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亡くなった後の高額療養費|相続人が請求できる「戻るお金」

最後の入院や治療で、1か月の医療費の自己負担が上限額を超えていれば、超えた分は高額療養費として戻ってきます。本人が亡くなっていても、請求する権利は相続人に引き継がれます。時効は診療を受けた月の翌月1日から2年。請求しなければ戻りません。

誰が請求
相続人
本人の権利を引き継ぐ
時効
2年
診療月の翌月1日から
窓口
加入していた保険者
国保・後期は役所、健保は協会けんぽ・組合
単位
暦月ごと
1日〜末日で計算。月またぎは別々

仕組み|「月ごと」「上限を超えた分」が戻る

高額療養費は、同じ月(1日〜末日)に医療機関の窓口で払った自己負担の合計が、年齢と所得で決まる上限額を超えたとき、超えた分を払い戻す制度です。上限額は70歳未満と70歳以上で区分が違い、所得で5段階程度に分かれます。金額は制度改正で変わるため、以下は計算の型です。

計算の型(70歳未満・年収約370〜770万円の区分、2026年8月診療分からの式) 上限額 = 85,800円 +(その月の医療費総額 − 286,000円)× 1%。2026年7月までの診療月は改定前の式(80,100円 +(医療費総額 − 267,000円)× 1%)で計算します。亡くなる前の入院が改定の前後にまたがるときは、月ごとにどちらの式かを確かめましょう。具体的な金額は次の節の計算例で示します。入院が2か月にまたがれば、それぞれの月で別々に計算します。

この「月またぎ」が、亡くなる前後で未請求が残りやすい理由です。入院の最後の月は請求のお知らせが届く前に亡くなることが多く、遺族が気づかないまま時効を迎えます。上限額の具体的な区分表は、加入していた保険者(協会けんぽ・市区町村)の最新の案内で確認しましょう。

いくら戻るか|上限額の表と計算例

戻る額は「その月に払った自己負担」から「所得区分ごとの上限額」を引いた差額です。上限額は年齢と所得で決まっていて、全国共通です(2026年8月から2027年7月までの診療分の額。2027年8月に所得区分の細分化が予定されているため、申請時点の額は窓口で確認を)。

70歳未満・年収約370〜770万円85,800円+(医療費−286,000円)×1%
70歳未満・年収約370万円以下61,500円
70歳未満・住民税非課税36,900円
70歳以上・一般(年収156〜約370万円)61,500円(外来だけなら22,000円)
70歳以上・住民税非課税25,700円(所得が一定以下なら15,700円)
計算例 亡くなる前の月に入院し、医療費の総額(10割)が100万円、3割負担で30万円を病院に払った。2026年8月以降の診療月で、70歳未満・年収500万円の区分なら、上限額は85,800円+(1,000,000−286,000)×1%=92,940円。戻る額は300,000−92,940=207,060円です。
同じ人が70歳以上・一般区分なら上限は61,500円で、2割負担の20万円を払っていれば138,500円が戻ります。上限額は「1か月あたり」なので、入院が2か月にまたがると月ごとに別計算になり、戻る額は減ります。

対象になるのは保険が効く医療費だけです。入院中の食事代(2026年6月から1食550円の標準負担額)、差額ベッド代、先進医療の技術料、おむつ代は高額療養費の計算に入りません。領収書の合計が30万円でも、そのうち食事代と差額ベッド代が8万円なら、上限額と比べるのは残りの22万円です。「思ったより戻らない」の原因はたいていここにあります。複数の医療機関にかかった月は、70歳未満の場合、医療機関ごと・入院と外来ごとに21,000円以上の自己負担だけを足し合わせて上限額と比べます。小さな通院費は合算に入りません(70歳以上は金額を問わず全部合算できます)。

入院中に亡くなった場合、最後の月は日数が短くても上限額は月単位のままです。月初に亡くなれば自己負担が上限に届かず、戻るものがないこともあります。逆に月末近くまで入院していれば、ほぼ確実に戻ります。医療費のお知らせや病院の領収書で月ごとの自己負担額を確認し、上限額と比べましょう。

未請求分の見つけ方

窓口と必要書類

国民健康保険・後期高齢者医療市区町村役場の保険年金担当課。資格喪失届や葬祭費の申請と同じ窓口で、同じ日に済ませられる
協会けんぽ・健保組合保険者へ郵送。相続人が請求する場合は様式が通常と異なることがある(「相続人代表者」欄や戸籍の添付)
必要書類(一般例)高額療養費支給申請書、該当月の医療機関の領収書(写しで可とする保険者が多い)、亡くなった方と請求者の関係がわかる戸籍、請求者の本人確認書類・振込先口座。相続人が複数なら代表者の届出や同意書を求める保険者もある
時効診療を受けた月の翌月1日から2年。2年以内なら、さかのぼって複数月分をまとめて請求できる

金額に効く3つの仕組み

世帯合算

同じ保険に加入する同一世帯の自己負担は合算できます(70歳未満は1人1医療機関あたり21,000円以上の分が対象)。亡くなった方と配偶者が同じ月にそれぞれ通院・入院していれば、合算して上限を超えた分が戻ります。請求は世帯主(国保)または被保険者が行い、亡くなった方の分は、相続人が請求する扱いです。

