こんにちは。編集長のケンジ・バートンです。
50代での転職を考えるとき、多くの方が「年収を下げたくない」と考えるのは当然のことです。私自身も50代ですから、その気持ちは痛いほど分かります。住宅ローンが残っている、子どもの教育費がかかる、老後資金を貯めたい――さまざまな事情がありますよね。
しかし現実には、50代の転職で年収が下がるケースが多いのも事実です。厚生労働省の2025年データによると、50代の転職者の約58%が前職より年収が下がったと報告されています。
でも、諦める必要はありません。実は、年収を維持・向上させて転職に成功している50代の方も確実に存在します。その方々には共通する成功パターンがあるのです。
この記事では、50代の転職で年収を下げないための具体的な方法を、実例を交えながら詳しく解説していきます。
50代転職の現実|年収維持が難しい理由とは
まず、なぜ50代の転職で年収が下がりやすいのか、その背景を理解しておきましょう。現実を知ることが、対策の第一歩になります。
企業側が50代採用に慎重になる3つの理由
企業が50代の採用に慎重になるのには、明確な理由があります。
1つ目は、長期的な投資回収が難しいという点です。企業は新入社員を育成する際、10年、20年先を見据えて投資します。しかし50代の場合、定年までの期間が短く、投資に見合うリターンが得られるか不透明だと判断されることがあります。
2つ目は、給与水準の高さです。50代の方は前職で管理職を経験していたり、年功序列で給与が上がっていたりするケースが多く、企業側の予算と合わないことがあります。
3つ目は、組織への適応性への懸念です。新しい環境や若い上司の下で働くことに抵抗がないか、企業文化に馴染めるかといった点が心配されます。
年収が下がる典型的なパターン
実際に年収が下がってしまう方には、いくつかの共通パターンがあります。
| パターン | 具体例 | 年収への影響 |
|---|---|---|
| 未経験業界・職種への転職 | メーカー営業からIT業界へ | 20〜30%減 |
| 大手から中小企業への転職 | 上場企業から従業員100名規模へ | 15〜25%減 |
| 役職ダウン | 部長からマネージャーへ | 10〜20%減 |
| 地方への転職 | 東京から地方都市へ | 10〜15%減 |
| 焦りからの妥協 | 早く決めたいという思いで条件を下げる | 20〜40%減 |
これらのパターンを避けることが、年収維持の第一歩となります。
50代転職で年収を下げないための5つの戦略

それでは、具体的にどうすれば年収を維持できるのか、実践的な戦略をお伝えします。
戦略1:専門性とマネジメント経験を組み合わせる
50代の転職で最も価値があるのは、専門性とマネジメント経験の両方を持っていることです。
専門性とは、特定分野での深い知識やスキルのことです。例えば、財務、人事、マーケティング、製造技術、品質管理など、具体的な専門領域での実績です。
一方、マネジメント経験は、チームや部門を率いた経験、予算管理、人材育成、プロジェクト推進などの能力を指します。
この2つを組み合わせることで、「即戦力として成果を出せる」かつ「組織を動かせる」という強力なアピールポイントになります。
実例として、製造業で品質管理の専門家として20年のキャリアがあり、さらに品質管理部門の部長として10名のチームをマネジメントしてきた田中さん(仮名・54歳)のケースがあります。田中さんは、医療機器メーカーへの転職で、品質保証部門の統括責任者として年収800万円(前職比+50万円)での採用が決まりました。
戦略2:成長産業・人手不足業界を狙う
年収を維持するには、市場価値が高い業界を選ぶことが重要です。2026年現在、特に50代の経験者を求めている業界があります。
| 業界 | 求められるスキル | 年収レンジ |
|---|---|---|
| DX推進支援 | 業務改革経験、プロジェクトマネジメント | 700〜1,200万円 |
| M&A・事業再生 | 財務、経営企画、業界知識 | 800〜1,500万円 |
