ここでいう飽和状態の商品=カレーである。
この記事のテーマは、カレーのような「昔からある商品で、すでに市場は飽和状態」のような食べ物でも、売り上げを伸ばす余地は十分にある、という話。
むしろ余地がある、というどころか差別化の要素が満載であり、思考停止せずに新しいモノを生み出そうとする熱意で大きく売り上げを伸ばしているメーカーやお店もある。
昔ながらのカレーからスパイスカレーへ
2019年の夏。「スパイスカレー」がかなり熱くなっている。
従来のカレーは「小麦粉を使い、とろみがある」いわゆるバーモントカレーのようなカレーだ。
いっぽうスパイスカレーとは「カレールーや小麦粉を使用せず、オリジナルのスパイスを調合したカレー」だ。
このスパイスカレーが今、従来のカレーよりも人気が出ている、というデータがある。
ホットペッパーグルメ「外食総研」によると、食べてみたいカレーのランキングは
【男性】
1位:昔ながらのカレー
2位:スパイスカレー
3位:あいがけカレー(1つのごはんで複数の種類のカレーを楽しむカレー)
【女性】
1位:スパイスカレー
2位:昔ながれのカレー
3位:あいがけカレー
となったらしい。
男性はいわゆる「おくふろの味」が大好きだが、女性はスパイスカレーが1位だ。複数のスパイスを使っていることで味に深みがあるのはもちろん、代謝アップ、汗がたくさんでる、小麦粉を使わないことのヘルシーさが受けているのだろう。
世の中のスパイスカレーの動向
キッチン723のスパイスカレー
千代田区神田の名店「キッチン723」では、クミン、カルダモンなど20種類のスパイスを使い、それをワインやトマトで煮て作るカレーが人気だ。ライスが「こんにゃく米」で低カロリー。ここにも工夫がある。
美味しく、女性に人気の出るカレーで客足が途絶えることがあるだろうか?
ロイヤルホストのカシミールビーフカレー
ファミリーレストランの雄、ロイヤルホストは夏になるとカレーフェアを開催する。
カレーフェアは37年も続いている一大イベントだ。
2019年の目玉は「17種類のスパイスを使用したカシミールビーフカレー」。
そしてスパイスの活用はカレーだけに留まらず、アンガス牛のステーキにミックススパイスを載せた「スパイスステーキ」も夏の人気メニューとなっている。
ロイヤルホスト商品企画部の岡野氏は「テーブルファミリーレストランの強みが何なのかを考えたとき、”香り”は大きく差別化できる要素だと考えた」と語っている。
広い店内に、豊かなスパイスの香りがただよう・・・夏の食欲が増進されることは間違いない。
彼の発言からもあるとおり「常に差別化。強み」を考えている証拠である。
Coco壱番屋でもスーパーでもスパイスカレー
個人的に大好きなカレー屋さんである、Coco壱番屋ももれなくスパイスカレーを扱っている。「スパイスTHEチキベジ」だ。このカレーにはトマトやオクラなどの夏野菜カレーに辛みを利かせたスパイスがふんだんに使われている。
また、スーパーチェーン、北野エースでは、レトルトのスパイスカレーを扱うコーナーが増強されている。
従来のレトルトカレーは「昔ながらのカレー」に該当するが、スパイスカレーでは、レトルトのパッケージに加え、トッピングのスパイス&ナッツなどが別袋で入っていたりする。
外のパッケージを開けてみると、たくさんの小袋が入っている、というだけでも少しテンションは上がる。
ペヤング焼きそばを作る時のワクワク感と似ているのかもしれない・・・。
差別化&ムーブメントに乗れると最高
スパイスカレーの話は、「今までにないセールスポイント=売れる要素を作る」という”自分で努力する点”と、世の中が盛り上がってきた”ムーブメント”という点の2つの視点から見る必要がある。
どちらが重要かといえば・・・
- 自分の努力=1割
- ムーブメント=9割
くらいの印象がある。
実はスパイスカレー、というのは新しいジャンルではないし、何十年もスパイスカレーを作ってきたお店もたくさんある。
私も好きな店が2~3店あるが、どれも創業してから長い。
カレー通が好んで行く隠れ家的なカレー店は多くはスパイスカレーのお店だ。スパイスカレーをのブームにのり、今後は「マイナー」から「メジャー」な存在になっていくかもしれない。
これまでの努力、創意工夫が実り、売り上げを大きく上げていくだろう。
しかし「ムーブメント」の力は非常に大きいので、「お、これはブームが来ているな」と感じてからスパイスカレーを開発しても間に合ったりする。
作り方の本は色々あるし、スパイスカレーの本場であるインドのレシピをYoutubeで学べる時代である。
味のセンス、料理のセンスがあれば、「人気のスパイスカレー」を生み出すことは不可能ではない。
大事なのは、思考を停止せず、「自分の商品・サービスの周りで起きていること」への感度を上げておくことなのだ。
カレーのような、「いつでもどこでも食べられ、誰でも作れる」商品でも進化の余地がある。人間の新しいものを求める欲求はいつの時代も衰えないのだ。