親の施設選び — 種類・費用・入居までの流れ
在宅の介護が限界に近づいたとき、施設という選択肢が現実になります。ところが「老人ホーム」と一括りにされている施設は、対象となる要介護度も、費用も、入りやすさもまったく違う。ここを取り違えると、月10万円で入れたはずの人が月25万円の施設を検討していた、ということが起きます。このページでは、5種類の施設の違い、費用の内訳、入居までの流れ、見学の確認項目を整理します。介護の入口(要介護認定)はまだの方は介護が始まるときから。
5種類の違いを1枚で
| 特別養護老人ホーム(特養) | 要介護3以上。公的施設で費用が最も安く月10万〜15万円(所得により軽減あり)。終身利用が基本。人気が高く待機期間は地域差が大きい(数か月〜数年)。申込みは施設ごと・複数可 |
|---|---|
| 介護老人保健施設(老健) | 要介護1以上。在宅復帰を目指すリハビリ施設で原則3〜6か月。月8万〜17万円。医師・リハビリ職が常勤。退所後の行き先を並行して探す前提 |
| グループホーム | 認知症の診断があり要支援2以上、施設と同じ市区町村に住民票が必要。9人程度の少人数で共同生活。月12万〜18万円+入居金0〜十数万円 |
| 介護付き有料老人ホーム | 民間。要介護度の幅が広く、看取りまで対応する施設も。月15万〜30万円超+入居一時金0〜数千万円。費用と質の幅が最も大きい |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 自立〜軽度向けの賃貸住宅。安否確認と生活相談が基本サービスで、介護は外部の事業者と別契約。月10万〜25万円+敷金。介護度が上がると住み替えが必要になることがある |
ほかに、費用を抑えたい場合のケアハウス(軽費老人ホーム)、住宅型有料老人ホーム、小規模多機能型居宅介護(通い・訪問・泊まりを組み合わせる在宅サービス)もあります。「施設に入る」と決める前に、小規模多機能で在宅を延ばす選択肢をケアマネジャーに聞いてみる価値があります。
費用の内訳 — 「月額」に何が入っているか
| 介護サービス費 | 介護保険の1〜3割負担。要介護度で決まる。高額になれば高額介護サービス費で上限を超えた分が戻る |
|---|---|
| 居住費(家賃・室料) | 個室か多床室かで大きく違う。公的施設は所得に応じた負担限度額認定で軽減される |
| 食費 | 公的施設は負担限度額認定の対象。民間は施設ごとの設定 |
| 日常生活費 | おむつ代・理美容・レクリエーション・医療費・電話代。月1万〜3万円を見込む。公的施設はおむつ代が介護保険に含まれることが多く、民間は実費が多い |
| 入居一時金(民間) | 0円〜数千万円。前払家賃の性格で、償却期間内に退去すれば一部返還。初期償却の割合と償却期間を必ず確認 |
入居までの流れ
- 1. 要介護認定 — 施設の多くは要介護度で対象が決まる。まだなら申請から(原則30日)
- 2. ケアマネジャー・地域包括支援センターに相談 — 地域の空き状況、評判、待機の実情を持っている。民間の紹介センターより先にここへ
- 3. 予算を決める — 親の年金・預貯金から「月いくらまで」を家族で共有。子が補填するなら金額と期間を明確に
- 4. 見学 — 3か所以上。パンフレットではわからない部分を見る(後述)
- 5. 申込み — 特養は複数施設に同時申込み可。民間は仮申込み→面談(アセスメント)→契約
- 6. 面談・体験入居 — 施設側が受け入れ可否を判断。医療的ケア(胃ろう・たん吸引・インスリン)の可否がここで決まる
- 7. 契約・入居 — 民間は重要事項説明書を必ず読む。契約から入居まで民間は2週間〜1か月、特養は待機次第
見学で確認する20項目
- 食事の時間帯に行き、実際の食事を見た(可能なら試食)
- 入居者の表情と、職員の声かけの様子を見た
- においを確認した(排泄物のにおいが続く施設は換気・介助の質のサイン)
- 職員の人数と夜勤体制を聞いた(夜間何人で何人を看るか)
- 職員の離職率・平均勤続年数を聞いた
- 看護師の配置時間(日中のみか、24時間か)を確認した
- 医療的ケア(胃ろう・たん吸引・インスリン・在宅酸素)の対応可否を確認した
- 協力医療機関と、通院の付き添いは誰がするかを聞いた
- 看取りに対応するか、どの段階で退去になるかを聞いた
- 認知症が進行した場合、暴言・徘徊があった場合の対応を聞いた
- 入院した場合の居室の扱い(何か月まで保持されるか・費用)を確認した
- 月額費用の内訳と、追加でかかる費用の実例を書面でもらった
