取市 | 要介護度などの条件で変わる(給付券・利用券) |
| 岡山県 倉敷市 | 要介護度などの条件で変わる(振込) |
| 広島県 広島市 | 月6,500円まで(現物) |
| 広島県 呉市 | 要介護度などの条件で変わる(給付券・利用券) |
| 広島県 福山市 | 月6,250円まで(給付券・利用券) |
| 山口県 下関市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 福岡県 北九州市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 福岡県 福岡市 | 要介護度などの条件で変わる(その他) |
| 福岡県 久留米市 | 月3,000円まで(給付券・利用券) |
| 長崎県 長崎市 | 月5,000円まで(現物) |
| 長崎県 佐世保市 | 要介護度などの条件で変わる(購入費の払い戻し) |
| 大分県 大分市 | 年額1人あたり上限100,000円(給付券・利用券) |
| 宮崎県 宮崎市 | 要介護度などの条件で変わる(その他) |
| 鹿児島県 鹿児島市 | 要介護度などの条件で変わる(現物) |
| 沖縄県 那覇市 | 月8,333円まで(現物) |
あわせて確認
要介護認定の流れと最初の窓口は親の介護が始まるとき、仕事との両立は遠距離介護の費用と続け方、施設の費用は親の老人ホームの選び方へ。介護の費用の話の一覧は介護の費用と助成にまとめています。
出典
この記事の制度の説明は、次の法令・公的資料にもとづいています(2026年11月確認)。自治体別の内容は、各市の公式ページで確認した日付を各ページに書いています。
- 厚生労働省『地域支援事業の任意事業における介護用品の支給に係る事業の取扱いについて』(令和5年12月22日事務連絡・介護保険最新情報Vol.1193)
- 厚生労働省『福祉用具・住宅改修』(介護保険の福祉用具の対象種目)
- e-Gov法令検索『介護保険法』(第62条 市町村特別給付、第115条の49 保健福祉事業)
- 厚生労働省『療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて』(平成17年9月1日保医発第0901002号)
- 国税庁 質疑応答事例『寝たきりの者のおむつ代』
- 国税庁 タックスアンサー No.1122『医療費控除の対象となる医療費』
- 厚生労働省『日常生活用具給付等事業の実態把握に関する調査研究』(令和3年3月)
※支給・助成の条件と額は、自治体の予算や制度の見直しで変わります。申請の前に、お住まいの自治体の公式ページか窓口でご確認ください。体の状態やおむつの選び方は、医師やケアマネジャーにご相談ください。