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亡くなった人の借金の調べ方|3か月で全体像をつかむ

相続放棄の期限は3か月。その3か月は「決断のための時間」ではなく「調査のための時間」です。プラスの財産は通帳や不動産で見えますが、借金は本人しか知らないことが多く、調べないままでいると、相続してから督促状で発覚します。

最初にやる
信用情報の開示
3社。郵送で1件1,500〜2,400円・1〜3週間
期限
3か月
調査に使う時間
載らない借金
個人間・保証・税金
別ルートで確認
判断できないとき
限定承認/期間の伸長
どちらも3か月以内に申立て

信用情報機関3社への開示請求

クレジットカード・カードローン・キャッシング・住宅ローン・自動車ローン・分割払いは、次の3機関のいずれかに記録されています。3社すべてに請求するのが原則です(加盟している会社が違うため)。

CIC主にクレジットカード・信販・携帯電話の割賦。カード会社の多くが加盟。相続人が請求可
JICC(日本信用情報機構)主に消費者金融・信販。カードローン・キャッシングの記録
KSC(全国銀行個人信用情報センター)銀行・信用金庫・銀行系カードローン。住宅ローンもここ
費用1件1,500〜2,400円程度(2026年10月時点の郵送開示。CIC 1,500円、JICC 2,177円、全国銀行個人信用情報センター 2,403円)。3社で6,000円程度
必要書類開示請求書(各機関のサイトから)、亡くなった方の死亡が確認できる戸籍、請求者が相続人であることがわかる戸籍、請求者の本人確認書類。戸籍は他の手続きと共通
日数郵送で1〜3週間。JICCと全国銀行個人信用情報センターは7〜10日ほど、CICは法定相続情報一覧図で申し込むと10日ほど、戸籍で申し込むと20日ほど。急ぐなら各機関の案内を確認(窓口対応の有無は機関により異なる)
見るところ「残債額」「入金状況」「異動」の記載。異動は長期延滞や代位弁済を意味し、保証会社に請求が移っている可能性を示す
時間の逆算 死亡から2週間以内に戸籍を集め始め、1か月目に3社へ請求 → 1か月半〜2か月目に結果がそろう → 残り1か月余りで判断と申述。この日程なら3か月に間に合います。逆に「2か月目から動く」と、結果待ちのまま期限が迫り、伸長の申立てが必要になります。

信用情報に載らない借金の探し方

3社の開示で見えるのは金融機関との取引だけです。次のものは載りません。

個人間の借金親族・知人からの借入。借用書、通帳の定期的な振込、手帳・メモ、遺品の中の書面。生前に聞いていた話も手がかり
連帯保証・連帯債務最も危険な見落とし。本人が借りていなくても、他人の借金を背負う。契約書、勤務先での保証(役員の会社債務)、親族の住宅ローンやアパートローン、子や兄弟の事業融資。関係者への聞き取りが必要
税金・社会保険料の滞納住民税・固定資産税・国民健康保険料・国民年金保険料。督促状や納付書、役所への照会で確認。相続放棄しない限り相続人が納める
家賃・医療費・施設利用料未払分は債務。管理会社・病院・施設に確認
事業上の債務自営業なら買掛金・リース・手形。取引先と顧問税理士に確認
奨学金の保証子や孫の奨学金の連帯保証人・保証人になっているケース。日本学生支援機構からの通知を確認

郵便物と通帳から読む

補足
調査で最も怖いのは金額の大きさではなく、連帯保証です。信用情報に載らず、本人の通帳にも痕跡が残らず、何年も経ってから債権者が現れる。親が誰かの保証人になっていた可能性が少しでもあるなら、生前の付き合い(親族の事業、子の借入、勤務先での立場)を思い出し、心当たりに直接聞きましょう。「保証人になっていませんでしたか」と聞かれて怒る人はいません。

それでも判断がつかないとき|3つの道

① 期間の伸長3か月以内に家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てる。収入印紙800円+切手。認められれば数か月延びる。調査が終わらないときの第一選択
② 限定承認プラスの財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ。「借金の方が多いかもしれないが、自宅だけは残したい」「財産の全体が最後までわからない」場合の制度
③ 相続放棄マイナスが明らかに多いなら放棄。次順位の相続人に相続権が移るので、事前に一報を

限定承認のしくみと、使いにくさ

実務的な結論としては、マイナスが多そうなら放棄、判断がつかないなら伸長を申し立ててさらに調査、限定承認は「自宅だけはどうしても残したい」など明確な理由があるときの選択肢、と整理するのが現実的です。

連帯保証は、信用情報に出てこない

調査でいちばん怖いのは、本人の借金ではなく他人の借金の保証人になっていたケースです。保証債務も相続されますが、本人が返済していない限り信用情報には載りません。3か月を過ぎてから請求書が届くのが、最悪の展開です。

