ホーム › 亡くなった後の手続き › デジタル遺品
デジタル遺品の整理|スマホが開かないところから、どう進めるか
財産は通帳から探せた時代が終わり、いまは故人のスマートフォンが「金庫の鍵」です。ネット銀行・ネット証券・暗号資産・サブスク・写真。全部スマホの向こうにあり、ロックが解けなければ、最初の段階から先へ進めません。最初にひとつだけ。スマホを初期化しないでください。そこで手詰まりになります。
最初にやる
電源を切らない・初期化しない
誤ったパスコード連打は消去のリスク
回線の解約
端末が開かなくても可
ただしSMS認証が要る間は回線を残す判断も
ネット資産
ログイン不要で相続可
金融機関に死亡連絡すれば進む
生前の備え
紙1枚
パスコードと口座一覧のありか
順番を間違えないための3原則
- ① 消さない・初期化しない・むやみに試さない
iPhoneはパスコードを10回失敗すると全消去の設定があり得る。パソコンも同じ。試すなら家族の記憶にある候補を数回まで - ② 回線はすぐ切らない
携帯の解約は月額を止めるが、ネット口座のSMS認証・パスワード再設定に電話番号が要ることがある。資産の洗い出しが終わるまで回線を残す選択には合理性がある(月数千円は調査費と考える) - ③ ログインできなくても相続はできる
ネット銀行・証券は、金融機関に死亡を連絡し戸籍等を出せば、アカウントに入れなくても相続手続きが進む。無理にログインするより、存在の把握に力を注ぐ(本人以外のログインは規約違反や不正アクセスの問題になり得る)
スマホのロック|現実的な選択肢
| 1. 手がかりを探す | エンディングノート・手帳・パスワードの紙。家族の誕生日・車のナンバーなど本人が使いそうな番号を数回だけ |
|---|---|
| 2. 公式の手続き | Apple・Googleの故人アカウント手続き(下の表)。端末のロック解除ではなくクラウド上のデータ(写真・連絡先・メール)へのアクセスや削除ができる |
| 3. 専門業者 | デジタル遺品対応のデータ復旧業者。費用は数万〜20万円超、成功率は機種とOSバージョン次第で保証なし。Android旧機種は可能性があり、最新iPhoneは難しいのが実情。見積もりと成功時のみ課金かを確認 |
| 4. 割り切る | 目的が「資産の把握」なら、スマホを開けなくても郵便物・通帳・メール(パソコンで見られれば)から到達できることが多い。目的が「写真」ならクラウドから。端末そのものに固執しない |
AppleとGoogleの公式手続き
| Apple(故人アカウント) | 生前に「故人アカウント管理連絡先」が設定されていれば、指定された人がアクセスキーと死亡証明書でiCloudの写真・メモ等にアクセスできる(端末のロック解除とは別)。設定がなければ、裁判所の証明等を求められ現実には難しい。アカウントの削除は死亡証明書等で申請可能 |
|---|---|
| Google(アカウント無効化管理ツール) | 生前に設定されていれば、一定期間(3〜18か月)操作がないと指定した人にデータ共有の通知が行く。設定がなくても、遺族は死亡証明書・関係書類でアカウントの閉鎖や、審査を経たデータ取得を申請できる(数週間〜数か月) |
| 写真の実務 | iCloud・Googleフォトに自動バックアップされていれば、上記手続きでクラウド側から取得できる可能性がある。パソコンにバックアップが残っていることも多く、パソコンが開くならまず「ピクチャ」フォルダとバックアップソフトを確認 |
ネット資産の探し方|スマホが開かなくても
- 郵便物
ネット証券・ネット銀行も年1回は取引残高報告書・税務書類を郵送することが多い。1年分の郵便物がいちばん確かな手がかり - 紙の通帳・カード明細
「ラクテン」「SBI」「PayPay」等への振込・引き落とし、証券口座への入出金の記録 - パソコンのメール・ブラウザ
パソコンが開くなら、メールで「口座開設」「取引報告」を検索。ブラウザの保存パスワード一覧はサービスの一覧表になる(閲覧のみ。ログインは金融機関への連絡を優先) - 確定申告の控え
配当・譲渡所得・雑所得(暗号資産)の記載から口座の存在がわかる - 証券保管振替機構(ほふり)
株式がどの証券会社にあるか、相続人が開示請求できる(1件6,050円)。上場株の「どこにあるか不明」はこれで解決 - 暗号資産
国内交換業者はメール・アプリ・郵便物が手がかりで、死亡連絡すれば相続手続きがある。個人管理のウォレットはシードフレーズ(紙のメモ)がなければ事実上取り出せない。相続税の課税対象にはなり得るので、存在がわかったら税理士に相談 - ポイント・マイル・電子マネー
