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海外がからむ相続|最初に確認する3点

海外の口座がある、相続人の1人が海外赴任中、亡くなった方が外国籍だった。こうした事情がひとつでもあると、手続きは国内だけの相続とまったく違うものになります。時間も費用も数倍かかることがあり、自力で完結させるのは現実的ではありません。それでも、専門家に相談する前に自分で確認できることはあります。亡くなった方の国籍、資産がどこの国にあるか、相続人がどこに住んでいるか。まずこの3点からです。

まず確認
被相続人の国籍
適用される法律が決まる
次に確認
資産の所在国
不動産はその国の法律のことも
期間の目安
1〜3年
プロベートがあると長引く
日本の期限
相続税10か月
海外の事情では延びない

1. どの国の法律が適用されるか

日本の「法の適用に関する通則法」では、相続は被相続人の本国法によると定められています。つまり誰がどれだけ相続するかは、原則として亡くなった方の国籍の国の法律で決まります。

日本国籍の人が亡くなった資産が海外にあっても、相続人と相続分は日本の民法で判断するのが原則。ただし現地の不動産は例外がある
外国籍の人が亡くなったその国の法律による。遺留分がない国、配偶者の権利が強い国、宗教法による国など内容は大きく異なる
反致(はんち)相手国の法律が「不動産の所在地の法による」としている場合、日本法に戻ってくることがある。英米法系(アメリカ・イギリスなど)で起きやすい
不動産と動産を分ける国不動産はその所在地の法、預金など動産は住所地の法、という国がある。1つの相続で複数の国の法律が並行することになる
二重国籍だった場合常居所(生活の本拠)などから、より密接な関係のある国の法が選ばれる

この判断は法律の専門領域です。自分で結論を出さず、国籍と資産の所在地を整理して専門家に渡すところまでを目標にしましょう。

2. 日本の相続税は、どこまでかかるか

「海外の資産だから日本の税務署には関係ない」という理解は誤りです。課税範囲は住所と国籍、居住していた期間で決まります。

典型的なケース被相続人・相続人ともに日本に住所がある場合、国内外すべての財産が課税対象。海外の預金も不動産も含む
相続人が海外在住日本国籍を持ち、被相続人か相続人が過去10年以内に日本に住所を有していた場合などは、国外財産も課税対象になる
基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数。相続人が海外にいても人数に数える
外国税額控除現地でも相続税・遺産税がかかった場合、日本の相続税から一定額を控除できる。二重課税を丸ごと防げるとは限らない
国外財産調書年末時点で国外財産の合計が5,000万円超なら、本人が生前に提出する義務がある。提出があれば資産の把握が容易になる
評価の基準外貨建ての財産は、相続開始日の対顧客直物電信買相場(TTB)で円換算するのが原則
補足
実務で最も困るのは、海外資産の存在を家族が知らないケースです。日本の金融機関のように「名寄せ」で探す仕組みが国をまたいでは働きません。海外赴任中に作った口座、駐在時に買った保険、海外の証券口座。本人しか知らないまま10年経つと、休眠口座として現地の州や政府に移管される制度を持つ国もあります。ご自身に海外資産があるなら、金融機関名と国名だけでも書き残しましょう。残高やパスワードは不要です(デジタル終活の考え方と同じです)。

3. 海外資産の名義変更|プロベートという壁

英米法系の国(アメリカ、イギリス、オーストラリア、シンガポール、香港など)では、プロベートという裁判所の手続きを経ないと遺産を動かせません。日本のように相続人が直接名義を書き換える形ではないのが特徴です。

4. 外国籍・海外在住の相続人がいる場合

日本の遺産分割協議には、実印と印鑑登録証明書が必要です。ところが、海外在住者や外国籍の人は印鑑登録ができないことがあります。代わりになる書類があります。

署名証明(サイン証明)印鑑登録証明書の代わり。日本の在外公館(大使館・領事館)で発行。遺産分割協議書を持参し、領事の面前で署名する形式が確実
在留証明住民票の代わり。同じく在外公館で発行。不動産の相続登記で必要になる
手数料在外公館で1通あたり数十米ドル相当(現地通貨で納付)
日本国籍がない相続人在外公館は使えないため、現地の公証人(Notary Public)による認証を受ける
アポスティーユ・領事認証外国の公文書を日本で使うための証明。ハーグ条約加盟国ならアポスティーユ、非加盟国なら領事認証
翻訳外国語の書類は日本語訳を添付。翻訳者の氏名を記載する。1通あたり数千円〜数万円
出生・婚姻の証明戸籍のない国では、出生証明書・婚姻証明書で相続人であることを示す。戸籍に代わる証明の収集が最も時間を食う

