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サブスクリプションサービスを成功させるための、たった1つのポイント

近年、伸びているのがサブスクリプションサービスの市場だ。

サブスクリプションサービス=通称サブスクとは「定額で一定期間利用できるサービス」。

ユーザーからだけではなく、商品・サービスを提供するビジネス側からの注目度も高く、この市場(というか手法)に参入したい、と考えている企業も多いだろう。

とはいえ、「定額サービス」「月額サービス」という形態はそう新しくはない。

月にいくらか払えば、酒屋が選んだビールを持ってきてくれる、というサービスは昭和からあった。

サブスクは企業にとっては、安定した収益を望める契約形態といえるが、企業側の論理だけでは成功しない。

ユーザーにとってどんなメリットがあるのか?が重要である。

何が成功のポイントかというと、それしかない。

「定額性で、こんなサービスがあるんだー。そーなんだー」とインパクトを与えるだけでは成功しないし、飽きられて終わる。

重要なことは、「今まで強いられてきた負担や苦痛が、サブスクで解消されるかどうか」に尽きる。

それが成功のたった1つのポイントだ。

すでにあるサブスクの例と課題

現在、サブスクは様々なビジネスにおいて展開されていて、例えばこのようなものがある。

車を月額料金で乗り換えられるサブスク

月額で自由に車を乗り換えられるサブスクリプションサービス「NOREL」では、最短3ヶ月で他の車に乗り換えられるのがウリ。

中古車だと約6万~/月、新車だと8万円~/月で契約できる。車は国産はもちろんBMWなども選べる。

月にいくらか払って、車に乗れるというのは、リースやレンタルなど昔からたくさんある。

このサービスの売りは「色んな車に乗り換えられること」だ。

年間の費用や総額を考えると、価格はそんなに安くはないのでこのサービスが生き残れるかどうかは「色んな車に乗ってみたい」というニーズ、欲求がユーザーにあるのかどうか?だ。

強い欲求があればヒットしそうだが、どうなのだろう?

若い世代は車にあまり乗らなくなっているし、おじさん世代は「愛車」という言葉があるように、買った車を大事に乗るという文化が日本にはある気がする。

そもそも、何らかの苦痛や不安を解消するサービスではないので、さほどメジャーにはならないだろう、と思う。

毎月海外のコスメが届くサブスク

「My Little Box」は毎月パリを中心とする海外のコスメが届くサービス。月額3,350円なので若い女性向けといえる。

流行のものを知りたい、色んなコスメを知りたい、自分の知らないメーカーのコスメを試してみたい・・・というニーズは若い女性にはあると思われる。

が、どうなんだろうか。継続率は低いかもしれない。

日本のコスメは世界からみても質が高いし、安価なものも多い。なおかつ、コスメは肌質に合うとか、その人との相性が重要だ。

かわいいコスメが届いたとしても、それが肌に合わない。色が好みではない・・・という月が一度でもあると継続は難しいだろう。

面白そうだから試してみよう、というユーザーは多いかもしれないが、リピートにつなげるのは難問である。

送料や輸入の費用を考えると3,000円程度では、コスメ自体の質はそう高くはできないし、3,000円あれば近所のお店へ行こう・・・となっても不思議ではない。

このサービスも「今まで強いられてきた負担や苦痛が、サブスクで解消されるかどうか」という観点でみると、う~む・・・という感じである。

成功するニオイのするサブスク

月額3,000円で絵画がレンタルできるサブスク

「Casie(カシエ)」では、3,000円/月で好きな絵が借りられる。

月に一回、いつでも好きな絵を交換可能だ。

これは個人宅でも、カフェやサロンなどでもニーズがありそうだ。

すてきな絵を飾りたい、という欲求があっても、絵は一般的に高額で1つ買うのも思い切りが必要だ。

なおかつ、世の中にはいろんなジャンルの絵があり、絵が好きな人ほど1つに絞るのが難しい。

「奮発して買っても、後からもっと好きな絵や欲しい絵が出てきたらどうしよう」。「今は好きだけど、気に入らなくなったら売るのも保管してしまっておくのも面倒」という隠れたリスクもある。

3,000円でいつでも他のものに変えられる。気に入ったらそのままずっと借りていていい、というサービスは、これらのニーズ、不安の解消を一度にクリアできる。

出張料理人のサブスク

「SHARE DINE(シェアダイン)」は、月に二回、料理人が自宅まで料理を作りに来てくれるサブスクだ。

費用は月額で1万5,000円から。

すぐに食べる料理をその場で作ってくれる、という今までよくあるサービスではなく、客が用意した食材を使い、作り置きの料理を作って冷蔵庫に保管してくれるのが特徴だ。

特別感のあるメニューではなく、日常の家庭料理を自分の代わりにプロの料理人が作ってくれる、という感じだ。

子供に手料理を食べさせたい子育て世代の母親を中心に人気がある。

冷蔵庫にある材料を使って、無駄なくおかずを作ってくれる、いわば家政婦の料理版というイメージだろうか。

2回で1万5,000円となるとやや高い印象があるかもしれないが、1回の出張で数日分のおかずを作ってくれるため、コスパが悪いとはいえない。

長くサービスを使うことで、好みの味を伝えられたり、信頼できる人が調理をサポートしてくれる、という心強さもあったりする。

自分のやるべきこと、やりたいことに集中し、他のことはできる人や得意な人に任せる、という時代になりつつある今、「自炊は自分でするべきこと」という呪縛から解放してくれるよいサービスだと思う。

保育園向けオムツのサブスク

紙オムツの最大手、ユニ・チャームは保育園向けに紙オムツのサブスクをはじめた。

保育園の事情を知らない人は、「オムツをたくさん消費する保育園にオムツのサブスクって普通だな」と思うだろう。

しかし、「よくある保育園のオムツ事情」はこうだ。

  • 親が子供用のオムツを自分で用意しなければならない。
  • 親はオムツに子供の名前をマジックなどで書き、それを保育園におさめる。
  • 保育士は、「どの子のオムツか間違えないように」注意しながら、AちゃんにはAちゃん用のオムツを使わねばならない。

と、運営側にとっても、親にとっても非常に面倒なことだ。

「オムツ費」を保育園費用の中に計上し、それを保育園側が管理してオムツ代に当てればいいのだが、ユニ・チャームそれをサブスクの形で実現させたというわけだ。

ユニ・チャームではサブスク専用の会員サイトを構築しており、保育園の職員は在庫数に応じて月に一度発注。保育園にオムツが届くという仕組みだ。

Amazonや楽天などで定期購入してもよいと思うのだが、やはりオムツにもブランドがあり、「ユニ・チャームのものを全員に使います」という点が親にとっては安心できる部分になるのだろう。

この事例で重要なのは

「一番オムツを消費する保育園が、かなり面倒なオムツ管理をしており、職員や親に負担がかかっている」という事情だ。

ここに不満や苦痛がある。

ユーザーが何に困っているかを知り、手を打ってサブスクをはじめた、というのがユニ・チャームの「良いアプローチ」だ。

サブスクをやろうかな。サブスクを成功させたいな、と考えるなら「今まで強いられてきた負担や苦痛が、サブスクで解消されるかどうか」を軸にサービスを検討しよう。

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