商品を販売している企業(特に製造業の会社)は「モノを作り、モノを売っている」という自覚があるはずだ。
しかし、実際にはどんなモノでも、目に見えない「サービス」を販売している。
「モノ」だけみていてば、有効なマーケティング戦略は生まれないのだ。
モノを売る時代から、コトを売る時代へ
ここでいう「サービス」とは、日常生活で使われることのあるような、接客態度やおもてなし(「サービスがよい」など)、値引きやおまけ(「サービスしておきます」など)のことではない。
たとえば、食品メーカーは、小売店に食品だけではなく、販売支援も売っている。
分かりやすい例えば、ヤマザキが提供している「ルヴァン」。
商品はクラッカーというモノだが、それによってどんなライフスタイルを提供できるか?について販売支援を行っている。
有名なタレントさんを起用し、ルヴァンの上に野菜やチーズなどを乗せて食べると楽しいよ、というアレだ。
単にクラッカーを工場で作って売っているだけ、ではなく、クラッカーをどう使うと楽しいか、美味しいかを伝えるサービス活動に予算も時間もかけている。
また、パソコンを売っている会社は、パソコンを売っておしまい、ではなく、様々なアプリなども開発し、パソコンをどのように活用すればいいのかという教育やコンサルティングのようなことをしている。
少し変わった視点でいうと、航空会社は、航空機の座席だけではなく、座席を予約できるWebシステムも”売っている”。
どんな産業でも、製造業であってもサービスを提供しており、サービスこそが購入されるものの中心といってもよい。
サービスは、モノとしての商品とはちがって、目には見えにくい形で、顧客のいる現場で生産と湘費が同時に起こる(サービスに顧客も参加する)ことが多く、成果の品質を標準化することが難しく、消費のために在庫できないことが多い、といった特徴がある。
簡単にいえば、モノに対するコトというふうにとらえるとわかりやすい。
すでにあらゆるメディアで「モノ」を消費する時代ではなく「コト」を消費する時代になったといわれているが、どんなビジネスでも(特に製造業であっても)「コト」をイメージして、顧客に伝えることがマーケティング戦略では重要になっている。
今後、さらに「コト」を重視する時代になる
総務省の家計調査でも、財(商品)ではないサービスの購入が家計支出の40%を超えている。
商品の機能や品質に大差がなくなり、価格競争に陥るコモディティ化(どこにでもある日用品のように一般化すること)に対抗するために、製造業(メーカー)がサービス分野へと進出する「製造業のサービス化」も進んでいる。
コピー機や印刷機、エレベーターのメーカーのように、収益の過半を保守・運用サービスからあげているような製造業も少なくなくないのだ。