実家の名義を確認する — 親が元気なうちにやる、最も割のいい30分
「実家は親の名義」。多くの人がそう思い込んだまま相続を迎え、登記簿を見て初めて祖父母の名義のままだと知ります。そうなると、相続人は親の兄弟やその子まで広がり、10人・20人の実印を集める作業が待っている。逆に、親が元気なうちに名義を確認しておけば、問題があってもいちばん人数が少ない今のうちに解決できます。確認は法務局で600円・30分。このページでは、確認の仕方、名義に問題があったときの対処、親への切り出し方を整理します。
なぜ「元気なうち」なのか — 相続人は倍々に増える
2024年4月からは相続登記が義務化され、過去の相続分も2027年3月末までに登記が必要になりました。「いつか」の問題が「期限のある問題」に変わっています。
確認のしかた① — 登記事項証明書を取る
| どこで | 全国どこの法務局でも取れる(実家の所在地でなくてよい)。窓口600円、オンライン請求(登記・供託オンライン申請システム)で郵送500円・窓口受取480円。登記情報提供サービスなら閲覧用PDFが331円 |
|---|---|
| 誰が | 誰でも取れる。所有者の同意も委任状も不要。親に内緒でも確認だけはできる(ただし後述のとおり、話してから取るのが本筋) |
| 必要な情報 | 不動産の「地番」「家屋番号」(住所とは別の番号)。固定資産税の納税通知書に記載。わからなければ法務局備え付けのブルーマップや窓口で住所から調べられる |
| 見るところ | 権利部(甲区): 所有者の氏名・住所・取得の原因(売買・相続)。ここが祖父母名義なら数次相続。権利部(乙区): 抵当権・根抵当権。完済済みのローンの抵当権が残っていることが多い |
確認のしかた② — 名寄帳で「全部」を洗い出す
実家の建物と土地だけとは限りません。前の家の土地、畑、山林、私道の持分、墓地。親も忘れている不動産が名寄帳(固定資産課税台帳の一覧)で見つかります。
- 市区町村の税務課で取得(1通300円前後)。その市区町村内の、その人名義の不動産が一覧になる。別の市区町村にあるものは、そこで別途
- 取れるのは本人・同居家族・委任状のある代理人など。親と一緒に行くか、委任状をもらう
- 非課税の土地(私道・墓地など)は納税通知書に載らないことがあり、名寄帳なら載る。相続登記の漏れの主犯がこの私道持分
- 固定資産税の納税通知書(毎年4〜6月に届く)でも概要はわかる。まず通知書、詳しくは名寄帳、の順
よくある発見と対処
| 祖父母名義のままだった | 数次相続。祖父母の相続人を戸籍で確定し、全員で遺産分割協議をして親(または自分たち)名義へ。人数が多ければ司法書士に依頼するのが現実的(見積もりは無料の事務所が多い)。今が最少人数という認識で早めに |
|---|---|
| 完済したローンの抵当権が残っていた | 抵当権抹消登記(1件1,000円+書類)。銀行から受け取った完済書類が必要で、紛失していたら銀行に再発行を依頼。放置すると相続時・売却時に手間が増える。親が元気なうちに済ませるのが簡単 |
| 親の住所が古いままだった | 引っ越し・住居表示の変更が登記に反映されていないケース。2026年4月から住所・氏名の変更登記が義務化(変更から2年以内、正当な理由のない放置は5万円以下の過料の対象)。変更登記は1件1,000円で自分でもできる |
| 共有名義だった(親と叔父で1/2ずつ等) | 相続のたびに共有者が増える構造。持分の買い取り・交換・分筆などの整理は当事者が少ない今のうちに。話がまとまるなら司法書士、まとまらないなら弁護士へ |
| 借地・借家だった | 建物だけ親名義で土地は借地、というケース。借地権も相続財産になる。地主との契約書・地代の支払い記録のありかを確認 |
ついでに確認する3つの書類
- 権利証(登記済証・登記識別情報) — 売却や一部の登記で使う。紛失していても相続登記はできる(司法書士の本人確認で代替)が、ありかを知っているだけで手続きが速い。仏壇の引き出し・金庫・銀行の貸金庫が定番の保管場所
- 購入時・建築時の契約書 — 将来売却したとき、取得費の証明があるかないかで譲渡所得税が大きく変わる(証明できないと売却額の5%を取得費とみなす概算に)。実家を数千万円で売る場面なら、この紙1枚が数百万円の差になり得る
- 境界の資料(測量図・境界確認書) — 隣地との境界が曖昧な土地は売却時に測量費(数十万円)と時間がかかる。資料の有無と、隣地とのもめごとの有無を聞いておく
