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株式・投資信託の相続 — 現金では受け取れない

預金は解約して現金で受け取れますが、株式や投資信託はそうはいきません。原則として相続人名義の証券口座に移してから、売るか保有し続けるかを決めます。つまり相続人側にも口座が必要で、証券会社の指定があることも。さらに相続税の評価額は「死亡日の株価」ではなく4つの候補から選べる、NISAは非課税が終わる、といった固有のルールがあります。このページでは、手続きの流れと、税金で損をしないための要点を整理します。

受け取り方
現物移管
相続人の証券口座へ。現金化は移管後
相続税の評価
4つのうち最低額
死亡日と過去3か月の月平均
口座を探す
ほふり開示 6,050円
どの証券会社かがわかる
NISA
非課税は終了
相続人の課税口座へ移る

手続きの流れ

1. 証券会社に連絡死亡を伝え、相続手続きの案内を取り寄せる。この時点で口座は凍結され、売買も出金もできなくなる
2. 残高証明書を取得死亡日時点の残高証明を請求(1通1,000円前後)。銘柄・数量が確定し、相続税遺産分割の資料になる。「参考価格」も併記してもらえることが多い
3. 誰が相続するか決める遺言があればそれに従う。なければ遺産分割協議。銘柄ごと・数量ごとに分けられるので、株数を按分する分け方も可能
4. 相続人の証券口座を用意同じ証券会社に口座を作るよう求められるのが原則。ネット証券なら数日、対面証券なら1〜2週間。すでに口座があればそれを使える
5. 移管の手続き相続手続依頼書、戸籍一式または法定相続情報一覧図、相続人全員の印鑑証明書、遺産分割協議書または遺言書を提出。提出から移管完了まで2〜4週間
6. 移管後相続人の口座に銘柄が入る。売却するか保有を続けるかは相続人の判断。売却してから分けたい場合は、代表者に移管して売却し現金で分ける(換価分割)という方法もある

相続税の評価額 — 4つのうち最も低い額

上場株式の相続税評価は、次の4つのうち最も低い金額を選べます。自動的に最安が適用されるわけではなく、申告時に自分で選びます。

① 死亡日の終値その日が休日なら前後の最も近い日の終値(前後が等距離なら平均)
② 死亡した月の毎日の終値の平均月中平均
③ 死亡した月の前月の平均
④ 死亡した月の前々月の平均
計算例 5月20日に死亡。ある銘柄の①5月20日終値2,400円 ②5月平均2,350円 ③4月平均2,200円 ④3月平均2,500円。③の2,200円を選べる。1,000株なら、①なら240万円のところ220万円で評価でき、20万円分の課税財産が減る。株価が下落局面にあった時期の相続では、この差が大きくなります。

投資信託は、死亡日の基準価額から解約時にかかる源泉所得税等を差し引いた額で評価します。非上場株式(同族会社の株)は評価方法が複雑で、税理士の領分です。

NISA・iDeCo・持株会の扱い

NISA口座死亡により非課税の適用は終了。相続人の課税口座(特定口座・一般口座)へ移管される。相続人のNISA口座には移せない。取得価額は死亡日の時価に洗い替えられるため、それ以前の含み益には課税されない(結果的に有利になることがある)
iDeCo・企業型DC証券の相続とは別枠。死亡一時金として遺族が請求する。死亡から3年以内の請求なら「500万円×法定相続人数」の非課税枠が使える(3年超で一時所得、5年超で相続財産扱い)。死亡退職金のガイド参照
従業員持株会勤務先の持株会は、死亡により退会となり、株式が引き出されるか売却される。勤務先の総務に確認
外国株・外貨建て資産移管できる証券会社が限られることがある。評価は死亡日の為替レート(TTB)で円換算
信用取引・FXの建玉相続できないため、証券会社が強制決済する。損失が出れば債務として引き継ぐ
補足
株の相続でよく揉めるのが「いつ売るか」です。移管が終わるまで数週間かかり、その間に株価は動く。「あのとき売っていれば」を避けるには、遺産分割の段階で「移管後すみやかに全部売却して現金で按分する」と協議書に書いておくのが確実です。保有を続けたい人がいる場合は、その人が他の財産で調整する形にすると、後の不満が出にくくなります。

売却したときの税金

分け方の3パターン

換価分割(売って分ける)代表者1人の口座に全部移管 → 売却 → 現金を協議書どおりに分配。最もシンプルで、株価変動による不公平も起きにくい。協議書に「換価分割である」と明記しないと、代表者から他の相続人への分配が贈与とみなされるおそれ
現物で按分銘柄ごと・株数ごとに分けて各自の口座へ。保有を続けたい相続人がいる場合。全員が証券口座を開く必要があり、手続きは重くなる。単元未満の端数が出る点にも注意
1人が取得して代償金1人が全部相続し、他の相続人に現金を払う。事業承継で自社株を集約したい場合などに使う

相続人が複数で「とりあえず全部売る」方針なら、換価分割が圧倒的に楽です。全員分の口座開設が不要で、移管も1回で済みます。

どの証券会社にあるかわからないとき

誤解されやすいこと

「株は解約して現金でもらえる」— 移管が先

預金と違い、証券は現物のまま相続人の口座へ移すのが原則です。相続人が証券口座を持っていない場合、新規開設から始める必要があり、その分だけ日数がかかります。相続税の申告期限(10か月)から逆算して早めに動いてください。

「値下がりしたから相続税は安くなるはず」— 評価は死亡時点

相続税の評価は死亡日(とその前3か月)が基準です。相続手続き中に株価が下がっても評価額は変わりません。逆に上がっても増えません。手続きが長引くほど、実際の売却額と評価額のズレが大きくなります。

チェックリスト

よくある質問

株式は現金で受け取れますか
原則としてできません。相続人名義の証券口座へ現物のまま移管し、その後に売却するかどうかを相続人が決めます。そのため相続人側にも証券口座(原則として同じ証券会社)が必要です。
相続税の評価額はいつの株価ですか
死亡日の終値、死亡した月の平均、前月の平均、前々月の平均の4つのうち、最も低い金額を選べます。申告時に自分で選ぶ必要があり、自動的に最安が適用されるわけではありません。
亡くなった人のNISAはどうなりますか
死亡により非課税の適用は終了し、相続人の課税口座へ移管されます。相続人のNISA口座には移せません。取得価額は死亡日の時価に洗い替えられるため、それ以前の含み益には課税されません。
どの証券会社に口座があるかわかりません
証券保管振替機構(ほふり)に相続人が開示請求すると、どの証券会社に口座があるかがわかります。手数料6,050円、回答まで2〜4週間です。郵便物(取引残高報告書・配当金計算書)や通帳の入金記録も有力な手がかりです。
売却したときの税金はどうなりますか
譲渡益に20.315%かかります。取得費は亡くなった方の購入価格を引き継ぐため、取得価額が不明だと売却価格の5%とみなされ税額が大きくなります。相続税を払った場合、相続開始の翌日から3年10か月以内に売却すれば相続税額を取得費に加算でき、税額を減らせます。

あわせて確認 — 預金の手続きは銀行口座のガイド、口座の存在を探すにはデジタル遺品、評価額を合計しての判定は相続税の申告要否、分け方は遺産分割協議書へ。

※手続き・手数料は証券会社により異なります。本ページは一般的な説明で、評価と税務の個別判断は税理士にご確認ください。