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亡くなった人の借金の調べ方 — 3か月で全体像をつかむ
相続放棄の期限は3か月。その3か月は「決断のための時間」ではなく「調査のための時間」です。プラスの財産は通帳や不動産で見えますが、借金は本人しか知らないことが多く、放置すると相続してから督促状で発覚します。このページでは、信用情報機関への開示請求を軸に、借金を漏れなく洗い出す手順と、それでも判断がつかないときの限定承認を整理します。
最初にやる
信用情報の開示
3社。1件1,000円前後・1〜2週間
期限
3か月
調査に使う時間
載らない借金
個人間・保証・税金
別ルートで確認
判断できないとき
限定承認/期間の伸長
どちらも3か月以内に申立て
信用情報機関3社への開示請求
クレジットカード・カードローン・キャッシング・住宅ローン・自動車ローン・分割払いは、次の3機関のいずれかに記録されています。3社すべてに請求するのが原則です(加盟している会社が違うため)。
| CIC | 主にクレジットカード・信販・携帯電話の割賦。カード会社の多くが加盟。相続人が請求可 |
|---|---|
| JICC(日本信用情報機構) | 主に消費者金融・信販。カードローン・キャッシングの記録 |
| KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 銀行・信用金庫・銀行系カードローン。住宅ローンもここ |
| 費用 | 1件1,000円前後(機関と請求方法で異なる。郵送は1,000〜1,500円程度)。3社で3,000〜4,500円程度 |
| 必要書類 | 開示請求書(各機関のサイトから)、亡くなった方の死亡が確認できる戸籍、請求者が相続人であることがわかる戸籍、請求者の本人確認書類。戸籍は他の手続きと共通 |
| 日数 | 郵送で1〜2週間。急ぐなら各機関の案内を確認(窓口対応の有無は機関により異なる) |
| 見るところ | 「残債額」「入金状況」「異動」の記載。異動は長期延滞や代位弁済を意味し、保証会社に請求が移っている可能性を示す |
時間の逆算 死亡から2週間以内に戸籍を集め始め、1か月目に3社へ請求 → 1.5か月目に結果が届く → 残り1.5か月で判断と申述。この日程なら3か月に間に合います。逆に「2か月目から動く」と、結果待ちのまま期限が迫り、伸長の申立てが必要になります。
信用情報に載らない借金の探し方
3社の開示で見えるのは金融機関との取引だけです。次のものは載りません。
| 個人間の借金 | 親族・知人からの借入。借用書、通帳の定期的な振込、手帳・メモ、遺品の中の書面。生前に聞いていた話も手がかり |
|---|---|
| 連帯保証・連帯債務 | 最も危険な見落とし。本人が借りていなくても、他人の借金を背負う。契約書、勤務先での保証(役員の会社債務)、親族の住宅ローンやアパートローン、子や兄弟の事業融資。関係者への聞き取りが必要 |
| 税金・社会保険料の滞納 | 住民税・固定資産税・国民健康保険料・国民年金保険料。督促状や納付書、役所への照会で確認。相続放棄しない限り相続人が納める |
| 家賃・医療費・施設利用料 | 未払分は債務。管理会社・病院・施設に確認 |
| 事業上の債務 | 自営業なら買掛金・リース・手形。取引先と顧問税理士に確認 |
| 奨学金の保証 | 子や孫の奨学金の連帯保証人・保証人になっているケース。日本学生支援機構からの通知を確認 |
郵便物と通帳から読む
- 郵便物を1〜2か月分 — 督促状、請求書、カード明細、金融機関からの案内、裁判所からの特別送達(訴訟・支払督促)。裁判所からの封筒は最優先で開ける
- 通帳の引き落とし — 毎月同じ日に同じ額が出ていれば返済の可能性。振込先の名称で借入先がわかる
- 通帳の入金 — まとまった入金があれば借入の可能性。日付と金額を控える
- スマホ・パソコン — アプリ、メールの「ご返済」「お借入」検索(デジタル遺品)
- 財布・手帳 — カード類、ATM明細、借入先のカード
- 不動産の登記事項証明書 — 乙区に抵当権・根抵当権があれば、その債権者に残債を照会(確認のしかた)
補足
調査で最も怖いのは金額の大きさではなく、連帯保証です。信用情報に載らず、本人の通帳にも痕跡が残らず、何年も経ってから債権者が現れる。親が誰かの保証人になっていた可能性が少しでもあるなら、生前の付き合い(親族の事業、子の借入、勤務先での立場)を思い出し、心当たりに直接聞いてください。「保証人になっていませんでしたか」と聞かれて怒る人はいません。
それでも判断がつかないとき — 3つの道
| ① 期間の伸長 | 3か月以内に家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てる。収入印紙800円+切手。認められれば数か月延びる。調査が終わらないときの第一選択 |
|---|---|
| ② 限定承認 | プラスの財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ。「借金の方が多いかもしれないが、自宅だけは残したい」「財産の全体が最後までわからない」場合の制度 |
| ③ 相続放棄 | マイナスが明らかに多いなら放棄。次順位の相続人に相続権が移るので、事前に一報を |