原則失効が多いが、ANA・JALのマイルなど相続できるものもある。残高が大きいものだけ規約を確認
探索コストの目安 郵便物・通帳の確認は0円、ほふりの開示6,050円、Apple/Googleの手続きは無料(死亡証明書の写し等の実費のみ)、ロック解除業者は数万〜20万円超。0円の手段を先に試し、業者は「どうしても端末内にしかないもの」があるときの最終手段です。
費用と日数の一覧
| 郵便物・通帳・明細の確認 | 0円/1〜2時間。12か月分を見る |
|---|---|
| ほふりの開示請求(株式) | 6,050円/2〜4週間。相続人が申請 |
| Appleの故人アカウント手続き | 0円(死亡証明の実費のみ)/審査に数週間 |
| Googleのデータ取得・閉鎖申請 | 0円/数週間〜2か月程度 |
| ロック解除・データ復旧業者 | 数万〜20万円超/1〜4週間。成功保証なし |
| 回線を残す判断 | 月3,000〜6,000円程度/資産探索の1〜3か月だけ |
SNS・アカウントの削除と追悼
| Facebook / Instagram | 遺族の申請で「追悼アカウント」(残す)か「削除」を選べる。死亡の証明と関係の証明を提出 |
|---|---|
| X(旧Twitter)・その他 | 遺族からのアカウント停止・削除の申請フォームがある。ログイン情報は開示されない |
| LINE | アカウント削除は遺族申請で可。トーク履歴は端末内保存が基本のため、端末が開かなければ取り出せないのが実情 |
| 放置のリスク | 乗っ取りによる詐欺メッセージの発信元にされる。急がなくてよいが、四十九日を過ぎたあたりで削除か追悼かを決めるのが目安 |
補足
各社の手続きを並べてみると、取り戻せないものは写真に集中します。口座は連絡すれば何とかなる。SNSも消せる。でも、スマホの中の10年分の写真だけは代わりがない。だからこそ生前の備えは、パスコードのメモより先に「写真の自動バックアップをオンにする」ことです。残される人にとって、これがいちばんありがたい備えになります。
生前にできる備え|自分の分は紙1枚
- スマホのパスコードのありかをエンディングノートに(番号そのものは別の封筒でもよい。「ありか」だけノートに)
- 口座・サービスの一覧
ネット銀行・証券・暗号資産・サブスクの「名前だけ」の一覧。IDやパスワードは書かなくてよい。存在がわかれば遺族は手続きできる - 写真の自動バックアップをオンに(iCloud・Googleフォト)
- Appleの故人アカウント管理連絡先とGoogleのアカウント無効化管理ツールを設定(それぞれ5分)
- 消したいものは今消す
見られたくないデータを「死後に消して」は実現が難しい。定期的に自分で整理するのが唯一確実
気づかないまま損をする4つ
スマホが開けたかどうかに関わらず、放っておくと不利になるものがあります。期限があるか、損失が広がるものです。
| ネット証券の含み損 | 相続税の評価は死亡日の価格ですが、実際の売却は手続きが終わってからです。値動きの大きい銘柄や信用取引の建玉があると、その間に損失が膨らむことがあります。信用取引は特に急ぐ必要があり、証券会社に連絡すれば対応を案内してくれます |
|---|---|
| 暗号資産(仮想通貨) | 取引所の口座は相続財産です。秘密鍵を自分で管理していた分は、鍵が分からなければ誰も取り出せません。取引所にあるものは、死亡の連絡と相続書類で引き出せます。価格変動が大きく、相続税の評価(死亡日の時価)より下がっていても税額は変わらないため、早く動くほど有利です |
| サブスクの二重課金 | App Store・Google Play経由の課金は、アプリを消しても止まりません。アカウント側で解約するか、支払いに使っているカードを止めましょう |
| ポイント・電子マネーの残高 | 多くは規約で相続の対象外(失効)ですが、一部は相続できます。残高が大きいサービスだけ規約を確認する価値があります。チャージ済みの交通系ICは、駅の窓口で払い戻せることがあります |
パソコンとハードディスクの扱い
スマホに気を取られがちですが、パソコンにも同じ情報があります。しかもスマホより後回しにされ、最後は処分に困るのがパソコンです。
- 先に中身を確認する
ログインできれば、メールの受信箱を「ご利用明細」「お取引」で検索するだけで、契約先の一覧が出てきます。ブラウザに保存されたパスワードの一覧(Chromeなら設定画面)も確認できます - ログインできないとき
