亡くなった人の車|名義変更、保険、税金、処分までの流れ
車は「動く相続財産」です。名義を変えないままでは、売ることも廃車にすることもできません。事故を起こせば保険の支払いでもめる原因になります。手続きは、普通車と軽自動車でまったく別。普通車は相続の手続き(遺産分割協議書など)が要り、軽自動車は戸籍だけで済みます。
まず確認する3つのこと
- 車検証
「所有者」欄を見る。所有者が亡くなった本人なら相続の手続き。ディーラーやローン会社が所有者なら所有権留保つきで、先にローンの精算と所有権解除が必要。使用者だけが本人(リース・カーシェア)なら契約先に連絡して返却 - これからどうするか
家族が乗る(名義変更)/売る(名義変更してから、または買取店の代行で)/処分する(永久抹消)。方針で書類が変わる - 自動車保険
任意保険の保険会社に死亡の連絡。名義変更まで補償が切れないよう「誰が運転するか」を伝えて契約を調整。放置して家族が運転し事故を起こすと、支払いで争いになり得る
普通車の名義変更(移転登録)
| 窓口 | 新しい所有者の住所を管轄する運輸支局・自動車検査登録事務所(平日のみ) |
|---|---|
| 共通の書類 | 車検証、亡くなった方の死亡がわかる戸籍(出生からの連続は不要。死亡と相続人がわかる範囲)、新所有者の実印+印鑑証明書(3か月以内)、車庫証明(保管場所が変わる場合。同居家族が同じ場所に置くなら不要の扱いが多い)、手数料700円(オンライン申請なら600円。2026年4月改定後)、ナンバー変更があれば1,500円前後 |
| 原則の追加書類 | 遺産分割協議書(相続人全員の実印。作り方)または相続人全員の印鑑証明書つき共同申請 |
| 簡易な方法(査定額100万円以下) | 「遺産分割協議成立申立書」が使える。取得する相続人1人の実印だけで済み、他の相続人の印鑑証明書が不要。査定額100万円以下であることを示す査定書(買取店・ディーラーの無料査定)を添付 |
| 日数・代行 | 書類がそろえば窓口で1〜2時間。行政書士・ディーラーに頼むと代行費1万〜3万円程度 |
軽自動車の名義変更
| 窓口 | 新しい使用者の住所を管轄する軽自動車検査協会(運輸支局とは別組織。平日のみ) |
|---|---|
| 書類 | 車検証、亡くなった事実と相続人であることがわかる戸籍(コピー可の事務所が多い)、新所有者の住民票(またはマイナンバーカードの写し等)、申請書。遺産分割協議書・印鑑証明書は不要、認印で可 |
| 費用 | 名義変更自体は無料(ナンバー変更時はプレート代1,500円前後) |
| ポイント | 軽は法律上「許可制」でなく「届出制」に近く、相続の証明が簡素。半日あれば終わる |
保険と税金
| 任意保険(自動車保険) | 等級(無事故割引)は、配偶者または同居の親族へ引き継げる。別居の子には引き継げないのが原則。乗る人が決まったら名義変更とセットで契約変更。誰も乗らないなら解約し、等級を将来使う可能性があれば「中断証明書」(10年有効)を取る |
|---|---|
| 自賠責保険 | 車と一緒に承継される。名義変更の書類に含めて変更。廃車時は残期間の還付がある |
| 自動車税(種別割) | 毎年4月1日の所有者に課税。名義変更が遅れると亡くなった方宛てに納税通知が届き続け、相続人が納める。年度途中の売却・廃車では普通車は月割で還付(軽自動車は還付なし) |
| 相続税での扱い | 車は相続財産。相続税の計算では死亡日時点の時価(買取相場・査定額)で評価 |
ローンが残っている場合(所有権留保)
- 車検証の所有者がローン会社・ディーラーになっていれば、車は担保に入っている。まずローン会社に死亡を連絡
- 残債は相続人が一括返済するか、審査を経て支払いを引き継ぐ。完済すると「所有権解除」の書類が発行され、それから相続の名義変更へ
- 残債が大きく相続放棄を検討しているなら、車に触らない(売却・廃車・使用は承認とみなされるおそれ)。ローン会社に引き揚げてもらう対応もある