限定承認のしくみと、使いにくさ
- 相続人全員で共同して申述する必要がある。1人でも反対・非協力なら使えない(放棄した人がいる場合は残り全員で可)
- 期限は放棄と同じ3か月以内。家庭裁判所に申述書と財産目録を提出(収入印紙800円+切手)
- 受理後、相続財産清算人(相続人の中から選任されることが多い)が、官報公告(5万円前後)→債権者への催告→財産の換価→弁済、という清算手続きを行う。数か月〜1年以上かかる
- 税務上の落とし穴 — 限定承認では、被相続人が財産を時価で譲渡したものとみなされ(みなし譲渡所得課税)、含み益のある不動産や株式があると準確定申告で所得税が発生することがある
- 先買権 — 自宅など特定の財産を残したい場合、相続人が家庭裁判所の選任した鑑定人の評価額を支払って取得できる
- 手続きが複雑なため、実務では利用件数が非常に少ない。使うなら弁護士・司法書士への依頼が前提
実務的な結論としては、マイナスが多そうなら放棄、判断がつかないなら伸長を申し立ててさらに調査、限定承認は「自宅だけはどうしても残したい」など明確な理由があるときの選択肢、と整理するのが現実的です。
債権者から連絡が来たときの対応
| 電話が来た | 「相続するかどうか検討中です。書面で内容を送ってください」と伝える。金額や返済の話をその場でしない。担当者名と連絡先を控える |
|---|---|
| 書面で確認すること | 債権者名、契約日、当初の借入額、現在の残債と内訳(元金・利息・遅延損害金)、最終返済日。相続税の債務控除にも使う |
| 時効の可能性 | 最終返済から5年以上経っている借金は時効の可能性がある。ただし「払います」と答えると時効が使えなくなるので、安易に返答しない。弁護士・司法書士に相談を |
| 放棄する場合 | 受理後、相続放棄申述受理証明書(1通150円)を取り、債権者に提示する。以後の請求は止まる |
| 裁判所からの書類 | 支払督促・訴状には期限(2週間程度)がある。放置すると相続人が敗訴し支払義務が確定する。すぐに専門家へ |
調査中にやってはいけないこと
- 預金を引き出して使う — 単純承認とみなされ、放棄できなくなるおそれ(相続放棄の注意点)
- 債権者に「払います」と答える — 債務の承認になり得る。「相続するかどうか検討中です」と伝え、書面での請求を求める
- 一部の債権者にだけ返済する — 単純承認とみなされるうえ、他の債権者との公平を欠く
- 遺産分割協議をする — 協議は相続を前提とする行為なので、放棄の可能性がある間は行わない
- 形見分けで価値のある物を持ち帰る — 貴金属・骨董は「処分」と見られ得る
チェックリスト — 最初の1か月
- 郵便物を1〜2か月分確認した(裁判所からの封筒は最優先)
- 通帳の入出金12か月分を確認し、返済らしき引き落としを控えた
- 戸籍を集め、信用情報3社(CIC・JICC・KSC)に開示請求した
- 不動産の登記事項証明書で抵当権の有無を確認した
- 連帯保証の可能性を関係者に聞いた(親族の事業・子の借入・勤務先)
- 税金・保険料の滞納を役所に照会した
- 家賃・医療費・施設利用料の未払を確認した
- 調査が3か月に間に合わないなら、期限内に伸長を申し立てた
よくある質問
- 亡くなった人の借金はどうやって調べますか
- 信用情報機関3社(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)に相続人が開示請求します。1件1,000円前後、郵送で1〜2週間です。あわせて郵便物・通帳の引き落とし・不動産の抵当権・関係者への聞き取りで、信用情報に載らない借金(個人間・連帯保証・滞納税金)を確認します。
- 信用情報の開示に必要な書類は何ですか
- 各機関の開示請求書、亡くなった方の死亡が確認できる戸籍、請求者が相続人であることがわかる戸籍、請求者の本人確認書類です。戸籍は銀行や年金の手続きと共通なので、まとめて取得しておくと効率的です。
- 連帯保証人になっていたかはどう調べますか
- 信用情報には原則載らないため、契約書などの書面、親族や勤務先関係者への聞き取り、通帳の動きから推測するしかありません。親族の事業融資、子や孫の奨学金、アパートローンなど心当たりがあれば直接確認してください。
- 3か月では調査が終わりません
- 期限内に家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立ててください。収入印紙800円と郵便切手で、認められれば数か月の延長が可能です。放棄すると決めていなくても申立てできます。
- 限定承認は使えますか
- プラスの財産の範囲でのみ債務を引き継ぐ制度で、相続人全員で3か月以内に共同申述します。ただし官報公告や清算手続きで数か月〜1年以上かかり、含み益のある不動産があるとみなし譲渡所得課税の問題も生じます。実務では利用が少なく、自宅を残したいなど明確な理由があるときに専門家と検討する選択肢です。
あわせて確認 — 判断の結果としての相続放棄(3か月)、放棄しない場合の遺産分割協議、口座の凍結と当面の資金は銀行口座のガイド、ネット上の借入はデジタル遺品へ。期限つき手続きの全体像は期限順ガイドに。
※開示請求の費用・方法は各機関の最新の案内をご確認ください。本ページは一般的な説明で、限定承認や債務整理の判断は弁護士・司法書士にご相談ください。