親への切り出し方
- 制度の話として — 「相続登記が義務になったってニュースでやってた。うちの登記、どうなってるか見てみない?」。義務化は2024年、住所変更は2026年からと、時事の話題にしやすい
- 納税通知書から — 「固定資産税の紙、見せて。地番ってどこに書いてあるの?」と書類の話から入る。確認リスト30項目の「実家」の項目と同じ流れ
- 費用の話を先に — 「確認は600円。もし祖父ちゃん名義のままなら、今なら5人で済むけど、後になると10人になる」と数字で。損得の話は感情の話よりも通る
- 直させようとしない — 発見があっても、その場で「すぐ直そう」と迫らない。まず事実の共有。対処は親のペースで、必要なら司法書士の無料相談を一緒に
- きょうだいにも共有 — 確認した結果(名義・抵当権・不動産の一覧)は、その日のうちにきょうだいへ。「自分だけが知っている」状態は、後の協議で不信の種になる。1枚の紙かメッセージで全員に同じ情報を
誤解されやすいこと
「固定資産税を払っているから、名義も親のはず」— 別物
市区町村は登記名義人が亡くなっていても「現に所有している人」に課税します。祖父名義のまま親が納税している家は珍しくありません。納税者と登記名義人は別の概念で、確認は登記事項証明書でしか完結しません。
「親が生きているうちに名義を移せば楽」— 生前贈与は税金が別の話
「今のうちに子の名義に」は、贈与税(相続より高くつくことが多い)・不動産取得税・登録免許税(贈与は2.0%、相続は0.4%)がかかる別の判断です。名義の「確認」と「移転」は分けて考え、移転を検討するなら相続時精算課税や住宅取得の特例も含めて税理士に相談を。確認だけなら税金は一切かかりません。
チェックリスト — 帰省1回でできる
- 固定資産税の納税通知書を見せてもらい、地番・家屋番号を控えた
- 登記事項証明書(土地・建物)を取得した(法務局600円またはオンライン)
- 甲区で所有者名義を確認した(親か・祖父母か・共有か)
- 乙区で抵当権の有無を確認した(完済済みなら抹消の段取り)
- 所有者の住所が現住所と一致しているか確認した(2026年4月から変更登記義務)
- 名寄帳で親名義の不動産を洗い出した(私道・山林・墓地の持分)
- 権利証(登記識別情報)・購入時の契約書のありかを聞いた
- 発見事項と対処の要否を家族で共有した(数次相続なら司法書士の見積もりへ)
よくある質問
- 実家の名義は子どもが勝手に調べられますか
- 登記事項証明書は誰でも取得でき、所有者の同意は不要です(1通600円)。ただし名寄帳は本人や同居親族・代理人に限られます。確認をきっかけに親と話すのが目的なら、納税通知書を一緒に見るところから始めるのが自然です。
- 登記事項証明書はどこで取れますか
- 全国どこの法務局でも取れます。オンライン請求なら窓口受取480円・郵送500円、閲覧だけなら登記情報提供サービスで331円です。不動産の地番・家屋番号(住所とは別)が必要で、固定資産税の納税通知書に載っています。
- 実家が祖父名義のままでした。どうすればよいですか
- 祖父の相続人(すでに亡くなった人の分はその子)全員で遺産分割協議をして登記します。時間が経つほど相続人が増えるため、判明した時点が最少人数です。人数が多い場合は司法書士に依頼するのが現実的で、2027年3月末の相続登記義務化の期限も意識してください。
- 完済した住宅ローンの抵当権が残っていました
- 抵当権抹消登記(登録免許税は不動産1件につき1,000円)を行います。完済時に銀行から受け取った書類が必要で、紛失した場合は銀行に再発行を相談します。親が元気なうちに済ませると書類の再発行も簡単です。
- 親の住所が登記簿上古いままです。問題ありますか
- 2026年4月から住所・氏名の変更登記が義務化され、変更から2年以内に登記しないと過料の対象になり得ます。変更登記は1件1,000円で、住民票の除票や戸籍の附票で住所のつながりを示して申請します。相続や売却の際にも必要になるため、気づいたときに済ませるのが簡単です。
あわせて確認 — 相続が起きた後の登記は相続登記の義務化ガイド、協議のまとめ方は遺産分割協議書、実家をどうするかの話し合いは親が元気なうちに確認する30項目へ。実家を手放す段になったら実家じまいの順番に。
※手数料は2026年8月時点の一般的な水準です。本ページは一般的な説明で、登記・税務の個別判断は司法書士・税理士にご確認ください。