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終活の始め方 — 家族が困る順に、3か月で骨格を作る

終活が始まらない理由は、やる気ではなく順番です。エンディングノートを開くと最初のページが「自分史」で、財産目録を作ろうとすると通帳集めで止まる。順番を「自分が書きたい順」から「家族が実際に困る順」に変えると、最初の3か月で骨格ができます。このページは、その順番と、年代別の優先順位、費用0円でできることに絞った案内です。個別の手続きは各ガイドへ。

最初にやる
所在リスト
口座・保険・書類の「場所」だけ
費用
0円から
有料は遺言と契約類だけ
3か月の目標
紙1枚+伝達
家族が場所を知っている状態
続けるコツ
年1回90分
誕生日か年末に更新

優先順位は「家族が困る順」

遺族の相談で本当に多いのは、財産の額ではなく「わからない」です。順番を4段階に整理します。

第1段階: 所在口座がどの銀行にあるか、保険は何に入っているか、年金証書・権利証・印鑑はどこか。金額は不要、場所だけ。ここが空白だと、遺族は戸籍集めと並行して家中を探すことになる
第2段階: 意思延命治療の考え、介護は自宅か施設か、葬儀の形式、お墓、連絡してほしい人。決められない項目は空欄でよい。空欄も「本人も迷っていた」という情報になる
第3段階: 財産の行き先誰に何を残すか。不動産がある、相続人が複数、相続人以外に残したい、といった事情があれば遺言。事情がなければ急がなくてよい
第4段階: モノ生前整理。実は最後でよい。遺品整理は業者に頼めば数日で終わるが、第1段階の空白は誰にも埋められない

多くの終活本がモノの整理から始まるのは、目に見えて達成感があるからです。動機付けとしては悪くありませんが、片付けながら「これはどこにあるか家族は知っているか」を自問し、第1段階のリストに書き足すのが最短ルートです。

年代別の優先順位

50代第1段階(所在リスト)とデジタルの4設定だけで十分。この年代の突然の入院・事故に備える意味が大きい。あわせて親の確認30項目を進めると、自分の終活の下見にもなる
60代(退職前後)所在リストに加えて、保険の棚卸し(払い続ける必要があるか)、口座の集約、お墓の方針。退職金の受け取りと年金の繰下げ判断が重なる時期で、お金の全体像を1枚にする好機
70代第2段階(意思)を具体化。遺言を検討し、不動産があるなら早めに。金融機関の代理人届を出しておく。子と「もしものときの連絡先」を共有
80代以降・おひとりさま死後事務委任任意後見・遺言の3点を同じ公証役場で。入院準備と緊急連絡先カードは今日できる

最初の3か月 — 週末1回90分

1か月目所在リストを作る。1週目: 銀行・証券(銀行名と支店だけ)/2週目: 保険(会社名と種類、証券の場所)/3週目: 年金・不動産・借入/4週目: 重要書類をボックス1つに集約
2か月目デジタルと連絡先。1週目: 写真の自動バックアップ設定/2週目: AppleとGoogleの故人アカウント設定/3週目: 契約・サブスクの一覧(カード明細12か月分)/4週目: もしものとき連絡してほしい人のリスト
3か月目意思を書く。1週目: 医療・介護の希望/2週目: 葬儀とお墓の希望/3週目: ありがとうを伝えたい人/4週目: 全体をエンディングノートにまとめ、家族に場所を伝える
以降年1回90分の更新。変わるのは所在(口座・保険・契約)と連絡先だけ。意思の項目は気が変わったときに書き直す
3か月の総投資 時間: 90分×12回=18時間。費用: ノート代1,000円前後(自治体の無料配布があればゼロ)+書類のコピー代程度。これに対して、所在が不明なまま遺族が探す場合の時間は、口座・保険の照会だけで2〜3か月、専門家に頼めば数十万円。18時間の前払いと考えると、費用対効果は明確です。

