「そろそろ将来のことを考えないと…」「親の介護が必要になったらどうしよう…」
そんな風に考え始める60代の方も多いのではないでしょうか。高齢者向けの施設には様々な種類があり、それぞれに特徴があります。今回は、その中でもよく混同されやすい「養護老人ホーム」と「特別養護老人ホーム(特養)」の違いについて、詳しく解説していきます。
この記事を読めば、
- 養護老人ホームと特養の基本的な違い
- それぞれの施設の入居条件、費用、サービス内容
- どちらの施設が自分や家族に合っているか
といった疑問が解決できるはずです。ぜひ最後まで読んで、施設選びの参考にしてください。
1. 養護老人ホームと特養、最大の違いは「入居の目的」
まず、養護老人ホームと特養の最大の違いは、入居の目的です。
- 養護老人ホーム: 経済的な理由や、環境上の理由で、自宅での生活が困難な高齢者を**「養護」**することを目的とした施設です。
- 特別養護老人ホーム(特養): 常時介護を必要とする高齢者が、**「介護」**を受けることを目的とした施設です。
この違いを理解することが、施設選びの第一歩となります。
2. 入居条件の違いを詳しく見てみよう
入居の目的が異なるため、入居条件にも違いがあります。
2.1 養護老人ホームの入居条件
養護老人ホームの入居条件は、主に以下の2つです。
- 65歳以上であること
- 経済的な理由、または環境上の理由により、自宅での生活が困難であること
- 経済的な理由:
- 生活保護を受給している
- 低所得で、家族からの援助が受けられない
- 住居がない、または住居があっても老朽化が著しい
- 環境上の理由:
- 家族との関係が悪く、虐待を受けている
- 近隣との関係が悪く、孤立している
- 災害により住居を失った
これらの条件に加えて、原則として自立して生活できることが求められます。つまり、介護度が低い方や、介護の必要がない方が対象となります。
2.2 特養の入居条件
特養の入居条件は、主に以下の2つです。
- 原則として65歳以上であること(特定疾病により介護が必要な場合は40歳以上)
- 要介護3以上の認定を受けていること
特養は、常時介護が必要な高齢者を対象としているため、要介護度が重視されます。要介護3以上とは、食事、排泄、入浴などの日常生活のほぼ全てにおいて介助が必要な状態を指します。
ただし、要介護1、2の方でも、特例として入居が認められる場合があります。
- 認知症の症状が著しく、日常生活に支障がある
- 知的障害や精神障害があり、日常生活に支障がある
- 家族や地域からの支援が受けられず、孤立している
3. 費用はどれくらい違う?
気になる費用についても比較してみましょう。
3.1 養護老人ホームの費用
養護老人ホームの費用は、入居者の収入に応じて決まります。所得が低いほど負担額は少なくなり、生活保護を受給している場合は無料になることもあります。
費用の内訳は、主に以下の通りです。
- 居住費: 部屋代、光熱水費など
- 食費: 1日3食分の食費
- 管理費: 施設の維持管理費、事務費など
- その他: 日用品費、医療費、介護保険サービスの自己負担分など
月額の費用は、数万円から10数万円程度が一般的です。
3.2 特養の費用
特養の費用は、介護保険が適用されるため、自己負担額は1割~3割となります(所得に応じて変動)。
費用の内訳は、主に以下の通りです。
- 介護サービス費: 介護保険の自己負担分
- 居住費: 部屋代(個室、多床室などによって異なる)
- 食費: 1日3食分の食費
- その他: 日用品費、医療費、おむつ代など
月額の費用は、10万円~20万円程度が一般的ですが、部屋の種類や介護度によって異なります。また、所得に応じて負担限度額が設定されており、それを超える費用は負担する必要がありません。
4. サービス内容の違いは?
提供されるサービス内容にも違いがあります。
4.1 養護老人ホームのサービス内容
養護老人ホームでは、日常生活の支援が中心となります。
- 食事の提供
- 掃除、洗濯などの生活支援
- 健康相談、健康管理
- レクリエーション活動
- 相談援助
介護が必要になった場合は、訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービスを利用することができます。
4.2 特養のサービス内容
特養では、24時間体制の介護サービスが提供されます。
- 食事、排泄、入浴などの介助
- 機能訓練(リハビリテーション)
- 健康管理、医療ケア(看護師が常駐)
- レクリエーション活動
- 看取りケア
5. どちらの施設が自分に合っている?
ここまで、養護老人ホームと特養の違いについて詳しく見てきました。では、どちらの施設が自分や家族に合っているのでしょうか?
- 養護老人ホームが向いている方:
- 経済的な理由や環境上の理由で、自宅での生活が困難な方
- 介護度が低い方、または介護の必要がない方
- 自立した生活を送りたい方
- 特養が向いている方:
- 要介護3以上で、常時介護が必要な方
- 24時間体制の介護サービスを受けたい方
- 医療ケアが必要な方
どちらの施設を選ぶべきか迷った場合は、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談してみましょう。専門の相談員が、状況に合わせてアドバイスをしてくれます。
まとめ:60代からの施設選びは早めの準備が大切
今回は、養護老人ホームと特養の違いについて解説しました。どちらの施設も、高齢者が安心して暮らせるように様々なサービスを提供しています。しかし、入居条件や費用、サービス内容には違いがあるため、自分や家族の状況に合わせて適切な施設を選ぶことが大切です。
60代からの施設選びは、早めに始めることが重要です。情報を集め、相談し、見学に行くなど、時間をかけて検討しましょう。この記事が、あなたの施設選びの一助となれば幸いです。