手続きの流れ|家族が乗る場合の2週間
| 1〜3日目 | 車検証で所有者を確認。保険会社に連絡し、当面の運転者を伝える。買取店で無料査定(100万円以下かの判定と、相続税評価の資料を兼ねる) |
|---|---|
| 4〜7日目 | 戸籍(死亡と相続人がわかる範囲)・新所有者の印鑑証明書を取得。100万円以下なら遺産分割協議成立申立書を作成、超えるなら遺産分割協議書に車の記載を入れて全員の実印をもらう |
| 8〜10日目 | 保管場所が変わるなら警察署で車庫証明を申請(交付まで3〜7日・2,000〜2,900円) |
| 2週目 | 運輸支局で移転登録(平日・1〜2時間・700円)。同日に保険の名義・等級を切り替え。自動車税の納税義務者が翌年度から新所有者に変わる |
乗らない場合|売却・廃車
- 売却
原則は相続人へ名義変更してから売却。実務では買取店が「相続手続きと売却をまとめて代行」してくれることが多く、必要書類(戸籍・協議書または申立書・印鑑証明書)を渡せば店側で運輸支局の手続きまで行う。査定は2〜3社比べる - 廃車(永久抹消)
解体業者で解体後、運輸支局で永久抹消登録。重量税の残期間・自賠責・自動車税の還付がある。「廃車買取」業者は還付金込みで引き取る場合があるので、内訳を確認 - 一時抹消
しばらく誰も乗らないが手放したくない場合。ナンバーを返して公道走行を止め、自動車税を止める。再開時に再登録 - 車内の私物とETC・ドラレコ
手放す前に車検証入れ・トランク・ETCカードを確認。ETCカードはクレジットカードの解約と一緒に
名義変更が進まないとき
相続した車でいちばん多い行き詰まりは、書類の不備ではなく人が動かないことです。放っておくと自動車税だけが毎年届きます。自動車税(種別割)は4月1日時点で登録簿に載っている所有者に課されるため、実際に誰が乗っているかは関係ありません。
ほかの相続人が協議書に押印してくれない
移転登録には、原則として相続人全員の合意を示す遺産分割協議書と印鑑証明書が要ります。一人でも応じない人がいると止まります。車だけを取り出して話を進めるのは難しく、遺産全体の分け方の問題として、家庭裁判所の遺産分割調停で解決することになります。申立費用は数千円程度ですが、期日が重なると半年以上かかります。
現実的な判断として、査定額が数万円の車のために調停を起こす人はほとんどいません。先に車の価値を確かめるのが順番です。買取店の査定が10万円に満たないなら、他の相続人に「引き取って処分してよいか」を一筆もらうほうが早く終わります。価値のある車(年式が新しい、人気車種)なら、遺産分割の対象としてきちんと扱う意味があります。
譲った相手が名義変更してくれない
親の車を知人に譲った、あるいは相続人の一人が乗っているが登録は故人のまま。この状態でも、納税通知は登録上の名義人である故人宛てに届き続け、相続人が納めることになります。相手が動かない限り、こちらの負担は続いたままです。
- 車が自分の手元にある
一時抹消登録をすれば課税は止まります。ナンバープレートを外して運輸支局へ返納する手続きで、手数料は数百円。再び乗るときは中古新規登録で復活できます - 車は相手が持っている
手元にないと抹消登録はできません(ナンバーを返せないため)。まず相手に移転登録を求め、応じない場合は譲渡の経緯を示す書面を用意して法的手段を検討することになります - 都道府県の自動車税事務所に相談する
事情を届け出ることで課税上の取り扱いを相談できる場合があります。対応は都道府県で異なるため、納税通知書に書かれた問い合わせ先へ確認しましょう
「強制抹消」は待っていても起きない
「放置すれば役所が勝手に抹消してくれる」と考えるのは危険です。車検切れのまま長く置かれた車について、運輸支局や自治体が職権で登録を消す扱いはありますが、いつ行われるかは分からず、あてにできる制度ではありません。その間も課税は続き、滞納すれば延滞金がつき、預金の差押えに至ることもあります。状況を変えられるのは、待つ側ではなく手続きをする側です。