費用0円でできる5つ

有料になるのは、遺言(自筆なら0円、法務局保管3,900円、公正証書は数万円〜)、死後事務委任任意後見(公正証書2万円前後〜)、お墓・永代供養の契約です。順番としては、0円の5つを済ませてから検討すれば十分です。

補足
終活を「始められない」人には、共通してやることリストが長すぎるという問題があります。市販のノートは100項目以上あり、全部埋めようとすると必ず止まる。実際に遺族が助かるのは、そのうち10項目程度です。完璧なノートより、3項目だけ書いて場所を家族に伝えたノートのほうが確実に機能します。最小セットは次のとおりです。

続かない人のための最小セット(3項目)

  1. 取引のある金融機関の名前(銀行名・証券会社名だけ。支店や口座番号すら不要)
  2. 加入している保険会社の名前(証券のありかも書ければなお良い)
  3. もしものとき連絡してほしい人(名前と電話番号を3人)

この3つを紙1枚に書き、通帳と同じ場所に入れ、家族の1人に「ここに紙がある」と伝える。所要15分。これだけで、遺族の探索期間は劇的に短くなります。ここから始めて、続きそうなら上の3か月プランへ進めば十分です。

専門家に頼むタイミング

司法書士不動産がある、遺言を作る、任意後見死後事務委任を結ぶ、実家が祖父母名義のまま
税理士財産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)を超えそう、自社株や賃貸物件がある(相続税の要否
弁護士相続人の間に対立が予想される、相続人以外に財産を残したい、前婚の子がいる
ファイナンシャルプランナー老後資金の見通し、保険の見直し。ただし特定の商品の販売が目的の相談先は避け、有料相談か中立の窓口を
無料で相談できる先自治体の無料法律相談、法テラス(収入要件あり)、司法書士会・税理士会の相談会、公証役場(遺言の相談は無料)、地域包括支援センター(介護・見守り)

「終活疲れ」を避ける3つのルール

逆に、続かない典型は「大型連休に一気に片付ける」計画です。3日で全部やろうとすると初日で疲れ、翌年まで開かなくなる。90分×12回のほうが、結果的に早く終わります。

やらなくてよいこと

よくある質問

終活は何歳から始めるべきですか
所在リストとデジタルの設定は年齢に関係なく、50代でも意味があります。突然の入院や事故で家族が困るのは同じだからです。遺言や後見・死後事務の契約は、必要な事情(不動産・おひとりさま・相続人の対立)がある人が、判断能力があるうちに検討します。
まず何から手をつければよいですか
取引のある金融機関名、加入している保険会社名、もしものときの連絡先3人。この3項目を紙1枚に書き、場所を家族に伝えるところからです。所要15分で、遺族の探索期間を大きく短縮できます。
お金をかけずにできますか
できます。所在リスト、デジタルの4設定、金融機関の代理人届、自治体の無料エンディングノート、連絡先リストはすべて0円です。有料になるのは遺言(法務局保管3,900円、公正証書は数万円〜)と死後事務・任意後見の契約くらいです。
エンディングノートと遺言のどちらが必要ですか
両方の役割が違います。ノートは所在・希望・メッセージを伝えるもので法的効力はなく、遺言は財産の行き先を法的に決めるものです。不動産がある、相続人が複数いる、相続人以外に残したいといった事情があれば遺言が必要で、なければノートだけでも家族は十分に助かります。
家族に切り出しにくいのですが
内容を見せる必要はありません。「ノートを書いた。場所はここ」と伝えるだけで役割の半分は果たせます。子の側から親に切り出す場合は、制度の話ではなく「入院したとき困るから」という実務の話にすると通りやすくなります。

次に読むもの — 書き方の具体はエンディングノートの書き方、財産の行き先は遺言の基本、モノの整理は生前整理のやり方、お墓はお墓の選び方と墓じまい。頼れる家族が近くにいないならおひとりさまの備え、親の終活を手伝うなら親のこれからに備えるへ。

※本ページは一般的な説明です。医療・介護の希望は本人の考えを家族が知るためのもので、治療の判断は医師にご相談ください。