マーケティングとセールス

コモディティ化の対策は「バイヤーエクスペリエンス」である。

コモディティ化した商品をどうやって売るのか。

現代はコモディティ化が進展している。

コモディティ化とは、価格以外に競合他社の商品・サービスと差別化できない状態のことをいい、低価格をアピールする以外に.競合他社との違いを出すことができない。

この場合、客が気付いているニーズ(顕在ニーズ)だけでは競合企業に対して優位には立てない。

競合企業も顕在ニーズに合った商品は、提供可能だからだ。

氷山をイメージすると分かりやすい。氷山では見えている部分は実は全体の塊のごく一部にすぎない。これを顕在ニーズとした場合、 ここに着目してマーケティング活動を行っても競合優位に立つことはできないのだ。

氷山の海中にある部分に着目することではじめて競合他社の商品と差別化ができる。

ネスレの「ネスプレッソ」の例

例えば滝れたてのレギュラーコーヒーを飲みたいと考える人の顕在ニーズは「コーヒーの香りを楽しみたい」や「リフレッシュしたい」などになる。

こうした顕在ニーズにはすでに競合企業も取り組んでおり、 ここでの差別化は困難になる。

そこで客の潜在ニーズを抽出したところ「フィルターの片づけが面倒」「1杯だと上手くコーヒーを滝れられない」「ドリップが面倒」といったものが挙がってきたとする。

これらのニーズは客が気付いていなかったり(ぼんやりと不満に思っている)、滝れたてのコーヒーを飲むのだから仕方がないとあきらめていたりする。

ネスレ日本の展開するカブセル式一杯抽出型コーヒマシン(ネスプレッソ)は、 こうした潜在ニーズに対応したサービスだ。

客はコーヒーを飲みたい時にいつでも簡単に滝れたてのコーヒーを1杯だけ楽しむことができる。コーヒーを滝れるためにわざわざお湯を沸かし、 レギュラーコーヒーを用意して、 フィルターとドリッパーをセットしなくてもよく、水を入れて専用のカプセルをセットしたらら数秒待つだけだ。

そして面倒な後片付けもない。

これは「コーヒーを飲む」に関して潜在ニーズを従来の常識を覆す画期的な商品開発へと結びつけた好例といえる。

潜在ニーズを探し出す

通常潜在ニーズは意識下に隠れていて表面化していない。

客が気付いていないこともあるし、あきらめてしまっていることもある。

そのため潜在ニーズを探索するには客に直接聞くことによって探し出すことは困難だ。そもそも客が見過ごしてしまって~いることが多いのである。

人の行動は99%が潜在意識に支配されている。

例えば、毎朝歯磨きをしようと意識している人はほとんどいないかもしれない。習慣化しているので意識的に脳を動かさなくても行動することができるのだ。

逆にいえば先のコーヒーのように習慣化している商品こそ、潜在ニーズを抽出できる可能性が高いといえる。

客の立場になって考えることが必要なのであり客自身にもわからないことを探し出すのだ。

※顕在ニーズと潜在ニーズ

①顕在ニーズ

欲求や必要性が明確な形などで表面化しており、自分で認識できているニーズ。

②潜在ニーズ

問題や課題が認識できておらず、他社はもちろん客も認識できていないニーズ。

潜在ニーズを探し出すコツ。「バイヤーエクスペリエンス」

潜在ニーズを探索するには客の立場で考えることがポイントである。

そうはいっても客になりきることはかなり難しい。

そこで、 客の行動プロセスを時系列で整理するバイヤーエクスペリエンス(購買者の体験。行動プロセス)サイクルを使うことで、潜在ニーズを抽出しやすくすることができる。

【バイヤーエクスペリエンス】

購入→デリバリー→使用→メンテナンス→廃棄

まず「購入」段階だ

客が商品を購入する段階で不具合や不満に感じていることはないか、という点に着目する。例えばスーパーマーケットで見つけにくい、 自分にぴったり合った商品を探しにくい、 といった点だ。

「デリバリー」は商品購入後、 自宅までの配送や使用する直前の段階での不具合を探索する。

例えば配送時間が長かったり、過剰包装なども該当する。

「使用」は商品を使いこなすための時間や手間、保管時の状態などを確認していく。

また使用時に商品・サービスと「併用」して使用するものはあるか、その使い勝手がどうかなどに着目する。

「メンテナンス」は商品を長期間使用するための保守等の段階、「廃棄」は使用し終えた商品を廃棄する際の状況について把握していく。

「バイヤーエクスペリエンス」を使って潜在ニーズを抽出した例

潜在ニーズをバイヤーエクスペリエンスサイクルで抽出した例を具体的に見てみよう。

通常、味噌汁を作るには、半固形の味噌をおたまなどの中で出汁湯と溶かす作業が必要になる。

たいした手間ではないが料理に時間を割けない仕事を持つ主婦にとっては面倒な作業になる。

その点液状の味噌ならばすぐに味噌汁を作ることができる。これが「使用」時の潜在ニーズといえ、この潜在ニーズを捉えて商品化したものが、マルコメの「液みそ」だ。

バイヤーエクスペリエンスの要素

【購入】

・商品を探すのに費やす時間
・購入場所は行きやすいか?

【デリバリー】

・配達されるまでの時間
・簡単に梱包を解いて設置できるか?
・配送手配やコスト負担は買い手か?

【使用」

・使用するのに専門家の助けはいるか?
・使わない時間の保管は容易か?
・機能や特徴はどの程度優れているか?
・機能や付属品は適切か?

【併用】

・他の商品やサービスがなくても使えるか?
・他の商品やサービスが必要な場合のコスト

【メンテナンス】

・メンテナンスの外部委託は必要か?
・保守やアップグレードは簡単か?
・メンテナンスのコストは?

【廃棄】

・商品の利用に伴い、廃材が出るか?
・楽に廃棄できる商品か?
・廃棄のコストは?

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