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実家の名義を確認する|親が元気なうちにやる、最も割のいい30分

「実家は親の名義」。多くの人がそう思い込んだまま相続を迎え、登記簿を見て初めて祖父母の名義のままだと知ります。そうなると、相続人は親の兄弟やその子まで広がり、10人・20人の実印を集める作業が待っている。逆に、親が元気なうちに名義を確認しておけば、問題があってもいちばん人数が少ない今のうちに解決できます。確認は法務局で600円・30分。

確認の方法
登記事項証明書
法務局600円・誰でも取れる
洗い出し
名寄帳
市区町村。親名義の不動産一覧
要注意
祖父母名義のまま
放置するほど相続人が増える
新しい義務
住所変更登記
2026年4月から2年以内

なぜ「元気なうち」なのか|相続人は倍々に増える

数字で見る放置のコスト 祖父名義の実家。祖父の相続人は祖母と子4人(親とその兄弟)の5人だったとする。祖母と親の兄弟2人が亡くなり、それぞれに子が2〜3人いると、いま協議に必要なのは10人前後。さらに一代進めば20人超。遺産分割協議は全員の実印が要るので、1人の音信不通・1人の認知症で止まる。祖父の代で協議していれば5人で済んだ話です。

2024年4月からは相続登記が義務化され、過去の相続分も2027年3月末までに登記が必要になりました。「いつか」の問題が「期限のある問題」に変わっています。

確認のしかた①|登記事項証明書を取る

どこで全国どこの法務局でも取れる(実家の所在地でなくてよい)。窓口600円、オンライン請求(登記・供託オンライン申請システム)で郵送520円・窓口受取490円(2025年4月改定後)。登記情報提供サービスなら閲覧用PDFが331円
誰が誰でも取れる。所有者の同意も委任状も不要。親に内緒でも確認だけはできる(ただし後述のとおり、話してから取るのが本筋)
必要な情報不動産の「地番」「家屋番号」(住所とは別の番号)。固定資産税の納税通知書に記載。わからなければ法務局備え付けのブルーマップや窓口で住所から調べられる
見るところ権利部(甲区): 所有者の氏名・住所・取得の原因(売買・相続)。ここが祖父母名義なら数次相続。権利部(乙区): 抵当権・根抵当権。完済済みのローンの抵当権が残っていることが多い

確認のしかた②|名寄帳で「全部」を洗い出す

実家の建物と土地だけとは限りません。前の家の土地、畑、山林、私道の持分、墓地。親も忘れている不動産が名寄帳(固定資産課税台帳の一覧)で見つかります。

登記事項証明書の読み方|3つの区を見る

取り寄せた証明書は、上から「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」の3段になっています。見るところは決まっています。

表題部土地なら所在・地番・地目・面積、建物なら家屋番号・種類・構造・床面積。増築が登記されていない家は珍しくなく、実際の床面積と違えば売却時に表題変更登記が要ります
権利部(甲区)所有者と、所有権が移った経緯。ここに親の名前があるかを最初に確認します。祖父母の名前のままなら数次相続の手続きが待っています。持分が「2分の1」などと書かれていれば共有名義です
権利部(乙区)抵当権など、所有権以外の権利。住宅ローンを組んだ家には金融機関の抵当権が設定されています。「登記記録に関する事項」が「抹消」になっていれば消えていますが、完済したのに抹消登記をしていない家が非常に多い。乙区に抵当権が残ったままの家は、売却も担保設定もできません

甲区に「持分」が見えたら|共有名義の落とし穴

親と亡くなった祖父、あるいは親と叔父の共有になっている実家は、地方では珍しくありません。共有の土地は共有者全員の同意がなければ売れず、貸すにも制約があります。親の持分だけを相続しても、家は動かせません。親が元気なうちなら、他の共有者から持分を買い取る・贈与を受ける・逆に親の持分を渡して整理する、といった話し合いができます。相続が起きてからでは、相手方の相続人まで巻き込んで人数が倍になります。

抵当権が残っていたら|抹消登記は自分でできる

ローンを完済すると、金融機関から「抵当権抹消に必要な書類」(登記識別情報または登記済証・解除証書・委任状)が渡されます。この書類で法務局に抹消登記を申請するのですが、完済の安堵で放置され、書類が引き出しに眠っているケースが多いのです。手続きは難しくなく、登録免許税は不動産1つにつき1,000円(土地と建物で2,000円)。司法書士に頼んでも1万〜2万円程度です。

問題は、書類を紛失している場合と、金融機関が合併・消滅している場合です。金融機関に再発行を頼めば時間はかかっても解決しますが、親が元気なうちなら本人が動けるので数週間で済みます。相続後に相続人が同じことをやると、戸籍の束と数か月が要ります。乙区に抵当権が見えたら、帰省中に「ローンは終わってる?書類はどこ?」と聞いておきましょう。それだけで相続後の手続きが一つ減ります。

