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遺産分割協議書の作り方 — 誰が何を相続するかを、1枚にまとめる

遺言がなければ、財産は相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で分けます。その結果を書面にしたものが遺産分割協議書で、銀行の解約相続登記相続税の申告が揃って「これを出してください」と言う書類です。様式は自由ですが、要件を外すと受け付けてもらえず、作り直しになります。このページでは、必要な場面、要件、書き方、まとまらないときの出口を整理します。

必要な場面
遺言がないとき
相続人が2人以上で財産を分ける場合
要件
全員の署名+実印
+印鑑証明書。1人でも欠けると無効
期限
法律上なし
相続税の10か月が実質の目安
まとまらない
家庭裁判所の調停
収入印紙1,200円

必要な場面・不要な場面

必要遺言がなく、相続人が2人以上いて、財産を法定相続分と違う形で(または特定の人が特定の財産を)取得する場合。銀行・登記・相続税申告で提出を求められる
不要・有効な遺言があり、その内容どおりに分ける(遺言書を提出)
・相続人が1人(その人が全部相続)
・法定相続分どおりの共有で登記する(ただし後で不便)
・預金だけで、銀行所定の用紙に相続人全員が署名する方式で済ませる(銀行によって可)
一部だけ先に預金だけ先に分けて不動産は後で、という「一部分割」の協議書も作れる。ただし全体の分け方と矛盾しないよう注意

話し合いの進め方 — 協議書を書く前に

代償分割の計算例 遺産は自宅(評価2,400万円)と預金600万円、相続人は子2人。長男が自宅を取得し、長女が預金600万円を取得すると差は1,800万円。法定相続分(各1,500万円)に合わせるなら、長男が長女に代償金900万円を払う。協議書に「長男は長女に対し代償金として900万円を〇年〇月〇日までに支払う」と明記する。書かないと、900万円が贈与と扱われるおそれがある。

書き方の要件

タイトル「遺産分割協議書」
被相続人の特定氏名、生年月日、死亡日、最後の本籍、最後の住所
相続人全員の表示「相続人全員で協議した結果、次のとおり分割することに合意した」旨と、全員の氏名
財産の特定不動産は登記事項証明書のとおり(所在・地番・地目・地積、家屋番号・種類・構造・床面積)。預金は銀行名・支店名・種別・口座番号。株式は銘柄・株数。「自宅」「〇〇銀行の預金」では登記・銀行が受け付けない
誰が何を取得するか財産ごとに取得者を明記。代償金があれば金額と支払期限。負債を誰が引き継ぐかも書いてよい(ただし債権者には対抗できない)
後日判明した財産「本協議書に記載のない財産が判明した場合は、〇〇が取得する(または改めて協議する)」の一文を入れると、作り直しを防げる
日付・署名・押印協議が成立した日。相続人全員が自署し、実印を押印。複数ページなら契印(ページのつなぎ目に全員の実印)
添付相続人全員の印鑑証明書(銀行は発行3〜6か月以内を求めることが多い。登記は期限なし)
通数相続人の人数分+提出用。全員が原本を1通ずつ持つ。原本還付を受ければ1通で回せる

書式の例(骨格)

遺産分割協議書
被相続人 〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生、令和〇年〇月〇日死亡、最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇、最後の住所 同上)の遺産について、相続人全員において分割協議を行った結果、次のとおり合意した。
1. 相続人 △△△△は、次の不動産を取得する。 所在 〇〇市〇〇一丁目 地番 〇番〇 地目 宅地 地積 〇〇.〇〇㎡/所在 同上 家屋番号 〇番〇 種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建 床面積 1階〇〇.〇〇㎡ 2階〇〇.〇〇㎡
2. 相続人 □□□□は、次の預金を取得する。 〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
3. 相続人 △△△△は、前項の取得の代償として、相続人 □□□□に対し金〇〇〇万円を令和〇年〇月〇日までに支払う。
4. 本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人 △△△△がこれを取得する。
以上の協議を証するため本書を作成し、各自署名押印のうえ各1通を保有する。
令和〇年〇月〇日 住所・氏名(自署)・実印(相続人全員分)