Windowsのローカルアカウントなら、データ復旧業者がドライブを取り出して中身を読めることがあります(2万〜10万円程度)。暗号化(BitLocker)されていると読めません - 処分するときはデータを消す
初期化だけでは復元できる場合があります。物理破壊するか、消去ソフトを使うか、証明書を発行する専門業者へ。自治体の小型家電回収に出す前に、ハードディスクだけ抜いておくのが確実です - 写真は先に救い出す
処分してしまうと二度と戻りません。家族の写真だけでも、外付けドライブにコピーしておきましょう
誤解されやすいこと
「家族ならログインしてよい」|規約と法律の線がある
多くのサービスはアカウントの本人以外の利用を規約で禁じ、無断ログインは不正アクセス禁止法に触れる可能性も指摘されています。相続の実務は「ログイン」ではなく「事業者への死亡連絡」で進めるのが安全で、実際その方が確実です。
「ネット証券の株は、放っておけば消える」|消えずに相続財産のまま
口座が見つからなくても株式・投信は相続財産として存在し続け、相続税の申告漏れになり得ます。ほふりの開示請求と郵便物の確認で、存在の把握だけは早めに行いましょう。
チェックリスト
- スマホの電源と充電を保ち、パスコードの連打をしていない
- 回線を解約する前に、SMS認証の要否と資産探索の進み具合を確認した
- 郵便物1年分・通帳・カード明細からネットサービスを洗い出した
- パソコンが開くなら、メールとブラウザの保存パスワード一覧を確認した
- ネット銀行・証券に死亡を連絡し、相続手続きの案内を受けた(ほふり開示も検討)
- Apple/Googleの故人アカウント手続きを申請した(データ取得または削除)
- SNSの削除・追悼の方針を決めた
- 自分自身の備え(バックアップ・一覧・管理連絡先の設定)を済ませた
よくある質問
- 亡くなった家族のスマホのロックは解除できますか
- パスコードがわからない場合、AppleやGoogleの公式手続きで端末のロック自体を解除してもらうことは原則できません。クラウド上のデータへのアクセスや削除の申請は可能です。専門業者は数万〜20万円超で成功保証がなく、最新機種ほど困難です。目的が資産把握なら郵便物と金融機関への連絡で、写真ならクラウドからの取得を先に検討しましょう。
- ネット銀行やネット証券の口座はどう探しますか
- 郵便物(年1回の報告書)、通帳やカード明細の入出金、パソコンのメール検索、確定申告の控えが手がかりです。上場株式は証券保管振替機構(ほふり)に相続人が開示請求(6,050円)すると、どの証券会社に口座があるかわかります。
- ログインできなくても相続手続きはできますか
- できます。金融機関に死亡を連絡し、戸籍などの相続書類を提出すれば、アカウントにログインできなくても残高確認と相続手続きが進みます。無断ログインは規約違反や法的問題になり得るため、事業者への連絡を優先してください。
- 故人のSNSはどうすればよいですか
- FacebookやInstagramは追悼アカウントとして残すか削除を遺族が申請できます。Xなども遺族からの削除申請があります。放置すると乗っ取りのリスクがあるため、落ち着いた時期に削除か追悼かを決めるのが目安です。
- 生前にやっておくべきことは何ですか
- 写真の自動バックアップをオンにする、Appleの故人アカウント管理連絡先とGoogleのアカウント無効化管理ツールを設定する、ネット口座とサブスクの一覧(名前だけ)とスマホのパスコードのありかをエンディングノートに書く。この4つでデジタル遺品の問題はほぼ予防できます。
あわせて確認
自分の側で同じ事態を防ぐ設定はデジタル終活の実践、携帯回線・サブスクの解約は解約・名義変更一覧、見つかったネット口座の相続は銀行口座のガイド、株・暗号資産を含む財産全体は相続税の要否へ。生前の備えはエンディングノートの書き方に。
出典
この記事の制度の説明は、次の法令・公的資料にもとづいています(2026年10月確認)。個別のご判断は、司法書士・税理士などの専門家や各窓口にご確認ください。
- 国民生活センター『今から考えておきたい「デジタル終活」-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために-』
- 証券保管振替機構『登録済加入者情報の開示請求』
- e-Gov法令検索『不正アクセス行為の禁止等に関する法律』
※各社の手続き・名称は変わることがあります。本ページは一般的な説明です。最新の手順は各サービスの公式案内でご確認ください。