海外資産にたどり着けないとき

国際相続で最初につまずくのは法律ではなく、どこに何があるか分からないことです。海外の金融機関は、日本のように一括で照会する仕組みがありません。手がかりから追うしかありません。

見つかっても、資産額が小さければ動かさない判断もあります。プロベートの費用が数十万円かかるのに残高が10万円なら、手続きの費用が上回ります。ただし日本の相続税の申告では、残っている限り財産として計上が必要です。「放置する」と「申告しない」は別なので、税理士に伝えたうえで判断してください。

海外に住む相続人が、日本の手続きをするとき

逆のパターンもよくあります。亡くなったのは日本の親で、相続人の一人が海外在住。このとき問題になるのは、印鑑証明書と住民票がないことです。日本に住民登録がないと、どちらも取れません。

印鑑証明書の代わりサイン証明(署名証明)。現地の日本大使館・領事館で、本人が出向いて書類に署名し、それが本人のものだと証明してもらいます。遺産分割協議書を持参して綴じ込む形式が一般的で、協議書を先に完成させてから行く必要があります
住民票の代わり在留証明。同じく大使館・領事館で発行。不動産の登記で住所の証明が要る場合に使います
手続きの進め方日本の相続人が協議書を作って海外へ送り、現地で署名証明を受けて返送、という往復になります。郵送だけで1〜2か月。相続税の10か月から逆算して、早めに動き始めましょう
領事館が遠い場合国によっては数百キロ離れています。現地の公証人(Notary Public)の認証で代替できる金融機関もあるため、提出先に先に確認すると、渡航の手間が省けることがあります

費用と期間の見通し

目安 国内のみの相続なら司法書士・税理士の報酬は合計30万〜80万円ですが、国際相続では100万〜300万円を見込むのが現実的です。内訳は、日本側の税理士(国外財産を含む申告)50万〜150万円、現地の弁護士費用50万〜200万円、翻訳・認証5万〜20万円、渡航費。期間は1〜3年。日本の相続税申告期限10か月には間に合わないことが多く、未分割での申告→後日調整という流れになります。

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よくある質問

海外の資産にも日本の相続税はかかりますか
かかる場合が多いです。被相続人と相続人がともに日本に住所を有していれば、国内外すべての財産が課税対象になります。相続人が海外在住でも、日本国籍を持ち被相続人か相続人が過去10年以内に日本に住所を有していた場合などは国外財産も対象です。現地で課税された分は外国税額控除で調整しますが、全額が控除されるとは限りません。
プロベートとは何ですか
アメリカやイギリスなど英米法系の国で、遺産を裁判所の関与のもとで清算・分配する手続きです。相続人が直接名義を書き換えることはできず、選任された管理人が債務を清算してから分配します。半年から2年程度かかり、費用は数十万円から数百万円になります。
相続人が海外に住んでいます。遺産分割協議はどうすればよいですか
印鑑登録証明書の代わりになるのが、日本の在外公館で発行される署名証明(サイン証明)です。住民票の代わりは在留証明。日本国籍がない相続人は在外公館を利用できないため、現地の公証人による認証を受け、必要に応じてアポスティーユまたは領事認証を添えます。
相続税の10か月の期限に間に合いません
海外の手続きが理由でも期限は延びません。実務では、いったん法定相続分で未分割のまま申告・納税し、分割が確定した後に更正の請求や修正申告で調整します。この場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は当初申告では使えないため、税理士に相談してください。
費用はどのくらいかかりますか
日本国内だけの相続なら専門家報酬は30万〜80万円程度ですが、国際相続では100万〜300万円が目安です。日本側の税理士、現地の弁護士、翻訳と認証、渡航費が加わるためです。期間も1年から3年を見込みましょう。

あわせて確認
課税の判定は相続税の申告は必要か、協議書の作り方は遺産分割協議書、株式や証券は株式・投資信託の相続、専門家の選び方は相談先の選び方へ。自分の資産を残す側の準備はデジタル終活に。

出典

この記事の制度の説明は、次の法令・公的資料にもとづいています(2026年10月確認)。個別のご判断は、司法書士・税理士などの専門家や各窓口にご確認ください。

※本ページは一般的な説明です。適用される法律・課税範囲・現地の手続きは国と個別事情により大きく異なります。判断は必ず国際相続の経験がある弁護士・税理士・司法書士にご確認ください。現時点で広告・紹介料を伴うリンクは含まれていません。