誤解されやすいこと
「家族なら名義はそのままで乗れる」|乗れるが、リスクは全部残る
運転そのものは可能ですが、名義が故人のままでは保険の整理がつかず、売却も廃車もできず、自動車税の通知は故人宛てに届き続けます。相続人が複数いる場合、名義未変更の車は全員の共有状態で、1人の判断で処分できません。
「廃車にするなら手続きは要らない」|抹消登録までが廃車
解体しただけでは登録が残り、自動車税がかかり続けます。永久抹消登録を出して初めて課税が止まり、還付が受けられます。業者任せにした場合も「抹消登録の完了通知」を受け取って確認を。
「原付・バイク」はもっと簡単
原付(125cc以下)は市区町村役場の税務課で廃車申告か名義変更(役所手続きの日にまとめて可)。軽二輪(126〜250cc)と小型二輪(251cc〜)は運輸支局ですが、書類は軽自動車に近い簡素さです。台数が多い農機具・トラクターはナンバーの有無で扱いが分かれるので、役場の税務課に確認しましょう。
チェックリスト
- 車検証で所有者欄を確認した(本人/ローン会社/リース)
- 任意保険の保険会社に連絡し、当面の運転者と補償を確認した
- 方針(乗る・売る・廃車・一時抹消)を相続人で決めた
- 普通車なら査定を取り、100万円以下なら遺産分割協議成立申立書のルートを選んだ
- 必要書類(車検証・戸籍・印鑑証明書・車庫証明・申立書または協議書)をそろえた
- 運輸支局(軽は軽自動車検査協会)で移転登録した。または買取店の代行に書類を渡した
- 保険の等級引き継ぎ・解約(中断証明書)を手続きした
- 自動車税の納税義務者変更と、廃車時の還付を確認した
よくある質問
- 亡くなった親の車の名義変更には何が必要ですか
- 普通車は車検証、死亡と相続人がわかる戸籍、遺産分割協議書(または査定額100万円以下なら遺産分割協議成立申立書と査定書)、新所有者の実印・印鑑証明書、必要に応じて車庫証明で、運輸支局で移転登録します(手数料700円)。軽自動車は軽自動車検査協会で、戸籍と車検証・住民票程度で済み、協議書は不要です。
- 名義変更に期限はありますか
- 相続を理由とする移転登録に法律上の罰則つき期限はありません。ただし保険・売却・税金の実務上、放置の不利益が大きいため、方針が決まり次第早めに行うのが実際的です。
- 査定額100万円以下の簡易手続きとは何ですか
- 普通車の相続で、車の査定額が100万円以下の場合、遺産分割協議書の代わりに取得する相続人1人が作成する「遺産分割協議成立申立書」で移転登録できる制度です。他の相続人の印鑑証明書が不要になり、書類集めが大幅に軽くなります。査定書(無料査定で可)を添付します。
- 自動車保険の等級は引き継げますか
- 配偶者または同居の親族なら等級を引き継げます。別居の子は原則不可です。誰も乗らない場合は解約し、将来また車に乗る可能性があれば中断証明書(10年有効)を発行してもらうと等級を保存できます。
- ローンが残っている車はどうすればよいですか
- 車検証の所有者がローン会社なら、残債を精算して所有権解除を受けてから名義変更します。残債が大きく相続放棄を検討する場合は、車を使ったり処分したりせず、専門家とローン会社に相談してください。
出典
この記事の制度の説明は、次の法令・公的資料にもとづいています(2026年10月確認)。個別のご判断は、司法書士・税理士などの専門家や各窓口にご確認ください。
- 関東運輸局『単独相続(相続人のうち一人が相続する場合)』
- 国土交通省『遺産分割協議成立申立書』(自動車検査登録総合ポータルサイト)
- 国土交通省『車を一時使用中止・解体・輸出するためには』(抹消登録)
- 軽自動車検査協会『名義変更(売買・譲渡・その他)』
※申立書の運用・必要書類は運輸支局・事務所により細部が異なることがあります。本ページは一般的な説明です。