位牌と仏壇|用意するもの、引き継ぐもの、手放すもの
葬儀が終わると、白木の位牌が手元に残ります。これは仮のもので、四十九日までに本位牌を用意するのが一般的です。同時に「仏壇はどうするのか」「実家の仏壇を引き取れない」という問題も出てきます。地域と宗派で作法は違いますが、費用の相場と手順の大筋は共通です。
本位牌の用意
| いつ | 葬儀後すぐに注文し、四十九日法要に間に合わせる。文字入れに2週間程度かかるため、法要の日程が決まったらすぐ動く |
|---|---|
| どこで | 仏具店、葬儀社、通販。実物を見て決めたいなら仏具店。菩提寺がある場合は寺に相談すると、宗派の作法に合ったものを教えてもらえる |
| 費用 | 2万〜5万円が中心(塗位牌・唐木位牌)。文字入れ込みの価格か確認する。モダン位牌やクリスタル製は3万〜8万円程度 |
| 書く内容 | 戒名(法名)、没年月日、俗名、享年。白木位牌の記載を写すので、注文時に白木位牌の写真を撮って持参すると間違いがない |
| 大きさ | 先祖の位牌がある場合はそれより大きくしないのが慣例。仏壇に収まるサイズを測っておく |
| 開眼供養 | 四十九日法要で、白木位牌から本位牌へ魂を移す(開眼・入魂)。お布施は法要のお布施に含めるのが一般的。白木位牌は寺に納めてお焚き上げしてもらう |
| 浄土真宗の場合 | 位牌を用いず過去帳や法名軸を使うのが本来の形(地域により位牌を使うこともある)。宗派の作法を寺に確認 |
仏壇を持つか、持たないか
近年は、住宅事情と家族構成の変化から「仏壇を持たない」選択も一般的になりました。判断の軸は「誰が日々手を合わせるか」です。
| 伝統的な仏壇 | 金仏壇・唐木仏壇。30万〜200万円以上。仏具一式(本尊・具足・おりん)で別に5万〜20万円。設置場所と、代々引き継ぐ前提があるなら |
|---|---|
| モダン仏壇(家具調) | 洋間に合うデザイン。10万〜50万円程度。リビングに置ける大きさが主流 |
| ミニ仏壇・手元供養 | 棚や机の上に置ける。3万〜10万円台。位牌と写真、小さなおりんだけという形も。集合住宅や、いずれ手放すことを考えるなら現実的 |
| 仏壇を持たない | 写真と花だけを飾る、遺骨の一部を手元供養にする。宗教的な作法を重んじる親族がいる場合は、事前に話しておくと角が立たない |
| 買う時期 | 四十九日までに、という決まりはない。急いで決めると後悔しやすい買い物なので、一周忌までに落ち着いて選ぶ家庭も多い |
実家の仏壇を引き取れないとき
親が亡くなり、実家を処分することになったが、自宅に仏壇を置く場所がない。遺品整理で最も判断に迷う品の一つです。
- 1. 小さくして引き継ぐ
大きな仏壇は処分し、位牌と本尊だけをミニ仏壇に移す。「引き継がない」ではなく「形を変える」ので、親族の理解も得やすい - 2. 親族に引き取ってもらう
実家を継ぐ人、仏壇を置ける家がある親族。運搬費は数万円 - 3. 寺に納める(お性根抜き・お焚き上げ)
菩提寺に相談し、閉眼供養をしてから引き取ってもらう。お布施1万〜5万円程度+運搬費。位牌だけを永代供養に出す方法もある - 4. 仏具店・専門業者に依頼
閉眼供養の手配から運搬・処分まで一括で。3万〜10万円程度。新しい仏壇を買う場合、古い仏壇の引き取りを無料〜割引にする店もある - 5. 自治体の粗大ごみ
閉眼供養を済ませれば、法律上は粗大ごみとして出せる(数百円〜2,000円)。抵抗がある場合は3や4を選ぶ。仏壇であることを伝えると受け付けない自治体もあるため事前確認を
いずれの場合も、先に閉眼供養(魂抜き)をするのが作法とされています。ただし浄土真宗では「魂を抜く」という考え方をせず、遷仏法要・遷座法要と呼びます。宗派によって呼び方も考え方も違うので、寺に「仏壇を手放したい」と率直に相談するのが確実です。
宗派がわからないとき
- 位牌・仏壇の中を見る
本尊の姿、掛け軸の文字で判別できることがある。仏具店に写真を見せると教えてもらえる - お墓を見る
