まずは広告の費用対効果を計算すべし
打っている広告がどのくらい反応があり、どのくらいの売り上げと利益を出しているかをきちんと分析しているあなたはとても優秀だ。
感覚的には大半の中小の事業者はきちんと把握していない。
なんとなーく広告費を使い、だいたいこのくらいの売り上げかなぁ~?くらいの感じだ。
毎月の広告費と売り上げを分析し、対策をきちんと立てている人は少ない。
さて、ビジネス的な数値でいうと、広告の費用対効果はROASという指標で管理できる。
【売上÷広告費×100=ROAS(%)】となる。
10万円の売り上げのために使った広告費が2万円だとすると、ROASは500%になる。非常に優秀だ。
この指標におけるトントンのライン(10万円の売り上げに10万円の広告費を使う)は、100%だ。
つまり0~100%未満の数値になると、広告費は赤字となり、投下した広告費が回収できていない、ということになる。
(実際には100%以上でも「利益」でみると収益としては赤字のことはあるが話がややこしくなるので、ここは「売上と広告費」のみ登場させることにする)
広告費が回収できてない、と分かったら
毎月しっかりとROASを計算し、「先月は90%だ」「今月は95%だな・・・おいおい、広告費赤字やんけ!」と気づいたらどうするのか。
分析が役に立つのは事実の把握だけだ。
広告費が回収できていない、と分かった後に適切な対策が取れなければ意味がない。
とはいえ、赤字の広告費をどうやって立て直すのか?という課題はなかなか難問なのである。
- たまたまか?
- 季節のせいか?夏だからか?
- 広告のキャッチコピーが悪いのだろうか?
- 広告の媒体の配布数とか、到達率に問題あるのか?
- この商品のライフサイクルが下降気味なのか?
- 知らぬ間にライバルが登場してるのか?
などと「ありえる原因」を考えていくとキリがない。的が絞れないのである。
実際の現場で起きていることは様々なので「ここが問題なのだ!」とは一概にいえない。
だが、広告費が赤字となった場合に「考えるべき順番」というものがある。
第一に商品の競争力(魅力があるのか?)
少なくとも何か月か何年か、広告を出してきている中で徐々に効果が落ちている、という場合は、商品力自体に陰りがみえている可能性がある。
飲食店でいうと、周囲のお客さんがほぼ一巡し、食べログなどにもレビューが掲載され、ブログで色々と評価をつけられている中で「あまりウマくない」という評価が定着している場合などだ。
モノを売っている場合でも、一般に流通している商品ならAmazonや楽天ならレビューがつくし、ネットやSNSで評判がある程度広まっていく。
評価がそれなりに落ち着き、「よい評価」とはいえない場合、どんどん広告費を投入しても市場の反応は薄くなる。
どんな評価受けているのか?それが上昇気配なのか下降気配なのか?を知ることが何より重要である。
もし下降しているのなら「何か改良すべき点はないか」という視点で、まずは商品そのものが持つ力を見つめなおすことが第一だ。
第二に広告媒体の力(弱っていないか?)
新聞広告や、地域に根付いた情報冊子(首都圏では”ぱど”など)でいえば、発行部数や世帯への到達率などだ。
テレビも雑誌も新聞もラジオも広告で成り立っている。
その媒体(チャネル)自体が下向きなら、広告の効果は下がる。
ネットの広告(PPC)では、競合の出現やキーワード単価の上昇などは大きな変化要因になる。
その媒体が、自社のターゲット層とズレてきていないか?媒体そのものの影響力が低下していないか?などを分析するのはとても大切な要素になる。
どんな媒体も必ずトレンドがあるのだ。
新聞や雑誌などの紙媒体の発行部数が伸び続ける、ということはまずない。いっぽうでネットの広告は審査の基準が高くなったり、売れる市場は単価が高くなったりする。
より自社の製品に合う媒体はないのか?
地元密着の商売なら、駅の看板広告の単価の変化や、タウン誌の動向までしっかり調べて少しずつテストをしながら調整していく、という地道な努力が必要になる。
第三の広告コピーの力(魅力を訴求できているか?)
広告のクリエイティブを作っている人や、メインコピーやリードを一生懸命考えている人は「私の作る広告の出来次第で売り上げが変わる」と思っている。
それは正しいのだが、影響としては三番目だ。
どれほど優秀な広告であっても、競争力のない商品を影響力の薄い媒体でアピールしてもたいして売れないのだ。
「どんな商品でも俺が売る」みたいな考えを持ち、アレコレとキャッチコピーや商品写真を変え、気合いを入れてABテストを繰り返しても結果はあまり変わんない・・・ということはふつうに有り得るのだ。
広告費を投下する立場の人間は、その企業の中心ともいえる人間であるはずである。
であれば、広告のクリエイティブだけに目を奪われず、広い視野を持って、みずからの商品やマーケット、媒体の動向などにまで目を光らせ、総合的に「ここをイジれば、もっとも影響がある」というポイントを探すことが大切である。
そういう視点を持つことで、今まで気づかなかった訴求点を見いだし、広告のクリエイティブに反映させられる可能性もあるのだ。