| 医療・介護(経営層) | マネジメント、規制対応 | 650〜1,000万円 |
| 建設・インフラ管理 | 技術知識、安全管理、現場マネジメント | 600〜900万円 |
| 人材育成・研修 | 業界経験、指導力 | 600〜1,000万円 |
これらの業界では、50代の豊富な経験が高く評価されます。特にDX推進支援は、古い業務プロセスを知っている50代だからこそ、現場の課題を理解し、実効性のある改革を進められるという理由で需要が高まっています。
戦略3:「雇用形態の多様化」を活用する
正社員にこだわらず、雇用形態を柔軟に考えることも年収維持の選択肢です。
顧問契約、業務委託、プロフェッショナル契約など、さまざまな働き方があります。これらは「ジョブ型雇用」とも呼ばれ、職務内容と報酬が明確に定義された働き方です。
例えば、複数の企業と顧問契約を結ぶことで、トータルの年収を維持または向上させることができます。大手メーカーで営業部長だった佐藤さん(仮名・56歳)は、3社と顧問契約を結び、月額各30万円×3社で月収90万円、年収1,080万円を実現しました。前職の年収は950万円でしたので、約14%のアップです。
また、正社員として入社後、成果に応じて報酬が上がる「成果連動型」の契約も増えています。初年度は年収が下がっても、成果を出せば2年目以降に大幅アップする仕組みです。
戦略4:交渉力を高める
年収交渉は、50代の転職において最も重要なスキルの1つです。しかし、多くの方が苦手としています。
効果的な交渉のポイントは3つあります。
1つ目は、市場価値を客観的に示すことです。同業他社の同職種の年収相場、自分の実績がもたらす具体的な価値(売上貢献額、コスト削減額など)を数字で示します。
2つ目は、交渉のタイミングです。内定前の最終面接後が最適です。内定が出た後では企業側の予算が固まっていることが多く、内定前すぎると印象が悪くなります。
3つ目は、win-winの提案をすることです。「年収〇〇万円希望します」だけでなく、「初年度でこれだけの成果を出します。その成果に見合う報酬として〇〇万円を希望します」という形で提案します。
IT企業の人事部長だった山田さん(仮名・52歳)は、スタートアップ企業への転職時に、「3年以内に採用コストを30%削減し、離職率を10%以下にする」という具体的なKPI(重要業績評価指標)を提示し、成果連動型で年収850万円(前職比維持)での採用を勝ち取りました。
戦略5:転職エージェントを戦略的に活用する
50代の転職では、エージェントの選び方と使い方が年収に大きく影響します。
重要なのは、50代・ハイクラス専門のエージェントを選ぶことです。一般的な転職エージェントでは、50代向けの案件が少なく、年収交渉力も弱い傾向があります。
専門エージェントの特徴は以下の通りです。
| 項目 | 一般エージェント | 50代・ハイクラス専門 |
|---|---|---|
| 年収レンジ | 300〜700万円中心 | 600万円以上中心 |
| 企業へのアプローチ | 既存求人への応募 | 非公開求人、ポジション創出 |
| 交渉力 | 標準的 | 高い(企業との強いパイプ) |
| キャリア相談の質 | 求人紹介中心 | 戦略的キャリア設計 |
また、エージェントは1社だけでなく、2〜3社を併用することをお勧めします。それぞれが持つ独自の案件があり、比較することで自分の市場価値も把握できます。
年収維持に成功した実例パターン
ここからは、実際に50代で転職し、年収を維持または向上させた方々の事例を詳しく見ていきましょう。

パターン1:専門スキルを武器にした転職
鈴木さん(仮名・53歳)は、大手化学メーカーで研究開発を25年間担当してきました。特に環境対応型素材の開発で複数の特許を取得しており、業界内では知られた存在でした。
前職では年収780万円でしたが、研究職としてのキャリアに限界を感じ、転職を決意。ただし、年収は絶対に下げたくないという強い希望がありました。
鈴木さんは、自分の専門性が活かせる「環境コンサルティング企業」に狙いを定めました。この業界では、製造現場を知る技術者が不足していたのです。
