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【木漆の匠】松崎修氏が織りなす、温もりと革新の器

古来より、日本の食卓を彩り、生活に寄り添ってきた漆器。その独特の光沢と耐久性 は、人々を魅了してやみません。

中でも、木地師の技術と漆塗師の技が融合した木漆器は、木の温もりと漆の艶やかさが美しく調和し、他の素材にはない独特の存在感を放ちます。  

本記事では、栃木県茂木町で活躍する木漆器作家、松崎修氏に焦点を当て、その魅力を紐解いていきます。伝統的な技法を継承しながらも、現代の暮らしに馴染む革新的な作品を生み出す松崎氏の、制作 philosophy や作品の特徴、工房の様子、そして入手方法までご紹介します。

松崎修氏の作品:伝統と革新の融合

松崎修氏の作品は、木地師と漆塗師、両方の技術を駆使して作られる木漆器です。

多くの木漆器が分業制をとる中で、松崎氏は、木取りから漆塗りまでのほぼ全ての工程を自身で手がけるという、こだわりの姿勢を持っています。 松崎氏は2010年に第84回国展に入選、2012年には第86回国展にて奨励賞を受賞、さらに2014年の第88回国展では新人賞を受賞するなど、その実力は高く評価されています。 そして2019年には、国画会準会員に推挙されました。  

松崎氏の漆器:その背景と特徴

松崎氏の父である松崎融氏もまた、木漆工芸家として活躍されています。 融氏は、益子の陶芸家であり人間国宝である島岡達三氏より指導を受け、工芸の道に入られました。 父の背中を見て育った松崎氏は、自然と木漆の世界に惹かれていったのかもしれません。  

松崎氏の作品は、木の特徴を活かしながらも、陶器のような力強さと存在感があると感じられます。 これは、益子という陶芸の盛んな土地で育ち、父である融氏の影響を受けたことによるものと言えるでしょう。 周囲に溢れる益子焼から、無意識のうちに影響を受けているのかもしれません。  

作品の特徴

松崎氏の作品の特徴は、以下の3つに集約されます。

  1. 洗練されたフォルム: 無駄を削ぎ落としたシンプルなフォルムは、和洋問わず、どんな食卓にも自然と溶け込みます。 現代のライフスタイルにもマッチする、洗練されたデザインが魅力です。  
  2. 表情豊かな漆: 漆の塗り方や研ぎ出し方によって、光沢のあるものからマットなものまで、様々な表情を生み出しています。 奥深い漆の世界を感じさせる、多彩な表現力も特徴です。  
  3. 木地の温もり: 木地師としての確かな技術を持つ松崎氏は、木地の選定にもこだわり、木の素材感を最大限に活かした作品作りをしています。 木材は、栗の木や栃の木など、作品に合わせて厳選されています。  

代表的な作品

松崎氏の作品は、日々の暮らしを豊かにする、様々なアイテムが揃っています。

  • : 毎日の食事に欠かせない椀。木地の美しさを活かしたシンプルなものから、漆の装飾が施された華やかなものまで、幅広いバリエーションがあります。  
  • : 料理を引き立てる、美しい皿。大きさや形も様々で、用途に合わせて選ぶことができます。 角皿、花形皿、長皿など、様々な形状のものが制作されています。  
  • : サラダや煮物など、様々な料理に使える鉢。深さや大きさも様々で、食卓に彩りを添えます。 楕円鉢や塗分すみ入盛器など、個性的な作品も魅力です。
  • : 尺盆や隅丸盆など、様々な形の盆も制作されています。 朱漆や塗分など、漆の表現も多彩です。  
  • 酒器: お酒を楽しむための酒器。徳利や盃など、こだわりの詰まった作品が揃っています。 しのぎ酒器や変形酒器など、ユニークなデザインも目を引きます。
  • 重箱: おせち料理やお祝い事など、特別な日に使いたい重箱。 伝統的な形を踏襲しながらも、現代的な要素を取り入れたデザインが特徴です。  
  • カトラリー: スプーンなどのカトラリーも制作。 口に触れる機会の多いアイテムだからこそ、漆の滑らかさと木の温もりを感じることができます。  

