マーケティングとセールス

一番になれる切り口を見つける。マーケティング・ポジショニングのコツ。

今回のテーマは「ポジショニング」。

現代のマーケティング体系の中でいうと・・・

【R→STP→MM(4P)→I→C】

上記のうち「S(セグメント)T(ターゲティング)P(ポジショニング)」の「P」の話になる。

世の中で競合が全くいない商品・サービスはまず無い。

新しく生まれたものでも、売れると必ず競合は現れる。

最初にパーソナルコンピューターを製品として世に出したのはAppleだが、その後はWindows搭載のパソコンがあらゆるメーカーで作られるようになり、一般化した。

スマホもiphoneのあと、android搭載のスマホが各メーカーから出されたように、世の中になかった先進技術でもあっという間に競合は現れる。

なので「必ず競合はいる」という前提の中で「わが社(私)の商品・サービスはどのようなポジション(位置づけ)」にあるべきか、を決めるのが「ポジショニング」である。

要は差別化なのだが、差別化にもポイントがある

差別化は、会社が常に取り組まなくてはならない重要な戦略であり、「自分を選んでもらうには他と違う特徴=差別化がなくてはならない」のは誰もが理解できるところである。

恋愛と同じで「ここが好き」「なんとなくここが気に入っている」と顧客に思ってもらえない限り、競合に先んじて選んでもらえることはないわけだ。

具体的には競合と比べて、自社の商品・サービスが「どう思われるか」「どう認識されるべきか」を考えることになる。

それにはまず競合の商品を分析したなかで「この辺が弱いんじゃないか」という部分において、自らの商品が独自で魅力的に映る位置づけ(ニーズとウォンツを充足)が望ましいといえる。

難しく考えることはない。

学校のクラスでのポジショニングとも似ている。スポーツ万能、勉学に強いライバルがいるなかで、「俺は笑いで人気をとる道を選ぶ」という話と同じだ。

重要なのは、「その切り口ではトップ、一番である」と認識されるであろうポジショニングを探すことだ。

スポーツまぁまぁ、勉強そこそこ、笑いのセンスもさほどではない、となると、そこで勝負をしかけるのではなく「動物にめちゃ優しい」とか「ゲームが超うまい」とか自分がトップになれる切り口、分野を見つけることが重要になる。

なぜなら一番(トップ。ファースト)でないと記憶に残らない

簡単にいえば「○○といえば、自分(自社)」といえるかどうかだ。

人類で最初の動力つき有人飛行をしたのは米国のライト兄弟だが、二番目に飛んだのは誰だろうか?

人類で最初の宇宙飛行士はソビエトのガガーリンであることは世界中の誰もが知っていることだが、二番目は誰だろうか?

世界で一番高い山はエベレストで二番目はK2。

日本で一番高い山は富士山で二番目は南アルプスの北岳だ。

その分野一番であることがいかに重要か、記憶に残りやすいか分かるだろう。

夏の棒状の氷菓といえばガリガリ君。あずきバーといえば井村屋。高級アイスといえばハーゲンダッツ。

これがポジショニングである。

テレビCMでもポジショニング争いはし烈で何千万円という資金が投入され、PR合戦が行われている。

バイトするならタウンワーク。バイト探しはインディード。

CMでお金をかけてユーザーの脳に刷り込みたいのはこのワードだけである。

競合他社が多いなかで、どうやってポジショニングを作っていくか

「そうはいっても、世の中に競合他社はたくさんいるのだから、ファーストになれる分野などもはや残っていないだろう」と思う人は多い。

だが、重要な点は「切り口」である。切り口を探す、あるいは「切り口そのものを作る」ということはどんな分野でも可能だ。

これまでのヒット商品も、「すでに飽和しているかに思える市場で、新しい切り口を作ってヒットに結び付けた」ことが分かる。

いくつか事例をみていこう。

汚れ落としではなく、化粧落としとしてアピールしたDove(ダヴ)

少し前の話だが、「石鹸の市場」の例。

世界有数の日用品メーカーであるユニリーバのせっけん「ダヴ」は、成分の1/4が、基礎化粧品の主成分であるステアリン酸だった。

そこで、従来の”汚れを落とすせっけん”ではなく「ダヴの1/4はクレンジンクリーム。化粧も落とせ、お肌の潤いを保ちます」と訴求したのだ。

化粧せっけんの分野を作り出すことになり、1960年代から世界一のクレンジングブランドとなり、今日まで売れ続けている。日本でもCMを見ないことはない。

アサヒの「ワンダ モーニングショット」

アサヒ飲料の「ワンダモーニングショット」は、午前中に缶コーヒーの40%以上が飲まれていることに着目し1997年に缶コーヒーで初めて時間帯という切り口で「朝専用」という分野をつくりした。

コーヒーの味はさほど変わらなかったように思うが「朝に飲むならこれがイイです」というメッセージを提供し、当時人気絶頂だったタイガーウッズを起用したCMでヒットさせた。

このヒットによりアサヒ飲料は、コカ・コーラのジョージア、サントリーのBOSSに次ぐ缶コーヒー売上第3位の地位を獲得するにまで成長した。

その地域では一番、もポジショニングになる

セブンイレブンは、コンビニエンスストアでは全国のトップシェアを誇るが、すべての地域でトップというわけではない。

そこで、ファミリーマートやローソンなどの競合他社がすでに出店している地域に、新たに進出する際には、ドミナント(高密度多店舗)出店方式を徹底している。

セブンのあるところにセブンを出す、ということも目立つようになるので、このビジネスモデルは色々と批判を集めているが、鬼のような徹底ぶりは「勝負はポジショニング」ということが分かっている所以である。

特定の地域内で、他社に比べてより多くの店舗を集中的に出店することで、商品の配送効率も高まるし、「このあたりはセブンだよね」との認識を定着させながら、出店地域を拡大していっている。

北海道は別で「セイコーマート」が1000軒を超える出店で、道内でトップを維持している。セイコーマートは、道内でドミナント出店を先に実践し、道民から「コンビニならセイコーマート」と、認識されているわけだ。

セブンは後発で資金力や店舗展開のノウハウを生かして攻勢をかけているが、一度「一番はここ」と認識されたら、ひっくり返すのはなかなか難しい。

しかし、コンビニより競争の厳しい業界は稀だ。

地域に根付いた店舗であれば、「どれなら地域ナンバーワン」を目指せるか?ナンバーワンになれる切り口はないか?を探すのが重要であり、何かは見つけられるはずである。

すでに商品サービスを購入してくれた顧客がいるのであれば、少なくともその顧客にとっては何かが「一番」だったからこそ、競合ではなく自社から購入してくれたことになる。
何が一番かわからないのであれば、実際に購入した顧客に聞いてみるのも一手。

予想もしない理由が判明して、あまり認識していなかった自社の強みに気づくこともあるのだ。

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