作った後の流れ

銀行協議書の原本(または写し+原本提示)、印鑑証明書、戸籍一式か法定相続情報一覧図、所定の届出書。取得者の口座へ払戻し。提出から2〜3週間
相続登記協議書、印鑑証明書、戸籍、評価証明書、登記申請書、登録免許税(評価額×0.4%)。取得者が単独で申請できる。完了まで1〜2週間
相続税申告協議書の写しと印鑑証明書を申告書に添付。分割が確定していることが、配偶者の税額軽減・小規模宅地の特例の条件
保管全員が原本を1通ずつ保管。提出先には原本還付を求めると1通で回せる。後日の「聞いていない」を防ぐ証拠でもある

相続人に「署名できない人」がいる場合

まとまらないとき — 調停・審判

遺産分割調停家庭裁判所に申し立て、調停委員を介して話し合う。申立費用は収入印紙1,200円+切手。相手方の住所地の家庭裁判所。月1回程度の期日で、平均6か月〜1年
審判調停が不成立なら、裁判官が分け方を決める。法定相続分が基本
その間の相続税10か月の期限は止まらない。法定相続分で仮申告し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付。分割後に更正の請求で精算(配偶者の軽減・小規模宅地の特例はこの方法で後から適用可)
補足
協議が長引く家庭に共通するのは、財産の一覧が共有されていないことです。「兄が通帳を見せない」「妹が評価額を信じない」——数字の前に疑いが立つ。残高証明・登記事項証明書・評価証明書をコピーして全員に同じものを配るだけで、話し合いの土台が変わります。協議書の文面より、この1セットを先に。

誤解されやすいこと

「長男が全部相続すると口約束した」— 書面と実印がなければ手続きは進まない

口約束でも合意は合意ですが、銀行も法務局も書面と印鑑証明書がなければ動きません。後から「そんな約束はしていない」と言われれば証明もできません。合意できたその日のうちに書面にし、署名押印をもらうこと。

「協議書を作ったら、もう変えられない」— 全員が合意すればやり直せる

相続人全員の合意で再協議・再作成はできます。ただし税務上は一度成立した分割を取り消して分け直すと贈与と扱われる可能性があるため、登記や申告の前に内容を固めるのが原則です。

チェックリスト

よくある質問

遺産分割協議書は必ず作らなければいけませんか
遺言がなく相続人が2人以上で、法定相続分と違う分け方や特定の財産の取得を決める場合に必要です。遺言どおりに分ける、相続人が1人、という場合は不要です。預金だけなら銀行所定の用紙で済むこともあります。
相続人全員が集まらないと作れませんか
一堂に会する必要はありません。内容を電話や手紙で合意し、同じ書面を順番に回して全員が署名押印する「持ち回り」でも有効です。同じ内容の書面を複数作り、各自が署名押印して全部をそろえる方法もあります。
印鑑証明書に有効期限はありますか
法律上の期限はなく、相続登記では発行日を問いません。銀行は発行から3〜6か月以内を求めることが多いので、銀行提出が控えているなら署名押印の直前に取るのが安全です。
まとまらないときはどうすればよいですか
家庭裁判所の遺産分割調停(収入印紙1,200円)を申し立てます。調停委員を介して月1回程度の期日で話し合い、平均6か月〜1年です。不成立なら審判で裁判官が決めます。相続税の10か月の期限は止まらないため、法定相続分で仮申告して後から精算します。
認知症の親が相続人に含まれています
本人は協議に参加できず、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらう必要があります(2〜4か月)。後見人は本人の法定相続分を確保する立場で協議に加わるため、「親の取り分をゼロにする」協議はできません。

あわせて確認 — 協議書の前提になる戸籍の集め方、協議書を使う先の銀行口座相続登記相続税の各ガイドへ。そもそも協議を不要にするのが遺言です。期限つき手続きの全体像は期限順ガイドに。

※本ページは一般的な説明です。相続人間に争いがある場合は弁護士に、登記を伴う場合は司法書士にご相談ください。