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亡くなった人の車|名義変更、保険、税金、処分までの流れ

車は「動く相続財産」です。名義を変えないままでは、売ることも廃車にすることもできません。事故を起こせば保険の支払いでもめる原因になります。手続きは、普通車と軽自動車でまったく別。普通車は相続の手続き(遺産分割協議書など)が要り、軽自動車は戸籍だけで済みます。

普通車
運輸支局で移転登録
登録手数料700円+協議書か簡易書類
軽自動車
軽自動車検査協会
戸籍と車検証などで可。協議書不要
期限
法律上なし
保険・売却・税金の実務が期限代わり
保険
等級は引き継げる
同居の親族なら。連絡は早めに

まず確認する3つのこと

普通車の名義変更(移転登録)

窓口新しい所有者の住所を管轄する運輸支局・自動車検査登録事務所(平日のみ)
共通の書類車検証、亡くなった方の死亡がわかる戸籍(出生からの連続は不要。死亡と相続人がわかる範囲)、新所有者の実印+印鑑証明書(3か月以内)、車庫証明(保管場所が変わる場合。同居家族が同じ場所に置くなら不要の扱いが多い)、手数料700円(オンライン申請なら600円。2026年4月改定後)、ナンバー変更があれば1,500円前後
原則の追加書類遺産分割協議書(相続人全員の実印。作り方)または相続人全員の印鑑証明書つき共同申請
簡易な方法(査定額100万円以下)「遺産分割協議成立申立書」が使える。取得する相続人1人の実印だけで済み、他の相続人の印鑑証明書が不要。査定額100万円以下であることを示す査定書(買取店・ディーラーの無料査定)を添付
日数・代行書類がそろえば窓口で1〜2時間。行政書士・ディーラーに頼むと代行費1万〜3万円程度
費用の目安 自分でやる場合: 移転登録700円+印鑑証明書300円+戸籍数百〜数千円+(必要なら)車庫証明2,000〜2,900円 = 数千円。査定書は買取店の無料査定でよい。行政書士に頼めば+1万〜3万円、ディーラーにまとめて頼めば+2万〜5万円が相場感。古い車ほど「査定額100万円以下」の簡易ルートに乗りやすく、書類集めが一気に軽くなる。

軽自動車の名義変更

窓口新しい使用者の住所を管轄する軽自動車検査協会(運輸支局とは別組織。平日のみ)
書類車検証、亡くなった事実と相続人であることがわかる戸籍(コピー可の事務所が多い)、新所有者の住民票(またはマイナンバーカードの写し等)、申請書。遺産分割協議書・印鑑証明書は不要、認印で可
費用名義変更自体は無料(ナンバー変更時はプレート代1,500円前後)
ポイント軽は法律上「許可制」でなく「届出制」に近く、相続の証明が簡素。半日あれば終わる

保険と税金

任意保険(自動車保険)等級(無事故割引)は、配偶者または同居の親族へ引き継げる。別居の子には引き継げないのが原則。乗る人が決まったら名義変更とセットで契約変更。誰も乗らないなら解約し、等級を将来使う可能性があれば「中断証明書」(10年有効)を取る
自賠責保険車と一緒に承継される。名義変更の書類に含めて変更。廃車時は残期間の還付がある
自動車税(種別割)毎年4月1日の所有者に課税。名義変更が遅れると亡くなった方宛てに納税通知が届き続け、相続人が納める。年度途中の売却・廃車では普通車は月割で還付(軽自動車は還付なし)
相続税での扱い車は相続財産。相続税の計算では死亡日時点の時価(買取相場・査定額)で評価

ローンが残っている場合(所有権留保)

補足
「とりあえずそのまま乗る」が一番危険です。名義が故人のままの車で事故を起こすと、保険会社との間で契約者・運転者の整理に時間がかかり、支払いが遅れたり争いになったりします。乗るなら名義と保険を先に。手続き自体は、書類さえそろえば半日です。

手続きの流れ|家族が乗る場合の2週間

1〜3日目車検証で所有者を確認。保険会社に連絡し、当面の運転者を伝える。買取店で無料査定(100万円以下かの判定と、相続税評価の資料を兼ねる)
4〜7日目戸籍(死亡と相続人がわかる範囲)・新所有者の印鑑証明書を取得。100万円以下なら遺産分割協議成立申立書を作成、超えるなら遺産分割協議書に車の記載を入れて全員の実印をもらう
8〜10日目保管場所が変わるなら警察署で車庫証明を申請(交付まで3〜7日・2,000〜2,900円)
2週目運輸支局で移転登録(平日・1〜2時間・700円)。同日に保険の名義・等級を切り替え。自動車税の納税義務者が翌年度から新所有者に変わる

乗らない場合|売却・廃車

名義変更が進まないとき

相続した車でいちばん多い行き詰まりは、書類の不備ではなく人が動かないことです。放っておくと自動車税だけが毎年届きます。自動車税(種別割)は4月1日時点で登録簿に載っている所有者に課されるため、実際に誰が乗っているかは関係ありません。