松崎修氏の制作 philosophy:使う人の心を想う

松崎氏の制作 philosophy は、「使う人のことを考えながら、心を込めて制作すること」です。

日々の暮らしの中で使われることを想定し、実用性を兼ね備えた作品作りを心がけています。 「気軽に使ってもらえたらと思います。手で取る時は片手ではなく両手で取るくらいの感じでしょうか」と松崎氏。

作品を慈しみ、大切に扱うことで、愛着もひとしおとなるでしょう。また、伝統的な技法を大切にしながらも、常に新しい表現に挑戦することで、木漆器の可能性を広げています。  

松崎氏の工房:自然に囲まれた創作の場

松崎氏の工房は、栃木県茂木町の自然豊かな場所に位置しています。 もともと農家だったという築100年以上の母屋と、木地を削る工房、漆を塗る蔵などが点在する、歴史を感じさせる佇まいです。  

1998年、それまで益子町で制作活動を行っていた松崎融・修親子は、工房が手狭になったことと、師である島岡達三氏の勧めもあり、茂木町へと移転しました。 古い納屋と馬小屋を改築した工房では、木取りの作業が行われています。  

工房では、松崎氏が一つ一つの作品に心を込めて向き合い、丁寧に制作を行っています。

木材の乾燥から漆塗りまで、全ての工程を自身で管理することで、高品質な作品を生み出しています。木を刳り抜く作業は重労働で、松崎氏は3年間で体格が変わってしまったそうです。  

木漆器の魅力:時を超えて愛される理由

木漆器は、古くから日本で愛されてきた工芸品です。その魅力は、以下の3点に集約されます。

  1. 耐久性: 漆は非常に耐久性に優れた素材です。丁寧に扱えば、長年使い続けることができます。  
  2. 抗菌性: 漆には抗菌性があると言われています。 食品を盛り付ける器として、安心して使うことができます。  
  3. 美しさ: 漆独特の光沢は、他の素材にはない美しさがあります。 使い込むほどに深みが増し、味わいが変化していくのも魅力です。  

松崎修氏と木漆器の出会い:大学生の頃に訪れた展覧会がきっかけ

木漆器が持つ、時を超えて愛される魅力は、世代を超えて人々の心を掴みます。松崎氏が木漆器と出会ったのは、大学生の頃でした。 たまたま訪れた展覧会で、木漆器の美しさに心を奪われたことがきっかけで、この道に進むことを決意しました。その後、木地師に師事し、漆塗りの技術も習得。 伝統を踏まえながらも、独自のスタイルを確立し、現在に至ります。  

松崎修氏の作品を手に入れるには

松崎氏の作品は、個展や百貨店での販売会などで購入することができます。 BEAMS のオンラインショップでも取り扱いがあります。 また、松崎氏の工房に直接問い合わせることも可能です。  

おわりに

松崎修氏の木漆器は、伝統と革新が融合した、まさに芸術作品と言えるでしょう。日々の暮らしの中で、木漆器の美しさと温もりを感じてみてはいかがでしょうか。松崎氏の作品は、私たちに、日本の伝統工芸の素晴らしさと、それを未来へ繋ぐ職人たちの情熱を伝えてくれます。

松崎修氏の作品一覧(価格は参考)

作品名説明価格(税込)販売場所
蓋物 二段¥33,000BEAMS
長方形皿¥22,000BEAMS
四角形皿¥11,000BEAMS
隅丸盆¥24,200BEAMS
朱漆 隅丸盆¥22,000BEAMS
朱漆 花形皿 小¥4,950BEAMS
スプーン 短¥3,850BEAMS
スプーン¥4,950BEAMS
しのぎ酒器¥9,900BEAMS
塗分すみ丸皿寸法(目安):18㎝×12㎝×高さ2~2.3㎝ 素材:天然木、漆¥11,000くらしのギャラリー杜の街グレース店
朱漆花形盆六弁の花びらを模ったフォルム¥44,000コハルアン
錫朱丸盆¥25,300コハルアン
塗分すみ入盛器¥44,000コハルアン
黒漆楕円鉢¥11,000コハルアン
しのぎ酒器¥9,900コハルアン
変形酒器¥9,900コハルアン
朱漆花形盆¥27,500fennica
朱漆楕円箱¥27,500fennica
朱漆すみ丸盆¥22,000fennica
塗分すみ丸盆¥24,200fennica
朱漆三角皿¥11,000fennica

※ 注意

  • 価格や販売場所は変更になる可能性があります。最新の情報は、各販売店にご確認ください。

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