墓石の文字(「南無阿弥陀仏」なら浄土宗・浄土真宗、「南無妙法蓮華経」なら日蓮宗など) - 菩提寺に聞く
過去に法事を頼んだ寺があれば、そこが宗派を知っている - 親族に聞く
本家や年長の親族が把握していることが多い - 戒名から推測
戒名の構成(院号・道号・戒名・位号)や特定の文字(浄土真宗は「釋」、日蓮宗は「日」など)が手がかりになる - わからないまま進める
特定の寺との付き合いがないなら、宗派を問わない形(モダン位牌、無宗教の手元供養)でも差し支えない。納骨先を決めるときに改めて考えれば足りる
日々のまつり方と、続けられる形
| 毎日 | 水・ごはん(仏飯)・花・線香・灯明。全部そろえる必要はなく、手を合わせるだけでも十分とする僧侶が多い。留守がちなら電池式の灯明やLEDろうそくも |
|---|---|
| 月命日 | 毎月の命日に花を替える程度。僧侶に月参りを依頼する地域もある(お布施5,000〜1万円程度) |
| お盆・彼岸 | 初盆(新盆)は特に手厚く行う地域が多い。白提灯(3,000〜1万円程度)、僧侶の棚経(お布施5,000〜1万円程度) |
| 年忌法要 | 一周忌・三回忌・七回忌…。近年は一周忌までは親族を招き、三回忌以降は家族のみとする簡略化が一般的(法要の段取り) |
| 続けられない場合 | 寺に永代供養を依頼すれば、以後の法要を寺が続けてくれる(10万〜50万円程度)。「自分の代で終わり」を前提に、位牌の永代供養を先に決めておく家庭も増えている |
作法を完璧にすることより、無理なく続く形にするほうが大切だ、と考える寺は少なくありません。負担に感じたら、率直に住職へ相談しましょう。
仏壇を移動する・引っ越す
実家の仏壇を自宅へ運ぶ、家の中で2階から1階へ下ろす、施設に入る親に小さな仏壇を持たせる。こうした移動の相談は多いのに、決まった作法があるのか分からず、手が止まりがちです。
| 家の中で動かす | 同じ家の中なら供養の手続きは不要とする寺院が大半です。位牌とご本尊を先に取り出して丁寧に包み、仏壇本体を動かしてから戻します。掃除の機会にもなります |
|---|---|
| 別の家へ運ぶ | 宗派や寺院によって「閉眼供養(魂抜き)をしてから運び、着いたら開眼供養」を求めるところと、「位牌とご本尊を人が持って運べば不要」とするところがあります。菩提寺に一言聞くのが確実で、お布施は1万〜3万円が目安 |
| 引っ越し業者 | 仏壇は運んでくれますが、位牌・ご本尊・遺影は業者の荷物に入れず、自分の手で運ぶのが慣例です。大型の仏壇は解体が要ることがあり、仏壇店に頼むと搬出・搬入で3万〜8万円程度 |
| 施設に持ち込む | 持ち込める大きさに制限があるため、手のひらサイズの仏壇や、位牌だけを置く「位牌立て」に切り替える人が多い。元の仏壇は実家に残すか、この機会に整理します |
先祖の位牌が増えたとき|まとめる方法
代々の位牌が仏壇に並びきらない、誰の位牌か分からないものがある。古い家の仏壇ではよくあることで、整理する方法は決まっています。
- 繰り出し位牌
箱型の位牌の中に、故人ごとの薄い板(札板)を重ねて納める形。命日の順に前へ繰り出して使います。数枚から10枚程度の札板が入り、仏壇の場所を取りません - 先祖代々の位牌に統合する
三十三回忌や五十回忌を「弔い上げ」として、個人の位牌を「○○家先祖代々之霊位」の一つにまとめる慣習があります。時期は宗派・地域で違うので菩提寺に確認を。まとめた後の古い位牌は閉眼供養してお焚き上げに出します - 過去帳に書き写す
位牌を減らす代わりに、故人の戒名・俗名・命日を過去帳に記しておけば、誰がいつ亡くなったかの記録は残ります。浄土真宗はもともと位牌でなく過去帳を使う宗派です - 読めない位牌
戒名から菩提寺の過去帳で照合できます。寺院が変わっていて分からない場合は、無理に特定せず先祖代々の位牌に含めて供養するのが一般的です
整理は「捨てる」ことではなく、供養の形を変えることです。位牌を減らすことに抵抗がある親族がいれば、弔い上げの法要を一度営んでから統合すると、納得が得られやすい。墓じまいと同じで、手続きより家族への説明に時間をかける場面です。
