顧客へ(見込み客へ)どのようなサービスを提供するのか?
また、今やっているサービスをどう向上させるのか?
サービス設計では、まずは過程の全体について、顧客との接点をおさえたうえで、提供する内容を具体的にデザインしていくことが重要だ。
サービスの利用(購入)の前後を通じた体験をつぶさにとらえ、地図のかたちで見えるようにすることを「カスタマー・ジャーニー(顧客の旅)」とも呼ぶ。
これは最近特に重視される傾向があり、なぜかといえば、商品・サービスをたんに提供するだけで、その他は場当たり的に対応していたのではなかなか売れなくなったからだ。
顧客との接点での商品サービスの提供の仕方について首尾一貫したかたちで細部までつくり込み、品質を維持向上させなくてはならない時代になっている。
また、”顧客の旅”はかつてはおおむね順番どおりに進んでいたがインターネットやスマートフォンが普及し、SNSが浸透することで、勝手気ままにネット、リアルを問わず行き来して巡るようになってきた。
そのため、どこから来られても対応できるように、過程の全体を通して顧客との接点をつくり込んで準備しておく必要があるのだ。
サービスのデザイン・向上は、こうした過程全体の設計だけで終わるものではない。
現場での実践を通じて、顧客の反応を見ながら改善を重ねてつくりあげていくことも不可欠だといえる。
サービスの過程は大きく3つに分類される
サービスの過程は、大きく「1.サービス利用(購入)前」「2.サービス利用(購入)時」「3.サービス利用(購入後)後」の3つの期間に分けることができる。
1.サービス利用(購入)前
実際にそのサービスを使ったことがない。商品を購入したことがない、という場合、当然のように不安や懸念(リスク)を感じることが多い。
なのでサービス内容をわかりやすく説明し、FAQ(よくある質問)で疑問点を解消したり、実際の事例や利用者の声を公開して、サービス利用後のイメージができるようにすることが重要なポイントだ。
この「利用(購入)前」のサービス提供で重要なのは、顧客が抱くであろう不安やリスクに先回りし、丁寧にネガティブな要素を取り除くことだ。
そうすることで、期待は上がり、不安は軽減され、購入に繋がる可能性が高くなっていく。
ここで重要なことは「知らない人が私達のことをはじめて知ったとき、どんなことに不安を感じ、どんなことが分からないのだろう」と想像力を膨らませることだ。
もちろん、モニターなど他者の力を借りてもいい。
もちろん過剰な宣伝はNGだが、あまり謙虚に構えてもよくない。顧客の期待や購入したいという欲求がじわじわ上がっていくような適切なレベルにしておくことが重要だ。
利用前の事例
宅急便大手、ヤマト運輸のサービスでは「ここから発送するときに、どこなら翌日に届いて料金がいくらか」ということが明確になっている。
今では当たり前のことだがヤマト登場以前は、荷物を持ち込まないと価格もはっきり分からず、いつ届くかも分からなかった。
ヤマトは分かりやすい料金体系と到着日を打ち出して顧客の不安を取り除いたのだ。
荷物の追跡システムを導入したのもヤマトが最初で、「どこに荷物があるか分からないことや、ちゃんと届いたか分からないのが不安」という顧客のリスクを打ち消している。
2.サービス利用(購入)時
実際に「顧客になってくれる」接点がこの部分。
ここでは標準的な過程について、関わるスタッフそれぞれが、どんな役割を担い、どのように行動をするのかをマニュアルなどで明確にしておくことが大切だ。
それはシステムにもいえ、例えば購入直後の自動返信メールにどんなことを書くのかをはっきりしておく必要がある。
内容は「購入直後に顧客はどんなことに不安を持つか」に応えるものだ。常に顧客目線に立つことはここでも最大のポイントである。
顧客の視点に立って、どこかで不満や不安を覚えないか?どんなことを伝えてあげれば安心するか?を考えて明確にする。
明確にする=明文化し、属人的にしないことで、スタッフが入れ替わっても、サービスの品質をつねに一定に維持しやすくなる。
3.サービス利用(購入後)後
顧客満足は事前の期待と比較して、実際の経験の評価が上回れば満足となり、下回れば不満となる。
満足してもらうことで再購入してもらえる顧客ロイヤルティ(忠誠心、愛着)を築き、顧客との接点情報をまとめて管理する「職客関係管理(CRM)」によって、長期的に関係を維持するようにする。
利用後の事例
サービスの履行に問題がなく、顧客が満足すればリピートが生まれる要素となる。
宅急便であれば、きちんと約束通りの時間に事故なく届く。飲食業であれば、期待どおり(期待以上)のものが提供されることで顧客は満足する。
「サービス利用(購入後)後」のポイントとしては、顧客が満足すればOKではなく、繰り返し自社を利用してもらったり、ファンになってもらったりすることを貪欲に考えることにある。
例えば、ラーメン店だと、スタンプカードを発行して5回くれば半額になる、などだ。近年はスタンプカードを顧客がたくさん持つのを嫌う傾向があるので、アプリを用意する流れになっていくだろう。
化粧品販売会社でよくあるのは、購入金額に応じたポイントプログラムだ。定期的に商品を購入することで割引率が高くなれば、リピート率も高くなる。
不満・クレームへの対応をどうするか、も重要なポイント
顧客サービス部門などでは以前からよく知られているように、満足した顧客は平均して4~5人に話すのに対して、不満だった顧客はその2倍の9~10人に話すと言われている。
今日ではその差はもっと広がっていると考えられ、悪評はSNSなどを通じて、あっという間にネズミ算式に広まることになる。
そもそも不満に思った顧客の95%以上は、企業に何ら指摘をすることなく黙って去っていく。わざわざ不満を表明してくれた顧客は、改善のための貴重なフィードバックを与えてくれた、と考えることが重要だ。
そのため、サービスを設計する段階で「クレーム」をいかに拾い、それに対してどのようなアクションを取るのか明確にしておこう。