結果、技術コンサルタント兼プロジェクトマネージャーとして年収850万円で採用されました。前職比で約9%のアップです。
成功のポイントは、「専門性×需要」の組み合わせを見つけたことでした。
パターン2:業界は変えず企業規模を変えた転職
中村さん(仮名・55歳)は、大手電機メーカーで営業部門の課長をしていました。年収は720万円でしたが、組織の硬直化に悩んでいました。
中村さんは、同じ電機業界の中堅企業(従業員300名規模)に営業部長として転職しました。年収は750万円で、約4%のアップです。
大手から中小への転職では年収が下がるのが一般的ですが、中村さんの場合は「中堅企業」を選んだことがポイントでした。小規模すぎる企業は給与水準が低いですが、成長中の中堅企業は、幹部人材を求めており、相応の報酬を用意できます。
さらに、中村さんは大手企業での営業ノウハウ、取引先ネットワーク、マネジメント経験という「即戦力性」を明確にアピールしました。
パターン3:複数の収入源を組み合わせた転職
高橋さん(仮名・57歳)は、金融機関で支店長を務めていましたが、早期退職制度を利用して退職しました。前職の年収は900万円でした。
高橋さんは、1社だけの正社員にこだわらず、複数の働き方を組み合わせる戦略を取りました。
具体的には、地方銀行の顧問(月額20万円)、中小企業診断士としての個人事業(月額平均30万円)、大学での非常勤講師(年間120万円)を組み合わせ、年間トータルで約720万円の収入を確保しました。
前職比では約20%減ですが、高橋さんは「働く時間を自分でコントロールできる」「やりがいがある」と満足しています。また、個人事業の収入は今後伸ばせる可能性があります。
パターン4:ストックオプションを活用した転職
伊藤さん(仮名・51歳)は、製造業でサプライチェーン管理の専門家として働いていました。年収は820万円でした。
伊藤さんは、成長中のスタートアップ企業からのオファーを受けました。提示された年収は700万円と、前職より低い金額でしたが、ストックオプション(株式を一定価格で購入できる権利)が付与される条件でした。
ストックオプションとは、将来、会社が成長して株価が上がったときに、決められた安い価格で株を買える権利のことです。もし会社が上場すれば、大きな利益になる可能性があります。
伊藤さんは、企業の成長性を見極めた上で、この条件を受け入れました。入社2年後、会社の業績が向上し、ストックオプションの価値が上がったタイミングで一部を行使し、約500万円の利益を得ました。
この方法は、リスクもありますが、スタートアップや成長企業では有効な選択肢です。
年収交渉の具体的なテクニック
実際の交渉場面で使える、具体的なテクニックをお伝えします。
交渉前の準備が9割
交渉で最も重要なのは、準備です。以下の情報を事前に集めておきましょう。
まず、業界・職種の年収相場です。転職サイトの年収データ、業界団体の統計、エージェントからの情報などを総合的に見ます。
次に、転職先企業の給与体系です。年功序列型か成果主義か、基本給と賞与の比率、福利厚生の内容などを確認します。
そして、自分の市場価値を示す材料です。過去の実績を数値化し、「売上を○%向上させた」「コストを○○万円削減した」「○名の部下を育成した」といった具体的な成果をリスト化します。
効果的な交渉フレーズ
交渉では、言い方が重要です。以下のようなフレーズが効果的です。
「前職での経験から、初年度で○○の成果を出せる自信があります。その成果に見合う報酬として、年収○○万円を希望します」
「業界相場では、この職種・経験年数で○○万円が標準と理解しています。貴社の評価制度の中で、どのように位置づけられるでしょうか」
「基本給での調整が難しい場合、インセンティブや賞与での調整は可能でしょうか」
重要なのは、一方的な要求ではなく、対話の形で進めることです。
譲れない点と譲れる点を明確にする
交渉では、すべてを要求通りにするのは難しいことがあります。優先順位を付けておくことが大切です。