- 入居一時金の初期償却率と償却期間、返還の計算方法を確認した
- 過去1年の値上げの有無を聞いた
- 面会の時間・回数の制限を確認した
- 外出・外泊のルールを確認した
- 洗濯・理美容・おむつが月額に含まれるか実費かを確認した
- 居室に持ち込めるもの(家具・仏壇・冷蔵庫)を確認した
- 行政の指導・処分歴を確認した(介護サービス情報公表システムで検索できる)
- 重要事項説明書をもらって持ち帰り、家族で読んだ
費用が足りないときの制度
- 負担限度額認定 — 所得と預貯金が一定以下の場合、公的施設(特養・老健等)の居住費と食費が軽減される。市区町村へ申請。民間施設は対象外
- 高額介護サービス費 — 1か月の介護サービス費の自己負担が上限(所得区分により月1万5千円〜14万100円)を超えた分が戻る
- 高額医療・高額介護合算療養費 — 1年間の医療と介護の自己負担を合算し、年間上限を超えた分が戻る
- 社会福祉法人等による利用者負担軽減 — 低所得者向けに、一部の社会福祉法人が運営する施設で自己負担を軽減する制度
- 生活保護 — 資産・収入が基準以下なら、介護扶助で特養等の利用が可能
- 親の資産を使う準備 — 判断力が落ちると本人名義の預金を家族が動かせなくなる。任意後見や、状況によっては法定後見が必要。元気なうちの確認が効いてくる場面
誤解されやすいこと
「特養は何年も待つから無理」— 申込みは早く、複数に
待機期間は地域と施設で大きく違い、条件(要介護度が高い、在宅介護が困難、独居)によって優先順位がつきます。申込みは無料で複数施設に同時にでき、順番が来たときに断ることもできます。入るかどうか迷っている段階でも申し込んでおくのが実務です。
「一度入ったらずっといられる」— 退去条件がある
民間施設では、医療依存度が上がった、長期入院した、他の入居者への迷惑行為が続いた、費用の滞納、といった場合に退去を求められることがあります。契約書の退去条件は入居前に必ず読んでください。老健は原則3〜6か月で、最初から次を探す前提です。
親と話す順番
「施設に入って」と切り出すと、多くの親は拒否します。順番を変えます。①いま困っていること(夜眠れない、入浴が大変、家族が疲れている)を具体的に話す →②ショートステイやデイサービスを先に試す →③体験入居に一緒に行く →④「見学だけ」と伝えて複数見る。施設を「終の住処」ではなく「試せる選択肢」として提示すると、話が前に進みやすくなります。元気なうちに聞いておく30項目で「施設か自宅か」の希望を聞けていれば、この会話はさらに楽になります。
よくある質問
- 特別養護老人ホームの費用はいくらですか
- 月10万〜15万円程度が目安で、内訳は介護サービス費の自己負担・居住費・食費・日常生活費です。所得と預貯金が一定以下なら負担限度額認定で居住費と食費が軽減されます。要介護3以上が原則の対象です。
- 有料老人ホームとサ高住はどう違いますか
- 介護付き有料老人ホームは施設の職員が介護サービスを提供し、要介護度が上がっても住み続けられる設計です。サービス付き高齢者向け住宅は安否確認と生活相談が基本の賃貸住宅で、介護は外部事業者と別契約のため、介護度が上がると住み替えが必要になることがあります。
- 施設探しはどこに相談すればよいですか
- 担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターです。地域の空き状況や実際の評判を持っています。民間の紹介センターは無料ですが紹介料が施設から支払われる仕組みのため、まず公的窓口で候補を把握してから使うのが順序です。
- 見学で何を見ればよいですか
- 食事の時間帯か夕方に行き、入居者の表情、職員の声かけ、におい、夜勤体制、医療的ケアの可否、退去条件、費用の内訳を確認します。重要事項説明書をもらって持ち帰り、家族で読むことが大切です。
- 入居費用が足りないときの制度はありますか
- 公的施設なら負担限度額認定で居住費・食費が軽減され、高額介護サービス費で月の自己負担に上限が設けられます。医療と介護を合算する制度や、社会福祉法人による軽減、生活保護の介護扶助もあります。市区町村の介護保険窓口で相談してください。
あわせて確認 — 施設探しの前提になる介護保険の申請とケアマネジャー、費用の支払いに関わる親のお金の所在確認、判断力が落ちた後に備える任意後見契約、実家を空き家にする場合は実家の名義確認へ。
※費用相場は地域・施設により大きく異なる一般的な目安です。本ページは制度と選び方の一般的な説明で、健康状態の判断は医師にご相談ください。現時点で広告・紹介料を伴うリンクは含まれていません。