売れているもの研究

1位は意外?焼肉のタレ人気ランキング(2019)

今回の「売れているもの研究」は、今や国内で400種類も販売されているという焼肉のタレ。

何十年も前からある商品ジャンルで、どのメーカーのどの商品が生き残り、人に支持されているのか?

「エバラ焼肉のタレ」が1位ならこの記事を書くのは止めようと思ったが、マニアックな商品が1位になっていたので「売れているもの研究」の題材にはもってこいだった。

では、10位から7位まで。

(ランキングは、LOHACOの焼肉のタレ販売数ランキング(2019年6月)より)

焼肉のタレ ランキング 10位から7位

  • 10位:エバラ食品 焼肉のタレ 甘口(281円)
  • 9位:キッコーマン 我が家は焼肉屋さん 中辛(324円)
  • 8位:キッコーマン 我が家は焼肉屋さん 甘口(324円)
  • 7位:エバラ食品 おろしのタレ(314円)

であった。

ここでの注目はキッコーマン。

キッコーマンは言わずと知れた醤油メーカー(国内シェア1位)だが、近年は、タレやツユに力を入れているという。

キッコーマンの「つゆ・肉用調味料グループ」の窪田氏によると、主婦や女性の社会進出の増加で1世帯あたりの支出額が、醤油よりタレ・ツユのほうが上回る時代になった」とのこと。

確かに醤油はメイン調味料だが、実際の調理の際には砂糖や胡椒など他の調味料を足して味を調える、などの一手間が必要になる。

いまどき、めんつゆを醤油から独自ブレンドする人は少数だろう。

時間のない忙しい主婦や一人暮らしの世帯では「もっと簡単に済ませたい」というニーズがあるのだ。

キッコーマンは、醤油メーカーとして「コク・うまみが強い特選の醤油」をブレンドして「我が家は焼肉屋さん」を開発。

後味まで醤油の味が残ることや、ごま油を加えることで焼き肉専門店のような風味を目指した。コストに対して美味しいと支持を集めているらしい。

焼肉のタレ ランキング 6位から3位

  • 6位:ダイショー 糖質オフ「焼肉のたれ」中辛(355円)
  • 5位:エバラ食品 黄金の味 甘口(465円)
  • 4位:ダイショー 焼肉通り にんにくしょうゆ味(410円)
  • 3位:叙々苑 特製焼肉のたれ(648円)

やはりエバラの焼肉のタレ、は日本人の頭に刷り込まれているので、安定してランキングに入ってくる。「これを買っておけば間違いはない」という信頼感は老舗ブランドならではだ。

エバラの焼肉のタレは全商品あわせると年間で4000万本も売れるらしい。ナンバーワンという安心感は他を圧倒する力がある。

しかしここでの注目は、ダイショーの糖質オフのタレ。

商品にはデカデカと「糖質25%オフ」の文字が躍る。

糖質オフの波は焼肉のタレにも来ている・・・なんて考えるのはナンセンスで、「糖質オフにこだわる人は、すべてのものに糖質オフを求める」のだ。

糖質オフの市場が拡大しているということは、全ての商品にそれは波及する。

糖質が気になる人は、「焼肉のタレには砂糖などの糖分が多い」ことは百も承知であり、商品の棚に「25%オフ」の文字を見つければ、それを買う。

裏の心理としては「焼肉のタレに、そんなハズレはない」という市場全体への信頼感もあるだろう。

このあたりは飽和商品の特徴であり、「基本的にマズいもの、粗悪なものはない」という全体的な信頼感がある。

そんななかで支持を得るには、「差別化」「明確な特徴」が必要だ、という好例である。
3位の叙々苑のタレは、食品メーカーが作っているのではなく叙々苑の運営会社が自社工場で作っている「ホンモノ」だ。

価格は他のタレよりも倍くらいするが、「良い肉を食べるなら、タレもいいものにしよう。少しくらい奮発しよう」という人間の心理がよく分かっている値段である。

もちろん、叙々苑という名前を多くの人が認知してはじめて繰り出せる価格設定だ。

高級ブランドは、なんでも高級路線で攻めることができる。「高くてもよいもの」は必ず一定のニーズがあるのだ。

これはポジショニング戦略の1つといえる。

焼肉のタレ ランキング 2位

  • 2位:エバラ食品 黄金の味 中辛(465円)

エバラの焼肉のタレのエースといえば、黄金の味、中辛だ。誰もが一度は食べたことがある・・・かもしれないメジャー商品だが、これが1位ではなく2位というのが面白い。

ネット通販だけでなく、スーパーでの販売数をみれば間違いなく1位だろうが、LOHACO調べでは1位ではなかったのだ。

焼肉のタレ ランキング 1位

  • 1位:上北農産加工 スタミナ源たれ(486円)

なんだこれ・・・知らんし・・・

と思う人も多いかもしれない。私も食べたことがないが、2017年の「全日本タレ総選挙」でも優勝するなど、タレ業界では知る人ぞしる人気のタレだ。

焼肉専用、というより、肉、魚、野菜料理、なんにでもある万能ダレ、という位置づけだ。

上北農産加工は青森の会社で、青森県産の大豆、小麦粉を使用した醤油をベースに青森県産のりんごやニンニクを使用した「青森県民のソウルダレ」である。

昭和40年から発売されている超ロングセラーで、ネットが普及するにつれて全国的な人気を博す商品になった。

東京のスーパーではまだあまり見ないが、青森県のスーパーでは「スタミナ源たれ」が大量に並んでいる。

青森では「なんでも使う。何に対してでも基本的に使う」という人も多いらしい。

なぜ、そんなに人気があるのか?

それは丁寧な仕事に裏付けされた「味」に尽きる。

例えばニンニクの皮や芽を取るのも手作業。こうすることで嫌な味に繋がるエグみなどが排除される。

醤油や野菜を合わせ、3か月以上も熟成させており、何よりも砂糖や油を添加していないナチュラルな製法と美味しさがあるという。

全国ブランド(エバラ)の人気商品を、小さな会社の丁寧な商品が上回るというのは凄いことだ。

人が焼肉のタレに求めているのは、深い所では様々な要素がある。

美味しいというのはもちろん、健康によいか。どんな製法か。信頼できる材料を使っているか。「いわゆる化学的な味」がしないか。後味がモタれないか。

など、「頭の中で、明確にはなっていないが、なんとなく思っているボヤーっとしたニーズ」がある。

それらを汲み取って戦略を立てるもよし。

逆に戦略など考えず「とにかく自分が美味しいと思うものを」試行錯誤して作るのもよし。

飽和商品であっても、ライバルのナンバーワンが巨大でも「諦めずに信じたことをやる」ことで勝てる道筋は生まれるのだ。

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