例えば、「年収総額は絶対に○○万円以上」が譲れない条件なら、「残業の有無」「リモートワークの可否」「福利厚生」などは柔軟に考えるといった具合です。
また、段階的な引き上げを提案する方法もあります。「初年度は○○万円でスタートし、成果に応じて2年目から○○万円に引き上げる」という条件交渉も効果的です。
50代転職で避けるべき落とし穴
年収維持を目指す上で、陥りやすい失敗パターンも知っておきましょう。
焦って条件を下げてしまう
転職活動が長引くと、焦りから条件を下げてしまう方が多くいます。特に、退職後に転職活動をしている場合、収入がない不安から妥協してしまいがちです。
これを避けるには、在職中に転職活動を始めること、そして最低でも3〜6ヶ月の生活費を確保しておくことが重要です。
前職の役職にこだわりすぎる
「部長だったから部長職以外は受けない」というこだわりは、機会を狭めます。役職名より、実際の仕事内容や裁量、報酬を重視すべきです。
中小企業の「マネージャー」が、大手企業の「部長」より高い裁量と年収を持つケースもあります。
年収だけを見て企業を選ぶ
年収は重要ですが、それだけで選ぶのは危険です。企業文化、働き方、成長性、自分のスキルが活かせるかなども総合的に判断する必要があります。
高年収でも、実態はハードワークで体を壊してしまったり、早期退職を余儀なくされたりするケースもあります。
年収維持のための具体的アクションプラン
最後に、今日から始められる具体的なアクションをまとめます。
今すぐできる3つのこと
1つ目は、自分の市場価値を確認することです。転職サイトに登録し、スカウト機能を使ってみましょう。どんな企業から、どのくらいの年収でオファーが来るかで、現在の市場価値が分かります。
2つ目は、自分のキャリアを棚卸しすることです。これまでの実績、スキル、資格、人脈などを書き出し、強みと弱みを明確にします。
3つ目は、業界研究を始めることです。自分のスキルが活かせる成長業界、人手不足業界を調べ、可能性を探ります。
3ヶ月以内に取り組むこと
専門エージェントに複数登録し、具体的な案件を見ながら、転職市場の感覚をつかみます。この段階では、すぐに転職を決める必要はありません。
また、LinkedInなどのビジネスSNSでプロフィールを充実させ、業界の人脈を広げることも重要です。50代の転職では、人脈経由での転職も多いのです。
6ヶ月を目安に進めること
実際の応募を始め、面接を経験します。最初の数社は「練習」と割り切り、面接での受け答えや年収交渉の感覚をつかむことが大切です。
また、必要に応じてスキルアップも並行して進めます。資格取得、オンライン講座の受講、業界セミナーへの参加など、市場価値を高める努力を続けます。
まとめ|50代転職で年収を下げないために
50代の転職で年収を維持することは、確かに簡単ではありません。しかし、戦略的に取り組めば、決して不可能ではないのです。
重要なポイントをまとめます。
専門性とマネジメント経験を組み合わせ、自分の強みを明確にすること。成長産業や人手不足業界など、需要のある市場を選ぶこと。正社員だけでなく、多様な雇用形態も視野に入れること。準備を十分に行い、効果的な年収交渉をすること。そして、50代・ハイクラス専門のエージェントを活用することです。
私自身、同世代としてあなたの気持ちがよく分かります。50代での転職は、人生の大きな決断です。家族のこと、経済的なこと、さまざまな不安があると思います。
しかし、同時に50代は、豊富な経験と人脈を持ち、人生で最も市場価値が高い時期でもあります。その価値を正しく評価してくれる企業は必ずあります。
焦らず、しかし着実に、準備を進めていってください。この記事が、あなたの転職活動の一助となれば幸いです。
何か不安なことがあれば、専門家に相談することも大切です。一人で抱え込まず、信頼できるエージェントやキャリアカウンセラーの力も借りながら、最良の選択をしていきましょう。
50代の転職は、新しい可能性を開くチャンスでもあります。年収を維持しながら、よりやりがいのある仕事、よりよい働き方を手に入れることは可能です。
あなたの転職が、人生の新しいステージへの素晴らしい一歩となることを心から願っています。