税金の扱い
| 相続税 | 仏壇・仏具・位牌・墓地・墓石は祭祀財産として非課税。相続財産に含めない |
|---|---|
| 注意 | 投資目的とみなされる高額な金の仏具などは、課税対象と判断されることがある |
| 生前の購入 | 仏壇や墓を生前に買っておくと、その分の現預金が減り相続税の課税対象が減る(合法的な対策として知られる)。ただし死後に購入した分は債務控除できないため、買うなら生前に |
| 葬式費用との違い | 相続税で差し引ける葬式費用に、仏壇・墓石の購入費は含まれない(通夜・告別式・火葬・納骨は対象) |
| 誰が引き継ぐか | 祭祀財産の承継者は、遺言などの指定→慣習→家庭裁判所の順で決まる。相続分とは無関係で、長男でなければならない決まりはない |
チェックリスト
- 白木位牌の記載(戒名・没年月日・俗名・享年)を写真に撮った
- 四十九日の日程を確認し、本位牌を2週間前までに注文した
- 先祖の位牌のサイズと、仏壇の内寸を測った
- 宗派を確認した(不明なら位牌・墓石・親族から)
- 仏壇を持つかどうか、置き場所と手を合わせる人を基準に決めた
- 実家の仏壇を引き取れない場合、閉眼供養と処分の方法を寺に相談した
- 費用の総額(本位牌+仏壇+仏具+お布施)を見積もった
- 祭祀財産は相続財産に含めないことを確認し、承継者を家族で話した
よくある質問
- 本位牌はいつまでに用意しますか
- 四十九日法要までに用意し、法要で白木位牌から魂を移します(開眼供養)。文字入れに2週間程度かかるため、葬儀後すぐに注文しましょう。費用は2万〜5万円が中心です。
- 仏壇は必ず必要ですか
- 必須ではありません。判断の軸は「誰が日々手を合わせるか」です。住宅事情に合わせてミニ仏壇(3万〜10万円台)にする、位牌と写真だけを飾る、という形も一般的になっています。急いで決めると後悔しやすい買い物なので、一周忌までに落ち着いて選ぶ家庭も多いです。
- 実家の仏壇を引き取れません
- 位牌と本尊だけをミニ仏壇に移す、親族に引き取ってもらう、菩提寺に納めてお焚き上げ(お布施1万〜5万円程度)、仏具店や専門業者に依頼(3万〜10万円程度)、閉眼供養後に自治体の粗大ごみ、という選択肢があります。いずれも先に閉眼供養をするのが作法とされています。
- 宗派がわかりません
- 位牌や仏壇の本尊、墓石の文字、菩提寺、親族への確認、戒名の構成が手がかりです。特定の寺との付き合いがなければ、宗派を問わない形(モダン位牌や手元供養)でも差し支えありません。
- 複数の位牌が実家にあります。まとめられますか
- 先祖の位牌が増えた場合、繰り出し位牌(回出位牌)という、札板を数枚から10枚程度まで収められる形にまとめる方法があります。三十三回忌や五十回忌を弔い上げとして、個別の位牌を「○○家先祖代々之霊位」の位牌にまとめる慣習もあり、どちらの形にするかは宗派や地域で違います。菩提寺に相談すると、宗派に合った時期と作法を教えてもらえます。
- 仏壇や位牌に相続税はかかりますか
- かかりません。仏壇・仏具・位牌・墓地・墓石は祭祀財産として非課税で、相続財産に含めません。ただし投資目的とみなされる高額な金の仏具などは課税対象と判断されることがあります。また、相続税の葬式費用として差し引けるのは通夜・告別式・火葬・納骨までで、仏壇や墓石の購入費は含まれません。
あわせて確認
四十九日法要の段取りは香典返しと法要、納骨先とお墓はお墓の選び方と墓じまい、実家の家財整理は遺品整理、費用全体は葬儀費用の相場と相続税へ。
出典
この記事の制度の説明は、次の法令・公的資料にもとづいています(2026年10月確認)。個別のご判断は、司法書士・税理士などの専門家や各窓口にご確認ください。
※作法・費用は地域と宗派で大きく異なります。本ページは一般的な説明で、細部は菩提寺にご確認ください。現時点で広告・紹介料を伴うリンクは含まれていません。