よくある発見と対処

祖父母名義のままだった数次相続。祖父母の相続人を戸籍で確定し、全員で遺産分割協議をして親(または自分たち)名義へ。人数が多ければ司法書士に依頼するのが現実的(見積もりは無料の事務所が多い)。今が最少人数という認識で早めに
完済したローンの抵当権が残っていた抵当権抹消登記(1件1,000円+書類)。銀行から受け取った完済書類が必要で、紛失していたら銀行に再発行を依頼。放置すると相続時・売却時に手間が増える。親が元気なうちに済ませるのが簡単
親の住所が古いままだった引っ越し・住居表示の変更が登記に反映されていないケース。2026年4月から住所・氏名の変更登記が義務化(変更から2年以内、正当な理由のない放置は5万円以下の過料の対象)。変更登記は1件1,000円で自分でもできる
共有名義だった(親と叔父で1/2ずつ等)相続のたびに共有者が増える構造。持分の買い取り・交換・分筆などの整理は当事者が少ない今のうちに。話がまとまるなら司法書士、まとまらないなら弁護士へ
借地・借家だった建物だけ親名義で土地は借地、というケース。借地権も相続財産になる。地主との契約書・地代の支払い記録のありかを確認
補足
登記の確認は「相続の準備」というより「宝探しと地雷探し」です。私道の持分や山林が見つかるのが宝(漏れると後で登記をやり直す)、祖父名義と残った抵当権が地雷。どちらも、見つかるのが早いほど安く済む。600円と30分でその両方が見つかるのだから、実家に帰る次の機会に納税通知書を見せてもらう。それだけで始まります。

ついでに確認する3つの書類

親への切り出し方

誤解されやすいこと

「固定資産税を払っているから、名義も親のはず」|別物

市区町村は登記名義人が亡くなっていても「現に所有している人」に課税します。祖父名義のまま親が納税している家は珍しくありません。納税者と登記名義人は別の概念で、確認は登記事項証明書でしか完結しません。

「親が生きているうちに名義を移せば楽」|生前贈与は税金が別の話

「今のうちに子の名義に」は、贈与税(相続より高くつくことが多い)・不動産取得税・登録免許税(贈与は2.0%、相続は0.4%)がかかる別の判断です。名義の「確認」と「移転」は分けて考え、移転を検討するなら相続時精算課税や住宅取得の特例も含めて税理士に相談を。確認だけなら税金は一切かかりません。

チェックリスト|帰省1回でできる

よくある質問

実家の名義は子どもが勝手に調べられますか
登記事項証明書は誰でも取得でき、所有者の同意は不要です(1通600円)。ただし名寄帳は本人や同居親族・代理人に限られます。確認をきっかけに親と話すのが目的なら、納税通知書を一緒に見るところから始めるのが自然です。
登記事項証明書はどこで取れますか
全国どこの法務局でも取れます。オンライン請求なら窓口受取490円・郵送520円、閲覧だけなら登記情報提供サービスで331円です。不動産の地番・家屋番号(住所とは別)が必要で、固定資産税の納税通知書に載っています。
実家が祖父名義のままでした。どうすればよいですか
祖父の相続人(すでに亡くなった人の分はその子)全員で遺産分割協議をして登記します。時間が経つほど相続人が増えるため、判明した時点が最少人数です。人数が多い場合は司法書士に依頼するのが現実的で、2027年3月末の相続登記義務化の期限も意識しておきましょう。
完済した住宅ローンの抵当権が残っていました
抵当権抹消登記(登録免許税は不動産1件につき1,000円)を行います。完済時に銀行から受け取った書類が必要で、紛失した場合は銀行に再発行を相談します。親が元気なうちに済ませると書類の再発行も簡単です。
親の住所が登記簿上古いままです。問題ありますか
2026年4月から住所・氏名の変更登記が義務化され、変更から2年以内に登記しないと過料の対象になり得ます。変更登記は1件1,000円で、住民票の除票や戸籍の附票で住所のつながりを示して申請します。相続や売却の際にも必要になるため、気づいたときに済ませるのが簡単です。

あわせて確認
相続が起きた後の登記は相続登記の義務化ガイド、協議のまとめ方は遺産分割協議書、実家をどうするかの話し合いは親が元気なうちに確認する30項目へ。実家を手放す段になったら実家じまいの順番に。

出典

この記事の制度の説明は、次の法令・公的資料にもとづいています(2026年10月確認)。個別のご判断は、司法書士・税理士などの専門家や各窓口にご確認ください。

※手数料は2026年8月時点の一般的な水準です。本ページは一般的な説明で、登記・税務の個別判断は司法書士・税理士にご確認ください。