多数回該当

過去12か月に3回以上上限に達していると、4回目からは上限額が下がります。長期入院の末に亡くなった場合、最後の数か月は「4回目以降」に当たっている可能性が高い。その分、戻る額も大きくなるのが通例です。

限度額適用認定証・マイナ保険証

入院前に限度額適用認定証を取っていた、またはマイナ保険証で限度額情報の提供に同意していた場合、窓口での支払いが最初から上限額までになっています。この場合、高額療養費として戻る分はありません。ただし複数の医療機関にかかっていた月や、月の途中で認定証を取った場合は、合算で戻る分が出ることがあります。

補足
高額療養費は「請求が遅れても2年は待ってくれる」制度です。だから急ぐ必要はないのですが、忘れるのがいちばんの損失です。役所で葬祭費を申請する日に、「高額療養費の未請求分はありますか」と窓口で一言聞く。これだけで、通知が届く前の最後の月の分まで、その場で照会してもらえることが多いです。

請求の流れ|国保・後期高齢者医療の場合

1. 照会役所の保険年金担当課で「亡くなった〇〇の高額療養費で未請求の月はあるか」を照会。保険証(資格確認書)の番号か氏名・生年月日で調べてもらえる
2. 申請書の記入相続人が請求者として記入。「相続人代表者」として戸籍(関係がわかるもの)を添付。世帯主が請求者になる自治体もある
3. 領収書の添付該当月の領収書の写し。紛失していれば医療機関に再発行(有料の場合あり)か、役所側でレセプト情報から確認できることもある
4. 振込申請から1〜3か月後に指定口座へ。自治体により差がある

健康保険(協会けんぽ・健保組合)の場合は、申請書を保険者から取り寄せて郵送します。協会けんぽは、相続人が請求するときに戸籍や請求者と被保険者の関係がわかる書類の添付を求めます。健保組合には申請不要で自動的に給付される組合もあるため、まず総務に確認するのが早道です。

相続との関係

相続財産か亡くなった方本人の権利(還付請求権)なので相続財産。相続人全員のもので、相続税の計算にも含める(少額なら実務上影響は小さい)
相続放棄との関係相続財産なので、相続放棄をした人は請求できない。放棄を検討中の人が受け取ると「処分」とみなされるおそれがあるため、受け取らない
死亡後に支払った医療費亡くなった後に相続人が病院に支払った最後の月の分も、上限超えなら相続人が高額療養費を請求できる。その支払い自体は相続税の債務控除の対象
準確定申告との関係準確定申告の医療費控除は、支払った医療費から高額療養費で戻った分を差し引いて計算する。戻る見込み額が確定していなくても見積もりで差し引く

高額療養費と一緒に確認したい「戻るお金」

誤解されやすいこと

「亡くなった人の医療費の還付は、もう請求できない」|できる

請求権は相続人に引き継がれます。時効の2年以内であれば、亡くなる前の複数月分をまとめて請求できます。通知が届いていなくても、保険者に照会すれば該当月を教えてもらえます。

「限度額適用認定証を使っていたから、戻るものは何もない」|合算で戻ることがある

認定証は1つの医療機関の窓口払いを上限で止める仕組みです。同じ月に別の病院・薬局にかかっていたり、家族の医療費と合算できたりする場合は、合算後に上限を超えた分が戻ります。

チェックリスト

よくある質問

亡くなった人の高額療養費は誰が請求できますか
相続人です。本人の還付請求権が相続人に引き継がれます。相続財産にあたるため、相続放棄をした人は請求できません。
請求の期限はいつまでですか
診療を受けた月の翌月1日から2年です。2年以内なら、複数月分をさかのぼってまとめて請求できます。
どこに請求しますか
亡くなった方が加入していた保険者です。国民健康保険・後期高齢者医療なら市区町村役場、会社の健康保険なら協会けんぽまたは健康保険組合です。
限度額適用認定証を使っていました。請求するものはありますか
1つの医療機関では窓口払いが上限で止まっているため、通常は戻る分がありません。ただし同じ月に別の医療機関や薬局の支払いがある場合、または同一世帯の家族の医療費と合算できる場合は、合算後に上限を超えた分が戻ることがあります。
戻った高額療養費に税金はかかりますか
高額療養費そのものは非課税です。ただし相続財産として相続税の計算に含めます。また準確定申告の医療費控除では、支払った医療費から戻った額を差し引いて計算します。

あわせて確認
役所での手続きは役所で行う手続き一覧にまとめています。医療費の領収書は準確定申告でも使うので、支払日で仕分けて保管を。期限つき手続きの全体像は期限順ガイドへ。

出典

この記事の制度の説明は、次の法令・公的資料にもとづいています(2026年10月確認)。個別のご判断は、司法書士・税理士などの専門家や各窓口にご確認ください。

※上限額の区分・金額は制度改正で変わります。本ページは仕組みの一般的な説明です。具体的な金額は加入していた保険者の最新の案内でご確認ください。