保証の存在が疑われるのに確かめきれない場合は、弁護士・司法書士に相談したうえで、期間伸長か相続放棄を検討する場面です。「たぶん大丈夫だろう」で3か月を過ごすのが、いちばん高くつきます。

補足
3か月を過ぎた後で予想外の借金が判明した場合でも、道が閉じたわけではありません。借金の存在を知らなかったことに相当の理由があると認められれば、知った時点から3か月以内の相続放棄が受理された裁判例があります。請求書が届いたその日に、支払いも承認もせず専門家に相談してください。一部でも支払うと承認とみなされる恐れがあります。

債権者から連絡が来たときの対応

電話が来た「相続するかどうか検討中です。書面で内容を送ってください」と伝える。金額や返済の話をその場でしない。担当者名と連絡先を控える
書面で確認すること債権者名、契約日、当初の借入額、現在の残債と内訳(元金・利息・遅延損害金)、最終返済日。相続税の債務控除にも使う
時効の可能性最終返済から5年以上経っている借金は時効の可能性がある。ただし「払います」と答えると時効が使えなくなるので、安易に返答しない。弁護士・司法書士に相談を
放棄する場合受理後、相続放棄申述受理証明書(1通150円)を取り、債権者に提示する。以後の請求は止まる
裁判所からの書類支払督促・訴状には期限(2週間程度)がある。放置すると相続人が敗訴し支払義務が確定する。すぐに専門家へ

3か月では終わらないとき|期間伸長の申立て

信用情報の開示に1〜3週間、郵便物の到着を待つのにさらに数週間。3か月はすぐに埋まります。調査が終わらないまま期限を迎えそうなら、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てられます。放置して3か月を過ぎると自動的に単純承認(借金も全部引き継ぐ)になるため、間に合わないと判断した時点で動きましょう。

申立先亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
費用収入印紙800円(相続人1人につき)+連絡用の郵便切手。自分で申し立てられる手続きです
必要書類申立書、亡くなった方の戸籍(死亡の記載があるもの)、申立人の戸籍、住民票除票
認められる期間3か月程度の延長が一般的。事情によりさらに伸ばせることもあります
通るための書き方「調査中」だけでは弱い。何を調べていて、なぜ終わらないかを具体的に書きましょう。「信用情報の開示を請求したが回答待ち」「不動産が3か所あり評価に時間がかかる」「相続人の一人が海外在住」など、事実を並べます

期限内に申し立てることが絶対条件です。3か月を過ぎてからでは受け付けられません。日数の起算は「自己のために相続の開始があったことを知った時」からで、亡くなった日とは限らない点も押さえておきましょう。疎遠だった親族の死を後から知った場合、その知った日からの3か月です。

調査中にやってはいけないこと

チェックリスト|最初の1か月

よくある質問

亡くなった人の借金はどうやって調べますか
信用情報機関3社(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)に相続人が開示請求します。郵送で1件1,500〜2,400円程度、1〜3週間です。あわせて郵便物・通帳の引き落とし・不動産の抵当権・関係者への聞き取りで、信用情報に載らない借金(個人間・連帯保証・滞納税金)を確認します。
信用情報の開示に必要な書類は何ですか
各機関の開示請求書、亡くなった方の死亡が確認できる戸籍、請求者が相続人であることがわかる戸籍、請求者の本人確認書類です。戸籍は銀行や年金の手続きと共通なので、まとめて取得しておくと効率的です。
連帯保証人になっていたかはどう調べますか
信用情報には原則載らないため、契約書などの書面、親族や勤務先関係者への聞き取り、通帳の動きから推測するしかありません。親族の事業融資、子や孫の奨学金、アパートローンなど心当たりがあれば直接確認しましょう。
3か月では調査が終わりません
期限内に家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立ててください。収入印紙800円と郵便切手で、認められれば数か月の延長が可能です。放棄すると決めていなくても申立てできます。
限定承認は使えますか
プラスの財産の範囲でのみ債務を引き継ぐ制度で、相続人全員で3か月以内に共同申述します。ただし官報公告や清算手続きで数か月〜1年以上かかり、含み益のある不動産があるとみなし譲渡所得課税の問題も生じます。実務では利用が少なく、自宅を残したいなど明確な理由があるときに専門家と検討する選択肢です。

あわせて確認
判断の結果としての相続放棄(3か月)、放棄しない場合の遺産分割協議、口座の凍結と当面の資金は銀行口座のガイド、ネット上の借入はデジタル遺品へ。期限つき手続きの全体像は期限順ガイドに。

出典

この記事の制度の説明は、次の法令・公的資料にもとづいています(2026年10月確認)。個別のご判断は、司法書士・税理士などの専門家や各窓口にご確認ください。

※開示請求の費用・方法は各機関の最新の案内をご確認ください。本ページは一般的な説明で、限定承認や債務整理の判断は弁護士・司法書士にご相談ください。