ほかの相続人が協議書に押印してくれない

移転登録には、原則として相続人全員の合意を示す遺産分割協議書と印鑑証明書が要ります。一人でも応じない人がいると止まります。車だけを取り出して話を進めるのは難しく、遺産全体の分け方の問題として、家庭裁判所の遺産分割調停で解決することになります。申立費用は数千円程度ですが、期日が重なると半年以上かかります。

現実的な判断として、査定額が数万円の車のために調停を起こす人はほとんどいません。先に車の価値を確かめるのが順番です。買取店の査定が10万円に満たないなら、他の相続人に「引き取って処分してよいか」を一筆もらうほうが早く終わります。価値のある車(年式が新しい、人気車種)なら、遺産分割の対象としてきちんと扱う意味があります。

譲った相手が名義変更してくれない

親の車を知人に譲った、あるいは相続人の一人が乗っているが登録は故人のまま。この状態でも、納税通知は登録上の名義人である故人宛てに届き続け、相続人が納めることになります。相手が動かない限り、こちらの負担は続いたままです。

「強制抹消」は待っていても起きない

「放置すれば役所が勝手に抹消してくれる」と考えるのは危険です。車検切れのまま長く置かれた車について、運輸支局や自治体が職権で登録を消す扱いはありますが、いつ行われるかは分からず、あてにできる制度ではありません。その間も課税は続き、滞納すれば延滞金がつき、預金の差押えに至ることもあります。状況を変えられるのは、待つ側ではなく手続きをする側です。

補足
相続した車を残すか手放すかで迷ったら、年間の維持費を先に出しましょう。自動車税(1,000cc超1,500cc以下で年34,500円)+自賠責(24か月で約1万7,000〜2万円)+任意保険+車検(2年で10万円前後)+駐車場代。都市部なら年20万〜40万円になります。「もったいないから」と残した車の維持費が、数年で車両価格を超えることは珍しくありません。

誤解されやすいこと

「家族なら名義はそのままで乗れる」|乗れるが、リスクは全部残る

運転そのものは可能ですが、名義が故人のままでは保険の整理がつかず、売却も廃車もできず、自動車税の通知は故人宛てに届き続けます。相続人が複数いる場合、名義未変更の車は全員の共有状態で、1人の判断で処分できません。

「廃車にするなら手続きは要らない」|抹消登録までが廃車

解体しただけでは登録が残り、自動車税がかかり続けます。永久抹消登録を出して初めて課税が止まり、還付が受けられます。業者任せにした場合も「抹消登録の完了通知」を受け取って確認を。

「原付・バイク」はもっと簡単

原付(125cc以下)は市区町村役場の税務課で廃車申告か名義変更(役所手続きの日にまとめて可)。軽二輪(126〜250cc)と小型二輪(251cc〜)は運輸支局ですが、書類は軽自動車に近い簡素さです。台数が多い農機具・トラクターはナンバーの有無で扱いが分かれるので、役場の税務課に確認しましょう。

チェックリスト

よくある質問

亡くなった親の車の名義変更には何が必要ですか
普通車は車検証、死亡と相続人がわかる戸籍、遺産分割協議書(または査定額100万円以下なら遺産分割協議成立申立書と査定書)、新所有者の実印・印鑑証明書、必要に応じて車庫証明で、運輸支局で移転登録します(手数料700円)。軽自動車は軽自動車検査協会で、戸籍と車検証・住民票程度で済み、協議書は不要です。
名義変更に期限はありますか
相続を理由とする移転登録に法律上の罰則つき期限はありません。ただし保険・売却・税金の実務上、放置の不利益が大きいため、方針が決まり次第早めに行うのが実際的です。
査定額100万円以下の簡易手続きとは何ですか
普通車の相続で、車の査定額が100万円以下の場合、遺産分割協議書の代わりに取得する相続人1人が作成する「遺産分割協議成立申立書」で移転登録できる制度です。他の相続人の印鑑証明書が不要になり、書類集めが大幅に軽くなります。査定書(無料査定で可)を添付します。
自動車保険の等級は引き継げますか
配偶者または同居の親族なら等級を引き継げます。別居の子は原則不可です。誰も乗らない場合は解約し、将来また車に乗る可能性があれば中断証明書(10年有効)を発行してもらうと等級を保存できます。
ローンが残っている車はどうすればよいですか
車検証の所有者がローン会社なら、残債を精算して所有権解除を受けてから名義変更します。残債が大きく相続放棄を検討する場合は、車を使ったり処分したりせず、専門家とローン会社に相談してください。

あわせて確認
名義変更に使う戸籍の集め方と遺産分割協議書、ETC・ガソリンカードの解約一覧、車を含む財産全体の相続税の要否へ。期限つき手続きの全体像は期限順ガイドに。

出典

この記事の制度の説明は、次の法令・公的資料にもとづいています(2026年10月確認)。個別のご判断は、司法書士・税理士などの専門家や各窓口にご確認ください。

※申立書の運用・必要書類は運輸支局・事務所により細部が異なることがあります。本ページは一般的な説明です。